火種とともに

あなたから

ひきついだものは

血でなく

記憶でなく

小さな火種

この雨から守ろう

この風から守ろう

日がさしても忘れず

息を吹き掛け

眠りのなかでも

火種とともに

夢をみよう

背の高いバラの樹

背の高いバラの樹

屋根より高く

咲いてるお花は

鳥がみてるよ

お前のことは

空が見てるよ

お日さまも

お月さまも

お前をみるのが

楽しみなんだよ

青空のしたも

雨降る日でも

お前はいつも

きれいだよ

コスモス咲いたら

コスモス

咲いたら　秋

終わらない夏休みは

昼寝の夢のなか

コスモス

咲いたら　秋

風に揺れて

きのうの歌のきれはしが

花びらの合間を

とんでゆく秋

確かに空はつながってる

確かに空はつながってるけど

うまれる雲のかたちはちがう

だから旅する意味はある

確かに空はつながってるから

別れは悲しいものじゃない

雲はかぎりなくうまれ

ひとは必ず出会うだろう、

よろこびたいのだ

はじめて

立ち上がったときの

あのよろこびを

おもいだしたい

だから

自転車に乗ろうとしたり

知らない場所に住んだり

なんにもわからないことを

はじめてみるのだ

あかちゃんみたいに

笑いたいのだ

やったやったと

両腕ふってとびはねて

よろこびたいのだ

果実の月

みごとだったよ

お月さま

あたたかい風の夜に

たっぷりとまるい

果実のように

お月さまが満ちた

おんなじ月は

ないんだね

たったひとつの色

夕焼けのうえに

雨雲がかさなる

なまえのない色

ひとつでない色

はじめての色

さいごの色

流れてゆく時間に

ひかりが描いた

たったひとつの色

こどもたちよりも

きのう咲いた朝顔が

こんどはちがう色

雨が音たてて降って

トマトが赤くなって

きゃあきゃあ言いながら

駆けてく夏休みのこどもたち

きみたちよりももっと

あたらしいものみつける

きみたちとはちがうものを

きみたちよりも我儘に

きみたちよりも淡々と

空はある

どこにいようと

空はある

みうしなわずに

いるならば

だれといようと

空はある

わすれさらずに

いるならば

したをみてても

空はある

かげのぶんだけ

さんさんと

とぎれることなく

空はある

それでもきっと朝はくる

それでもきっと朝はくる

無邪気なひとも

悩めるひとも

生きてるならば朝はくる

その朝をうけとることは

きっとだれかのためになる

いつかだれかのためになる

あしたもきっと朝はくる

これからさきに

いまあたらしくできていく

あたらしいともだちは

これからさきに

ふるいともだちになる

いまあたらしくできていく

あたらしいのぞみのたねは

これからさきに

なつかしいおもいでになる

風の夢

風がおきる

めいっぱいの夏の空

日傘がもってかれそうな

風が吹いている

雀が二羽鳴き交わす

そのおしゃべりも思い出に

こどもが歌う夏のうた

みじかい記憶をおみやげに

遠くへと旅する風

おまえのうまれたところと

これからたどりつくところ

風の夢はまだつづく

からっぽのときは

手のひらがからっぽ

それはだれかと

手をつなぐとき

こころがからっぽ

それはあたらしいことが

目のまえにやってくるとき

空はおなじかな

地球の外からみた雲のもよう

まぶしい青い空のうえ

今日みた空とおなじかな

車がゆきかう道をよこぎったとき

こどものころの海がよぎる

砂粒だらけの腕にそそがれた

あふれるばかりの夏のひかりを

アスファルトのうえで思い出す

あたらしいことをひとつするのは

なつかしいことをおもいだすため

ちいさなじぶんが

ききたかった物語は

このさきのじぶんが

読んであげるよ

地球の外からみた雲のもよう

夜にかくれてみえないけれど

ほんとは空はおなじかな

きらきらしてる

きらきら

こぼれる光

さらさら

こぼれる時間

めらめら

なにが燃えるか

はらはら

なにがおきるか

ほらほら

どんなかけらも

すべては

きらきらしてる