叫び出したいような衝動を抑えつつ、死神という自分とは関係ない者を目の前にして冷静になる。
死神の言いたい事も、死神の考えもじつは良く分からない。
だが、死神自身が言っているように、死神は私を利用したいだけだ。
私に何かを求められても、何も出来ない。
私はつまらない存在だ。
したくないし、したくてもできないし、その気もない。
「復讐だよ。
子供には親や世間に復讐する権利がある。
いや、ないとは言わせない。むしろするべきだ。
復讐は子供達の義務である」
もう何も答えたくないし、何も言いたくない。
そして、その時に死神は初めて笑った。
ニヤリと。
唇の端が動き、かすかに表情があらわれた。
悪魔の笑み。
気がついたら、私は座り込んでいた。
ヘタタッて。
死神は立ち尽くし舌なめずりしながら次の言葉を探していた。
「夏休みの宿題などやってる場合ではない。
予習復習も関係ない。
子供は親や社会の操り人形で、糸を断ち切りたいならハサミを片手に復讐するしかもう手はない。
全ての子供らは親と同じゲットーに追い込まれ、番号をつけられゲートに並ばされ、したくもない競争を強いられる。
豚の競争社会。
豚がいくら競争しようとも、豚は豚だ。
頭ひとつ他の豚に抜きん出ても、良くてトンカツ。悪くて豚ドン。
所詮は、ドングリの背比べ、目くそ鼻くその勘違いの豚共!
豚にふさわしい末路は死のみだ。
死ね。
死ね。
死ね。
醜い豚は全て死ね!!
自分が豚だと自覚せよ。
豚の自覚もない畜生共が!
死ね、死ね、死ね、豚は死ね!
死のみが豚共の安息である。
いつか醜い豚も死ぬという以外に、この世に救いはあろうか。いやない。死ぬが良い、死んでしまえ。
そして、俺もあんたも悲しいかな醜い豚の一匹だ。
死のみが清浄をもたらす!
憎悪は知ってしまったモノ全てに向かう。
知らないモノは憎悪出来ない。
憎しみは知っているモノ全て、自分自身にすら向かう。
存在さえしなければ、何も憎む事もなかった」