
おっかあは勘違いをしていると、周囲の皆が忠告している模様。
「ずーっと生きてると思ってるとチガウ?」
そうそう、ずーっと生きてると思われてるオイラ。
病名がついてしまったのでオイラはホンモノの闘病犬になっちまって、
おっかあの大好きな歌手と同じなんだぜーーー、ホッホッホ。
あっちは口の近くだったけどオイラはお尻の近くなんだぜー。
どっちもどっちだぜー、闘うんだぜー、上でも下でもおんなじさ。
オイラは切り取るらしい。歌手は切り取らなかったなあ‥。
おっかあは考えに考えてと決めた‥じゃないんだぜ、ほんとうは。
「癌であーる」と医者が検査報告書を読み上げたとたんに、
で、それって切らないとどうなるわけさ? どうどうどうなる
わけさ? と詰め寄って「そりゃウンチが出にくくなるさ」と
医者が言うと、「さっさっと切り取ってくだせえ」と即答。
ウンチ大事。
そうなんだ、おっかあに「ウンチと愛の考察」を教えたのは
オイラである。

毎朝毎晩オイラのウンチを拾い続けたおっかあは、その温もりで
オイラが生きていることを感じたんだなー、できたてだもんな。
ご飯をちゃんと食べてちゃんと栄養になってることがわかると
おっかあも張り合いがあるってもんさ。
そこに赤い模様が点々入り始めてからは、おっかあは十年以上も
何事も無く黄色一色のウンチしか眺めてこなかったことを
変わらなかったことを、あらためて思い知るんだなあ。
オイラのウンチが黄色であることはしあわせの証であると。
赤の点々、少しだったのが段々増えて、点々から腺になり、
薬を飲んで減ったり消えたりしながら、結局赤は赤のまんま。
一年かけて、おっかあは赤でも黄色でもいいと思い始めた。
おっかあは練習しているのである。
生きているオイラとオイラがそば居なくなった時のオイラ。
どっちもオイラであることを、おっかあは想像する。
どこがどうチガウのか‥。
なぜ泣きたくなるのか‥。
おっかあはオイラのアホな笑い顔を一生懸命憶えていようとして
ベイビーベイビーサンダーの名曲を歌ってくれる。
オイラはダンスをするっつうか、足をちょっと上げるね。
跳ねてる気分で。
オイラが踊るからおっかあも笑い、ふたりでダンス。
おっかあは笑ったり泣いたりして、そして、消えないオイラが
いることを、ある朝気づいた。
それを消えないように、どこへも行かないようにと思うことも
必要ないことを、その翌朝に気づいた。
オイラはウンチをしておっかあに愛を教えたわけである。
生まれてきてよかったのである。
まだ手術の日は決まらないので、シッポは自由に振れるんだぜ。
うさこおばさん、おばさんまで病気にならないでね。
ゴロー先輩に見習ってベイビーもうさこも美貌のまんま、行こうと思います!!
いいお話、勇気がわきます。
ほんとにありがとうございました。