願いの種

願いの種をまく

どんな花が咲くか

どんな実ができるか

まだ知るひとはないけれど

誰かがその花を見る

誰かがその実を食べる

小さな小さな願いの種

大きな大きな願いの種

わからず屋が必要だ

最近　なかなか

わからず屋　に

出会わない


小さな砂糖水のビンで

溺れたくないから

わからず屋が　必要だ


絶対に　絶対に　って　

強く思い続けるなら

わからず屋　が必要だ


世界を肯定するために

自分を肯定するために

わからず屋　が必要だ

こどものように

またあそぼうね

そう言って

一日を終える

こどものように

昨日に自分を残さずに

明日を想うこともなく

完璧に今日を終えて

すやすやときれいに眠る

こどものように

空に浮かんだ満月は

空に浮かんだ満月は

誰のものでもありません


ちいさなこどもが目をみはる

あまりに眩しくまんまるで


空に浮かんだ満月は

誰のものでもありません


眠る小鳥が目をさます

光がくすぐったいと言う


空に浮かんだ満月は

誰のものでもありません


白い光は歌となる

まるい姿は母となる


空に浮かんだ満月は

誰のものでもありません


すべての生きるものたちの

痛みをそっとなでてゆく

一日分の傷

一日を生きると　一日分

傷はついていくでしょう　

残る傷もあるでしょう

ならば　

望むことは

美しい傷あと

その傷により　

咲いた花






　

とことことこ

とことことこ

夏空の下　とことことこ

汗をかきかき　とことことこ

駅の階段　とことことこ

電車に乗ってほっとして

重い荷物をひざに置き

窓の景色を見ています

なんの理由もないけれど

こころ楽しくなりました

なんの根拠もないけれど

やりたいことはできそうです

とことことこ

これから先も　とことことこ

わたしのみちを　とことことこ

ポケットの林檎

わたしのポケットには

林檎が一個あるのです

ポケットの林檎

与える林檎

ポケットから取り出し

つやつやに磨き

目の前のひとに渡したあとで

ポケットがふくらんで

林檎のかたちに丸くなる

ポケットの林檎

永遠の林檎

元気です

元気です

だいたい　機嫌がよいのです

ひとが不機嫌でも　だいじょうぶ

天気のようなものだから

元気です

今日これだけは食べておこうと

ひとつ思いつけば　ＯＫ

前を向いて歩けます

だいすき と出会うため

だいすき　と　出会うため

うまれてきました

きらい　に　からだが埋まっても

だいすき　へ　だいすき　へと

手をのばしつづけます

みどりの葉は

葉をのばすときに

無理かもしれない　

なんて　考えません

おひさま　と　出会うため

うまれたのですから







　

おやすみなさい お星さま

おやすみなさい　お星さま

夜空のちいさなこどもたち

おやすみなさい　お星さま

かすかな光をたずさえて

気が遠くなる旅をして

おやすみなさい　お星さま

線香花火に火をつけて

小さな星と思うのだ

ああ　このようにはじまって

こんなふうに終わるのだ

大きな樹の声

語りかけたのは

そこにずっと立っていた

大きな樹です


立ちどまらないと

聞こえない声


満ちている声

満ちている唄

満ちている余白


大きな樹の根が

わたしの足もとと

つながると

呼吸がどんどん深くなる


大昔から

聞こえてる声

一枚の葉の上で

水が溢れる

空が波うつ

雲は無限に

風は無情に


まるい大きな生きものの

その細胞のたったひとつに

たゆたう一枚の葉の上で

わたしは手紙を書いている

探しもの

足りてるはずなのに

新しいのを探してしまう

だったら

探してるのは

ほんとは別のものだね

複雑になるとつよくなる

生きものは

複雑になると

つよくなる

刺さった棘のあとは

地に根を張る力

生きのびる力

空に手をのばす力

ここにある

どんなに足場が危ういときも

中心はここにある

倒れても立ちあがる

どんなに視界が悪いときでも

灯りはここにある

誰も消せない