寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は、少しも求めず、ただ、ありのままに、やすく付けけるなり。この比は、深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。
何事も、珍らしき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。
<口語訳>
寺院の号、そうではない万の物にも、名を付ける事、昔の人は、少しも求めず、ただ、ありのままに、易く付けたのだ。この頃は、深く案じ、才覚を表そうとしてるように聞こえる、とても煩わしい。人の名も、目慣れぬ文字を付けようとする、益ない事だ。
何事も、珍らしい事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずやる事だぞ。
<意訳>
寺の名前、その他の物にも、名を付ける事を昔の人は少しも気どらずに、ただ、ありのままに気安く付けたものだ。
最近は、深く案じて、おのれが才覚を表そうとした様に聞こえる名が多く、煩わしい。
人の名前も、見慣れぬ文字を使おうとするのは、読みにくいだけで良い事は無い。
何事でも、目新しい事を求め、奇抜を好むのは、あさはかな人の必ずやる事だとよ。
<感想>
兼好の美学を語った段である。
クールにシンプル。簡素で簡単。誰でもがわかりやすくて、それでいて深い。そんなかんじが兼好の好みだったようだ。
乱雑さや、目新しいだけの猥雑なもの、コテコテやゴテゴテを嫌う。きっと、兼好にパソコンをやらせたら、デスクトップに散らかったファイルの一つもないキレイでシンプルな環境を構築したであろう。
だから、兼好の出家後の法名も、卜部兼好(うらべ・かねよし)という本名を音読みさせただけの兼好(けんこう)なのだろう。
ところで、兼好より昔の時代の人は、みんな気どらずにシンプルに名前をつけた。と書いてあるが、それはどうだろう。たまたま兼好の時代まで残った名前が素朴で力強いものであったにすぎないのではなかろうか。逆を言うなら、名前はシンプルでいながら力があるもののほうが人々に親しまれ、後世に残りやすい。
原作 兼好法師
何事も、珍らしき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。
<口語訳>
寺院の号、そうではない万の物にも、名を付ける事、昔の人は、少しも求めず、ただ、ありのままに、易く付けたのだ。この頃は、深く案じ、才覚を表そうとしてるように聞こえる、とても煩わしい。人の名も、目慣れぬ文字を付けようとする、益ない事だ。
何事も、珍らしい事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずやる事だぞ。
<意訳>
寺の名前、その他の物にも、名を付ける事を昔の人は少しも気どらずに、ただ、ありのままに気安く付けたものだ。
最近は、深く案じて、おのれが才覚を表そうとした様に聞こえる名が多く、煩わしい。
人の名前も、見慣れぬ文字を使おうとするのは、読みにくいだけで良い事は無い。
何事でも、目新しい事を求め、奇抜を好むのは、あさはかな人の必ずやる事だとよ。
<感想>
兼好の美学を語った段である。
クールにシンプル。簡素で簡単。誰でもがわかりやすくて、それでいて深い。そんなかんじが兼好の好みだったようだ。
乱雑さや、目新しいだけの猥雑なもの、コテコテやゴテゴテを嫌う。きっと、兼好にパソコンをやらせたら、デスクトップに散らかったファイルの一つもないキレイでシンプルな環境を構築したであろう。
だから、兼好の出家後の法名も、卜部兼好(うらべ・かねよし)という本名を音読みさせただけの兼好(けんこう)なのだろう。
ところで、兼好より昔の時代の人は、みんな気どらずにシンプルに名前をつけた。と書いてあるが、それはどうだろう。たまたま兼好の時代まで残った名前が素朴で力強いものであったにすぎないのではなかろうか。逆を言うなら、名前はシンプルでいながら力があるもののほうが人々に親しまれ、後世に残りやすい。
原作 兼好法師