墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

平成マシンガンズを読んで 93

2006-10-24 20:31:50 | 

「今朝は君との復讐が楽しみで、朝3時に目が覚めてしまった。実質2時間も寝ていなかったけど、朝の7時半からここで正座しながらあんたの目覚めを待っていたのだ」

 壁にかけてある時計を見る。
 現在時刻、8時56分。
 うわぁぁー。

 死神は1時間以上も、私の目覚めを待って、こんな暑い部屋で、しかも枕元で、私の寝息を聞きながら正座して待っていたのだ!!

 ぃ、
 い、
 いやーぁぁ!
 どんな金縛りやストーカーよりもタチが悪い!

「君の為に、面白い物を用意してきたよ。
 あんたのお兄さんを殺した犯人の『手記』だ」

 死神はプリント・アウトしたらしい紙の束を私の枕元に置いた。
 私の兄を殺した人間の手記?

「最期の場となる法廷でぜひ言いたいことがあった。
 なのに、弁護士が裁判長にたのんだけど聞き入れられてもらえなかった。
 直接交渉するまでに及んだが、検察の意図通りに遺族にはボロチョンに言われた。
 まあプスプスとガキ刺し殺したのはワシだからおとなしくしていたんだけど、言いたい事を言わせてもらいたくて裁判長に食い下がった。

 まあ、犯行も裁判も、結局は結果オーライではなかったかなと自分では思っている。
 法廷やら判事やらと、権威だからって尊敬なんかしてやんないぞというワシのスタンスにも合致して、裁判は、あれでよかったと思う。

 死刑は怖くないかと聞かれたが、正直、死はワシにとって快楽だと思う。

 そりゃ、川でした大ケガなんかなくてさ。
 安定さえしてりゃ。
 もしくは、自営業でもいいから、あるいはもうけは薄くても安定した職にでもつけて、ベッピンの嫁さんでも貰っていたりしたら、『私特有の不快な思い』なんかしながらも生きていけただろう。
 むしろ、まともに生きられたなら、普通の人間よりも死なないようにして、バイクに乗るのをやめたり、とか、他にも出来るだけ不慮の事故などで死なないようにとか気をつけて生きていたはずだ。

 しかし、川でした大ケガの後遺症と知人(数十人)への恨みから、早くこの世とおさらばしたい気持ちで今は一杯です。
 今度もし生まれてきたら、金持ちのボンボンで、中の上の知能で3流私立医大へ行き、内科医になって、トラブルで殺されたりしないように気をつけてベッピンの女とセックスをしまくりたい。(まあ今生でもセックスはしまくった)

 死ぬ事は全く恐くありません。
 まあ、どういう解放のされ方でもいいんです。
 年間3万数千人、自殺するんですよ。
 ワシに対しての死刑宣告を『ホントは死ぬのびびっとるだろ』という人がいるとは思うけど、そしたら年間3万数千人の自殺は何なのだ。
 あんまりワシに憎まれ口を叩くな。
 人間の一生なんて、偶然的な心臓の連続鼓動でしかない、人間なんか、いつ死ぬか解らん。
 プツーと刺されたり、ちょっと殴られただけでも死ぬ時は死ぬ。

 これでよかったのだ。これで。
 ワシが生まれて来たのがそもそもの間違いだった。
 しかし、宝くじで3億円当たってたら、今回のブスブス事件は起こしてないよな。やはり金なのかな。
 イライラカリカリしていても、温泉につかって、マッサージされて、美人に酌でもしてもらったら少しはおだやかになれるのかな。やはり、皆が言うように金なんだな、世の中は金、世の中は金。
 金があれば美人の嫁が買える。

 他のとっ捕まった犯罪者は思っているのでないかな。
『あいつはバカだよな。あんな事するんだったら、大口のタタキ5回は出来るぜ』
 しかし、強盗君よ、お前らとワシでは価値観が違うのだ。
 成功すれば一億。
 失敗すれば10年。
 ワシはそのリスクは困ります。

 話変わりますが、あんな親から生まれたから、ワシはこうなった。
 ワシが悪いんじゃない、全て親が悪いのだ。
 その親の家のガラスが一枚も割られていないとは、ワシには理解できません。
 なのに、裁判中にジロジロ見る奴に、わざと嫌がらせする奴。
 もううんざりです。

 私は、ヘビースモーカーでね、焼き鳥に生ビールでぐいといきたいけど、ロングピースをおもいっきり吸い込んでみたいね。
 まあ、よほどへそ曲がりな看守じゃない限り死刑執行の前日はタバコを吸わせてくれると思うけど。

 遺族は、国から7500万もらってホクホクですな。よろしいな。
 自分の子供に保険金かけて、殺す親もいるのだから、転り込んだ7500万円よろしいな。もうワシは後、確定するだけです、そして執行。
 6ヶ月以内に死刑執行されるない恐れがある場合は、刑訴法475条をたてに法務大臣を訴えるつもりです。
 新聞で遺族が『早急に執行を』とする記事を読みましたが、願ったりかなったりです。遺族も法務省に何らかの圧力をかければいいのです。
 ワシが死にたいうんぬんよりも、悔しいことや無念な事、出来なかった事、やられた事、だまされた事、お腹の赤ちゃんを殺されたこと、等々、不快な思い、辛い境遇をシャットアウトしたいのです。
 不快な思いから逃げたいのです。
 いや逃げたいというか、もう恨みこそ人生。
 親の恨みがワシの恨みを生んだのです。

 後は看守に嫌われんように仲良くして、吊るされるのを待つだけです。
 遺族はワシに死刑を望んでいるが、ガキを殺され、殺したワシを死刑にして自分達は何百年生きるつもりなのだろう。
 ワシが一年以内に死刑になっても、20年、30年なんぞあっという間なのに、何を「死ね死ね」とワシに言うか。
 死を、特別の何かというか、死を過大評価しすぎている。寿命なんて人にもよるけど、60年。
 その後は感覚も快楽も鈍り、頭の回転がひたすら悪くなる。
 現実的な死は70だ、女は現実的な死は閉径だ。
 湯川なんとやらという歌手の歌で「人生半分50で始まる」とかあるけど、バカか。
 50だったら人生の7分か8分は過ぎているではないか、100まで生きる人間もいるが、60すぎたら感性も体力もよぼよぼで、70以後は、ただ惰性で大なり小なりボケて、臭い口臭をハーハーやりながら老害をまきちらして生きているだけではないか、寿命なんか昔も今も50だ。よく覚えとけ」

 なんだこれ!

 コレを読むかぎり、犯人は死刑になりたくて犯行を行ったらしい。
 死神は言う。

「あんたの兄さんを殺した男は馬鹿者だ。
 1年に3万人自殺するご時世に、死刑にされなきゃ死ねませんなんて真性の甘ったれた馬鹿だ。死を怖れていないフリをしているだけだ。
 本当に死にたいならば、おとなしく他の3万人と同じように静かに黙って自殺すればいいだけなのに。
 なのにこいつは自殺をしないで、死刑になりたくて他人を殺した。
 なんて卑怯で下劣な人間。
 自殺できないならできないで、生きる事のみじめさを我慢して生きるしかないのに。
 こいつは死を選ぶ事も、生にしがみつく事も出来なかった。なにもかも他人まかせの愚かな馬鹿者。
 こんな奴に『復讐』の資格はない。
 こいつの心には、親への恨みと、河原で怪我して自由に動かない身体からくる自身への嫌悪。そして、知人への恨みしかない。
 冗談でもなんでもなく、マジで宝くじで3億円当たっていればこいつは人殺しなんかしなかっただろう。
 この馬鹿は復讐を理解していない!
 復讐はもっと崇高な物だ!
 生の苦しみや、子を産む罪はもっともっと深い物だ。
 生きる事は、すなわち原罪だ。自分をも含めた全ての人間の原罪への復讐。
 復讐は、人間という存在自体への否定である。
 そうでない復讐は、単なる私恨だ!」

 死神は朝っぱらからテンションが高い。