金いろの夕方

金いろの夕方

鳥がついばむ赤い実

道の途中でふりかえると

ともだちと見た花が

遠くで咲いている

金いろの夕方

赤い葉を踏みしめ

道を歩いていけば

まだ会わぬひとたち

星をみあげようと

夜空を待ってる

ひとはひとつの笛である

ひとはひとつの笛である

かたちと

呼吸と

重心が

うたを伝える笛である

相手に届ける笛である

雪が降るまえに

雪が降るまえに

つぎの桜のはなしをしましょう

空がいちばん青くなり

花がいっせいにひらく

その桜を

みあげていてください

雪が降るまえに

つぎに飛ぶ蝶のはなしをしましょう

雪が降るまえに

つぎの春の約束をしましょう

いちどきりの挨拶

わたしたちは

まいにち

たくさんの人に

挨拶をしている

これがはじめて

これがさいご

ただいちどきり

いとしさも

にくしみも

すべて

いちどきりの挨拶

永遠のなかの

一瞬の挨拶

どこまでもいこう

どこまでもいこう

会えなくなっても

言葉をかわせなくなっても

記憶は細胞のなかに

いのちのなかに

そのあとも

こうして巡る風のなかに

いきていくから

どこまでもどこまでも

一緒にいこう

夜

どこかで

フクロウが鳴き

眠る魚の夢は途切れ

朝を待つ鳥は

樹の上ででまるくなる

風のままに

樹から落ちた葉は

柔らかな土になる

黙々と地面を歩く虫

その背中の固い翅を

月の光がなでていったよ

知らない空を飛びたいな

知らない空を

飛びたいな

知らない花を

見てみたい

知らない食べもの

あじわって

知らない人と

はなしたい

知らない歌を

うたいたい

知らないあしたに

飛びこみたい

ためしてみる

ためしてみる

たぶんそれだけ

ためしたことを

つづけてみる

たぶんそれだけ

つづけたことを

またためしてみる

きっとそれだけ

ためしに手をのばしてごらん

ためしに生きてごらん

もしかしたら

もしかしたら

これが

はじまりかもしれない

もしかしたら

なにもかも

たいせつなことかもしれない

もしかしたら

このいっしゅんが

そのときかもしれない

そんな日もあるさ

そんな日もあるさ

だって

一年は長い

一生は長い

そんな日もあるさ

あたらしいなにかは

まえをみるだけじゃ

うまれない

だから

そんな日もあるさ

涙と海

涙のように

時は降る

手のひら溢れ

地にしみた

涙をあつめ

流れる川は

時の海へと

旅に出る

あなたの涙は

ひとつのさよなら

あなたの涙は

ひとつの海

決めたから

どの扉も

開けてよい

どの道も

歩けばよい

どんな雷雨も

恵みの雨にすると

決めたから

飛びかたを教えて

渡り鳥は

海をわたるとき

なにを思い飛ぶのだろう

どこにもたどり着かないとか

じぶんは生きているのかとか

ひとが不安と名づける

胸の振り子は

鳥のこころにあるのだろうか

星のみちびきで

ひとつの群れが一羽となって

迷わずに飛ぶのだろうか

もしもそうなら

その飛びかたを教えて

目的の場所をめざすために

まちがってる

ふりかえり

みわたして

めをとじて

好きがひとつもないのなら

なにかまちがってる

嫌いがひとつもないのなら

それもなにかまちがってる

じぶんがどんな人間か

思いだせないのなら

ほんとうにまちがってる

ぜーんぶこのまんま

ぜーんぶ

そのまんま

このかばんにいれて

あたらしい道をいこう

いらないものは

しぜんになくなるし

ひつようならば

そのうちであうだろ

ぜーんぶ

このまんま

旅びとになろう