墨汁日記

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平成マシンガンズを読んで 63

2006-10-03 19:32:13 | 

「授業が終わって5分休み。
 なんだか、すっげぇ膀胱が満タンクだ。
 いかん。
 今すぐにトイレで膀胱の中身を放出せねば、膀胱の危機だ!
 こんな時に、あんたならどうする?」

 どうするも、こうするも。

「素直にトイレに行くと思います!」

「だがっ何たる事よ、教室の扉の前には男子が5人も立ちふさがって、無駄話で盛り上がっている。
 とてもじゃないが出れそうもない。ちゅーか私をそこから出さないとここに出すよみたいなとても危険な状況だ。
 こんな時にあんたならどう思う?」

 私は答えた。

「他の出口に向かいます」

 死神は言った。

「違う。どーすっかじゃなくて、どう思うかだ。
 出入り口をふさぐ男子をどう思う?」

「ムカつくかなぁ」

「そう、それだよ。俺が求めていた答えは!
 なぜ、人はムカつくかだ。
 膀胱の安全を真剣に考えるなら、ムカついてるヒマなんて無い。
 とっとと適切な対処、例えば君の言ったように、他の出口に行けばいい。
 なのに、人は自分の邪魔する人間を憎悪する。

 いいか、憎悪は自分にとって目障りであったり邪魔であるモノに向けられる。
 自分にとって都合の良いモノや、無視しても危害を加えないモノを、人間は憎悪しない。
 憎悪するという事は、そのモノを自分にとって邪魔だと認識しているという事だ。
 いいか。憎悪の対象は、その人にとっての障害物に向けられる。憎悪とは、自分にとって邪魔であるという個人的な都合だ。
 憎悪は憎悪。これは正義とはまったく関係ない。
 なのに、世の中には自分の憎悪を正義だと勘違いしてグダグダ言う人間が多い。馬鹿じゃねーかと思う。

 立場を変えれば、あんたでない他の子なら、出入り口をふさぐ男子にもムカつかないですませるかもしれない。

 実際に、あんたには男子が立ちふさがってて通り抜けられないよと思うような場所を、『ごめんなすって』てなかんじでヒラヒラすり抜けてく女子だっているはずだ。
 この違いはなんでだと思う?
 彼女の生き方が上手いからかな?」

「男子にムカつかないから」

「そう。
 男子にいちいちムカつくヒマがあるなら、膀胱の中身を排出という理想に向かって、とっとと便所へ急ぐのが合理的だ。膀胱の事を一番に思えば、ムカついているヒマなんて人間にはないんだよ。
 ムカつかなきゃ、『ごめんなすって』で素通り出来る場所を、わざわざムカついてふざけんなと憎悪を内に溜め、ついでに膀胱にはちきれんばかりの小便を溜める。

 ところで、憎悪は誰から教わるのか?
 親からだよ。

 親が憎悪の源だ。

 邪魔なモノを人間は憎悪する。憎悪は身に刻まれたその人のクセみたいなものだ。
 憎悪は単なる感情で、合理的に事を運ぶ事を望むなら邪魔なモノだ。
 また、誰であろうと憎悪の感情が正義であるはずはない。憎悪は単なる個人的に邪魔だなと思う身勝手な感情だ。

 だけど、どうしても、この状況に置かれたら他者を憎むしかないというシュチュエーションが誰にでもある。
 そして、そのシュチュエーションは全てとは言わないが、ほとんどは親との対人関係から無意識に摺り込まれたもの。
 ほとんどの憎悪は親との関係に繋がる。
 また、全ての人間は親を憎悪している」