十年を節目にしたいなら、
あの日からしばらく節電で消えた
東京の街の灯り、電車内の照明、
イルミネーション、電飾に私たちが
しだいに慣れていき
前みたいにアカアカとしていないのが
けっこう居心地いいなど言い出して
原発の電気はなくても
けっこうやっていけるんじゃない?
などなど世間話したことを覚えているかい
そのうち真っ暗闇を少しずつ忘れていった。
ほどほどを知らない。
行けるならどんどんいく。
いったもん、やったもん、勝ち。
目立つには明るくなきゃ。
暗闇ディナーは単なるイベント
冷蔵庫エアコンはエコタイプで罪ではないでしょ、必需品はないとね
妻が言うからさ
洗濯機のない生活、やれるわけないよね
だからほどほど、電気はいるよ
ほどほどは太陽光パネルの林を造り
福島のあの、美しかった福島の
森を黒く染め、森は樹々を失くし
やがて森は水も失くす
首都圏の人々は今もこれからも
福島を買う
ただし魚、野菜、果物、米、キノコ
は九州や西日本からでなんとかなって
福島に森や海がなくてもなんてことない
なんなら、水だって他から買えばいい
遠く、といってもたかが二三百キロ
ひと続き
境目のない空でつながり
ヤマメを自由に獲れない源流から
首都圏の太い河口まで
ひと続き
取り戻しようもない幸福を
狭くなった仮の住まいで夢にみる
欲張りが欲を貪らなければ
こんなことにはならなかった