想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

「憂鬱之島 香港、ここで生きていく」

2022-08-30 23:36:39 | Weblog
渋谷のユーロスペース、上映最終日は朝から雨だった。

闇に浮かぶ波頭に人影、
中国大陸から香港へ、海峡を泳ぎ逃れる。
文化革命の最中あるいは天安門事件の
危機から逃れ、小さな島に自由を求め
命からがら陸を踏んだ。
ぬれそぼる香港…
画面も濡れていた。



映画をみてやがて20日経つ。
憂鬱はわたしの中に浸みこんだままだ。
2014年香港は雨傘革命で世界の注目を
集めた。民主主義を求めたデモは若い
革命家たちを一躍有名にした。

彼らの要求は「普通選挙実施」である。
つまり中国の息のかかった選挙委員による
間接選挙を「普通」へ改めよというものだ。
その機会を逸し続けてはなるまいとして
立ち上がった学生が大規模なデモの
中心であった。その若さと真摯さに
海を隔てた人々もメディアも注目した。

だがそれはかえって中国本土を硬化させ
警察の武力圧力は強まりデモは力を失った。
元々なかった民主主義を求めたデモは
現状を変えられないまま活動は停滞した。

民主化運動を恐れた中国は一国二制度を
撤回し香港政府に「逃亡犯条例」改正を
促した。
中国批判をすれば中国当局に拘束され
捜査、刑罰対象となるのだ。

香港には言論の自由があった。自由を求め
海峡を渡った人々の子どもたちが成長した
今、再び中国当局に怯えるとは悪夢だ。
2019年、今ある自由を守るためのデモに
200万人の群衆が命をかけた。

そして2020年5月、中国は香港の言論を
取り締まる「国家安全法制」を導入した。
集会制限にも拘わらず数千人の若者がデモ
に参加し多くの逮捕者を出した。

映画は三世代にわたる抵抗の歴史の記録
を実在の活動家による再現ドラマと当事者
の証言、証拠写真を混ぜたドキュメンタリー
である。

クラウドファンディングに参加しチケット
が送られてくるまで長かったが、完成した
本作はまぎれもない傑作であった。
ここに証された事実は遠い国の出来事とは
もう思えない。
今の日本は、確実に危うすぎる。

何のために生きるかより、生きるために
何をするか、を突きつけられている。
生きるとは、自由に息をすることである。
コンクリート壁が四方を圧迫する狭い部屋
に10年は長すぎると彼は言った。
暴動罪の判決、恐れて口をつぐんで
目の前の享楽に我を忘れるか。

息をする自由を守るには……
生きている今を感じ、決して離さないことだ。
憂鬱に抗って、今日も
ビクトリア・ハーバーで泳ぐ。
チャン・ハックジーの身体と心が最後に
勇気をくれる。





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