たいまつを持て
夜の森でひとり
刀のかたちの月
けものの目の赤い光
見えない道を歩け
風の色とにおいで
どちらへ進むか決める
なにかが鳴いてる声を
冷たい耳がひろう
なにがあっても
あしたにたどり着くため
たいまつを持て
たいまつを持て
夜の森でひとり
刀のかたちの月
けものの目の赤い光
見えない道を歩け
風の色とにおいで
どちらへ進むか決める
なにかが鳴いてる声を
冷たい耳がひろう
なにがあっても
あしたにたどり着くため
たいまつを持て
からっぽ
まっしろ
風がとおる
つめたい指が
ふれたものは
あした降る雪
なつかしく
あたらしく
めぐるときの
粒子がひかる
これから
おもいでになる
歌が聞こえる
雪は
花びらよりも
淡くつめたく
永遠にくりかえす
ものがたりのひとひら
雪は
ひかりのころもで
世界をつつみ
音を消し去り
ほんとうの居場所の
扉をひらく
乳白色の翅がふるえる
風に似たものが
微弱な流れが
うすい翅をふるわせる
おなじふるえをもつものを
みつけたとき
翅はひろがり
飛べるのだろう
いきものはみな
ふるえているから
世界はともに
ふるえているから
手をのばして
空にとどくと思って
きもちがいいところまで
手をのばして
目をとじて思う
だいすきなこと
なつかしいこと
うれしいこと
ほめられることより
しあわせなことが
いっぱいあるんだ
目をとじて聞こえる言葉は
未来のささやき
目をとじて見える景色は
わたしの場所
目をとじてといかける
わたしがほしいもの
たくさん泣いて
たくさん笑って
たくさんみつめて
たくさん言葉にできなくて
たくさん旅をするの
たくさん覚えておきたい
たくさん手わたしたい
たくさんのさよならを
たくさんの大すきを
たくさんかかえて
たくさん歩いていくの
今夜も月をみあげています
月もみおろしているから
おなじ月をみている人がいるから
月をたよりにしている
数えきれないいのちがあるから
あるときは鏡
あるときは思い出
あるときは永遠
おなじ月は二度とないから
今夜も月をみあげています
真っ白な朝に
なにを思う
真っ白な一日で
なにを見る
たいせつなものは
もう自分の一部だから
あとは真っ白で歩き出す
空と地面と私と真っ白
あとは真っ白で歩き出す
空が大泣きしてる夜は
一緒に泣いていいんだよ
季節が変わるそのときは
一緒に変わっていいんだよ
風が吹いてるそのときは
世界を巡っていいんだよ
雨の日はねむいね
強いものも弱いものも
雨のひはねむいね
あしたをおもうことも
きのうをおもうことも
きょうはおやすみ
とまった雲のした
まどろむものたち
いのちあるものたち
夢のむすびめ
手のひらでころがして
きょうはおやすみ
ゆっくりおやすみ
それはとても
あたりまえの悲しみ
それは誰にとっても
とくべつな悲しみ
日々泡のようにうまれて
目のまえから消えても
永遠にわきあがる悲しみ
いつからいつまで
どこへいくのか
誰もしらずに旅をして
誰に渡すかわからない
手紙を書いて生きている
朝のひかりに透けてきらめく悲しみ
夜のあかりに浮かびあがる悲しみ
悲しみの泡のなかで
泳ぐさかなの群れ
息をしつづけることで
ぷくぷくと泡立つ悲しみ
生きてると怒る
生きてると笑う
生きてると泣く
生きてると望む
生きてると変わる
生きてると終わる
生きてるとはじまる
生きてるものと
生きていたものと
これから生きるものが
いっぱい存在する
この星のうえで
月が眠る間に
ちいさな庭に種を蒔く
どんな花が咲くか
誰も知らない
木の実が落ちる
小鳥が夢みる
ささやくみたいに吹く風は
あしたは舟を押している
月が眠る間に
記憶を掘り起こし
地図をえがく
見えるものと
見えないものが
おなじように
そこにあるうちに
ひとつの星と
もうひとつの星
ひとつの花と
もうひとつの花
ひとりの人と
もうひとりの人
そのふたつの共通のなにか
ふたつをつなぐみえない線
それをさがさずにいられない
ひとつの夢と
もうひとつの夢
ひとつの伝説と
もうひとつの伝説
ひとつと
もうひとつ
誰かにとめられたとしても
それをさがさずにいられない
おんなじときに
おんなじことを
一緒にきづく
それが
どうしてこんなに
嬉しいんだろう
わたしたちは
同じ水脈でつながる
あなたの震えは
わたしの震えだ
見えない水脈が
はっきり見えて
わたしたちは
ひたひたと満ちる