そーれりぽーと

映画、旅行、植物など気の向くまま

新作映画の満足度は最高★5つで表示

ヒミズ

2012-01-15 | 劇場映画れびゅー
予告編を観てからずっと気になってた『ヒミズ』を観てきました。
★★★★★

観ていて心が痛くなる、世の中どっちを向いても光が見つからない、そんな中にも光を見出そうと這いずる主人公の感情を瞬間的に疑似体験する。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『息もできない』を彷彿とする絶望感、しかしこれらと同様に秀作です。

昨年の大震災をストーリーのバックグラウンドに盛り込み、被災者に降り掛かっている厄災、生活の問題と原発問題、そして彼らのアイデンティティが映画のスパイスとして使われている事については時期尚早にも思われ賛否もあるだろうけれど、映画としてはより完璧に仕上げられている。
中途半端な映画でこれをやっていたら相当叩かれただろう。
被災地の映像が胸に刺さる。

何が素晴らしいって役者さん達が全員揃ってエネルギーに満ちあふれていて恐ろしいくらい。
ヴェネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞を二人揃って受賞した染谷将太と二階堂ふみが演じる役の狂気と飢えがスクリーンから熱く伝わって来る。
渡辺哲も、光石研も、でんでんも、その他大勢出ている著名な役者さん達から脇役、ゲスト出演者に至るまで全員が凄い。

これはやっぱ役者さんの力もあるだろうけれど、園子温監督の演出力も大きいんだろう。
この監督の映画観たこと無かったけどこれはスゲーわ、今後要チェック。

もし本谷有希子原作の映画を作ったら生きて居られなくなりそうな映画を作ってしまいそう。

帰りの車中で運転しながらレビュー録音してて、思い出し号泣してしまった。

二階堂ふみって整形前の宮崎あおいと被って見える瞬間がたくさんあったんだけど、芝居は二階堂ふみのが上手いね。

ネタバレ
車中で録音してた内容をそのまま…

絶望的な生活環境の中でも、「上昇志向は要らない、普通でいたい」「今の自分の状況は普通なんだ」って自分に言い聞かせ、ポリシーを持って生きている中学生の少年が居て。
その少年の言葉に何故か共感を持って、憧れる少女が居て。

少年はどんなに家庭環境が悪化しても「それでも自分は普通なんだ」と言い聞かせ、前を向いて生きて行こうと、必死じゃないように見られようとしている。
その彼自身は自分の周りにそんな彼を慕って集まる震災で家を失った被災者達や、彼に憧れる少女が居ることに全く気づいていなくて。

必死で頑張って生きている少年が心配でならないのと、ほんとにイイ奴なんで一緒に居たいと思って、彼に生活の場を与えてもらって支えられながらも彼を慕って集まってくる被災者達が居て。

そんな中で彼に最悪の事が起きてしまい、彼を助けようとみんな応援しているんだけど、死ぬ思いをしてまえ行動を起こす人も居るんだけど、彼はそんな事に気付かず、一直線に悪い方向へ自分を陥れてしまう最悪の選択をしようとする。
良い事をするという言葉の下に、どんどん自分を追い込んでしまう。

そんな彼を見ている周りの人達は、彼に気付かせようと必死になって、最終的になんとか彼は最善の選択にたどり着く。

でも、その先に待っているのは本当に幸せなんだろうか。

最善の、当たり前の選択をしたところだけを取るとハッピーエンド、未来は頑張れば有る、自分に頑張れと言い聞かせ、感情を爆発させるクライマックス。
被災者へのエールとも被る演出にもなっていて、凄く深い、涙の溢れてくる最後なんだけれど、いやまて現実を振り返るとどうなのか。

現実を観たら本当に酷くて息もできない程、被災者の方々は未だにつらい目に合っていて必死で生活をしてらっしゃる方々も大勢居る。

映画の中を振り返って考えると、少女は家に帰ったら母親から死ねと言われて首を吊るための処刑台まで用意されていて、いつ命を絶たなければならない事になるのか。
もう、彼に構っていられないくらい、カウントダウンはとっくに始まっていた。

そんな悲しい終わり方ってある?
そんな悲しい現実が進行している終わり方ってあるか?



ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]
クリエーター情報なし
松竹ホームビデオ

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フライトナイト 恐怖の夜 | トップ | ロボジー »