あしあとの声

お山のなかで春を待つ

生きものたちの声がする

雪に残ったあしあとが

いろんな大きさのあしあとが

もくもくと歩いたあしあとが

わらわらわらわら声あげる

生きてやる

生きてやる

ぜったいぜったい

生きてやる

理由なんかあるもんか

生きてやるったら

生きてやる

春のごほうび抱きしめて

おたけびあげて跳びはねる

その日を見ずに死ぬものか

おまもり

こどものころ

手放せなかった

ぬいぐるみのように

うとうとしながら

にぎりしめてた

毛布のように

きれぎれになって

ぜんぶは思い出せない

子守歌のような

ものがたり

そのきれはしが

こどもだったあなたの

最強のおまもり

まっしろ

屋根はまっしろ

木々はまっしろ

階段歩いて

あしあとつける

道はまっしろ

前はまっしろ

竹の気質

竹は

まっすぐで

穏やかで

いいなりにならない

風と歌い

鳥をとまらせ

光をうけとめ

土を抱く

たからのありか

こわそうとしても

こわれない

うばおうとしても

うばわれない

それはわたしのなかにある

けっしてうしなうことはない

たからはここだ

このなかだ

よろこびは たいまつ

よろこびは　

たいまつ

やみをてらす

みちをしめす

だいだいいろの

とびちるひのこ

まえへすすめ

あすをめざせ

雪みちの楽しさ

まっさらの

雪みちに

足跡つけると

楽しいでしょ

一日って

それだな

つぐみの質問

つぐみが街にきています

羽づくろい中の旅びとは

首をかしげて街を見る

あのいきものたち

探してるもの　なんだろな

いったいどこへ　いくのかな

らららのうた

ららら　ら　らいおんのひるね

りりり　り　りんごのはな

るるる　る　るりびたき

れれれ　れ　れもんとはちみつ

ろろろ　ろ　ろけっとすたーと

そらばかり

とことこあるくわたしのうえは

すこんとひろいそらばかり

うえからおさえつけるものなど

なんにもないさ

ほんとのことさ

こくこくかわるそらばかり

けっしてきえないそらばかり

雪のかたちの手紙

雪のかたちは

美しいものです

造った誰かに

お礼を言いたくて

そのかたちを

描いてみます

美しいものや

いとおしいものや

または狂おしいもの

見過ごせないもの

それはどこからうまれたのか

そのうみだされたところに

手紙を書くように

ひとは何かを造るのです

わたしたちは

手紙を受け取り

手紙を書きつづけます

星とわたしの関係

星がみえます

星からも

わたしが見えるかもしれません

だから

ちょっとだけ

背筋をのばしてあるきます

脈打つ世界にて

静かに世界は脈打つ

草木も人も

横たわる岩も

千年の山も

一瞬の泡も

その合間に呼吸する

生きものと呼ばれるわれわれ

みんな

気がついたらここにいた

というところはおんなじ

たまたま同じ季節に

はじまりとおわりを

一緒にすごしている

ちいさきものたち

待つものたち

雪降る夜の月

孵化する卵

風を待つ湖

ひろげた手のひら

ただ静かに

その日がめぐりくるまで

ひとつのはなし

ひとつとしとる

ひとつちかづく

ひとつすててく

ひとつみつける

ひとつゆるして

ひとつたたかう

ひとつないて

ひとつわらって

ひとつまよって

ひとつしんじる