墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

平成マシンガンズを読んで 82

2006-10-17 19:49:37 | 

「ごめんな。そこまでイヤだと言う事を無理強いするワケにもいかんもんな。俺は帰るよ。すまなかった。じゃぁ、後は良い夢でも見てくれ。もう2度とあらわれないから」

 死神は闇の切れ目に空き缶やらゴミやら投げ込んで帰り支度をはじめた。
 本気でもう帰る気らしい。

 よかった。

 死神が言う。

「嘘をついてまであんたを『復讐』に巻き込む気はない。力や嘘で他人を思いどおりにしようとする人間は最悪だ!」

 その時、死神は不自然な行動をとった。
 右足で左足の靴ひもを踏みつけ、靴ひもを自らほどいた。

「じゃぁ、帰るね。さよなら」

 と、言ったとたんに死神はわざとらしく気がついた。

「うおぉぉ。靴ひもがほどけている!」

「結び直したら、転んだら大変」

「ありがとう。そうさせてもらう」

 死神は自分で踏んづけてほどいた靴ひもを不器用に結び直す。

 驚くほど不器用で不手際な手。かた結びになりかけている。

「すまないが、このマシンガンを持っていてはもらえないだろうか。こいつを抱えてると上手く結べない」

「うん」

 私はなにげなくマシンガンを受け取った。

 そして、死神はハロゥインのカボチャみたいに笑った。

「やっと受け取ったな、復讐のマシンガンを!」

 あぁー。


平成マシンガンズを読んで 81

2006-10-17 19:26:34 | 

「復讐なんてイヤです。趣味じゃありません」

 私はキッパリと言う。

 死神はグズグズと、なおも丸め込もうとウダウダ言う。

「復讐は気持ちいいよ。それに復讐するなら今だ。若いうちに復讐しとかないと年とってからきっと後悔するよ。あー、あの時に復讐しとけば良かったって」

「私には復讐なんかする理由がありません」

「理由なんか後付けでいいんだよ。まずは行動あるのみ。何事もネガティブに常に後ろ向きで鬱々としつつも即座に行動。言うなれば後ろ向きで全速前進! 
 いや、違うな。
 人間には裏表がある。
 そして、目ん玉とおへそのついてる方が前である。
 人間は前にしか歩けない。
 よって、ソレがどっちであろうと、進む方が前だ。
 そう、人間は常に前向きにしか生きられない。
 だからこそ、前向きにポジティブに笑顔で『復讐』しようよ」

「じゃあ、私は後ろ向きに歩きながらネガティブに『復讐』から撤退させていただきます!」

「おいこら。そんなこと言うなら、俺はカニ歩きでちょっきんちょっきんと『復讐』へ追い込むぞ!」

「どうやってですか?」

「まずは、柿の種をまこう。ようするに色だ。大人の魅力でみたらす。
 ってのは。
 うーん。
 やっぱり、俺には、無理なので、他の手を考えよう」

 ふーん。

「でも。死神さんってカッコいいですよね。理性的で論理的で頭もいいし、憧れちゃいます!」

「えっ。ぇ」

「正直言って、すっごい好感が持てます。でも、復讐を語るときの死神さんはちょっぴり悲しいかなぁ。復讐とさえ言わなきゃ、死神さんて誰よりも素敵なのに」

「そっ、そぅかなぁー」

「そうですよ。もっと自分に自信を持って。私は死ぬまで死神さんのファンですから!」

 驚いた事に。
 死神の目が潤んでいた。

 オイオイと思っているうちに、ブワッと死神の目から涙があふれ出て来た。

「すまん。嘘と分かっていても、マジ泣けてきた。すまん」

 死神はズルルッと鼻をすする。

 罪悪感。

「最後通達だ。そういうわけで復讐しなさい!」

「イヤです!」

 キッパリ。

「じゃぁ、仕方ないか」