おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

チャイコフスキーコンクールⅩⅥ ガラ

2019年06月30日 | コンサート情報
モスクワとサンクト·ペテルブルクで行われたガラも終わり、第16回チャイコフスキー国際コンクールは全て終了しました。

前回とガラが全然違います。
全部門が一堂に会していました。
前回はピアノ部門のガラしか知らないのですが、審査員と一緒に連弾したり2台でバッハのコンチェルトを弾いていました。
ほぼ初見状態でも皆さん上手でしたが··

今回は2都市で移動して開催されました。
コンチェルトはゲルギエフの指揮です。

藤田さんはモスクワではモーツァルトの第1楽章、サンクト·ペテルブルクではチャイコフスキーコンチェルトの終楽章を演奏されていました。

サンクトでは既に顔つきが変わり、自信を感じる落ち着いた表情になっていました。

終楽章で藤田さんがとても美しく演奏されるところがあるのですが、音の変化が本当に素晴らしい。そのパッセージのあとヴァイオリンが受け継ぐのですが、これがゲルギエフの手にかかると藤田さんの美しさがより際立ちます。ヴァイオリンの音色が藤田さんの音色をそのまま受け継いでいます。
それからあのダブルオクターブ、ファイナルの時はオケが慎重なテンポで盛り上げて藤田さんが困らないようにしていた気がしましたが、ゲルギエフはやはり上手い。
違和感なくあの見せ場を作り出します。

コンクールの演奏より良かったです。
藤田さん、既に成長したように感じました。
楽しみなピアニストです。

TCH16 Winner's GALA

追記
自分の記事を読み返して、あら?と思いました。
藤田さんが師事されている野島稔さん。ご存知のようにレフ·オボーリンに師事されました。オボーリンの師はイグムノフ。
イグムノフは硬質ではない柔らかな肉声のような音での明瞭な発音を要求した先生でした。
藤田さんの音、そんな音でした。
藤田さんが2位受賞後のインタビューで、「これからも良い音と響きを作り出すことは変わらない」と話していました。

以前書いた記事です。
宜しければご覧下さい。予習しておきます

ずっと遡るとモーツァルトにたどり着きます。
面白いです。極東の地に200年以上の歴史が生きて伝わるとは。
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チャイコフスキーコンクールⅩⅥ 結果発表

2019年06月29日 | コンサート情報
第16回チャイコフスキーコンクール終了しました。

こちらは結果発表の様子。
thaikovsky Competition 2019 piano laureas naming
マツーエフの言葉。
「最も難しいことは明日から始まります。明日、このコンペティションを素晴らしいキャリアの始まりとして思い出すでしょう。」

classical music news
こちらはレビュー。
藤田さんには厳しめの言葉が並んでいます。誉めているようですが何か引っ掛かる言い方。
野島稔さんもおっしゃっていますが、成熟したピアニストに成長してほしいと。

原田英代さんの「ロシアピアニズムの贈り物」からヴィルサラーゼとニコライエヴァ(マスレエフの先生の先生)の言葉をご紹介したいと思います。

ヴィルサラーゼ
初心者に急速な進歩を求めるほど有害なものはなく、詰め込み式ほど悪いやり方はない。芽を出したばかりの植物を地面から無理矢理引っ張ろうとする者は、根こそぎ駄目にしてしまうという危険を冒していることになるのであり、それ以外のなにものでもない、という教育方針のもとに生徒を育てている。

タチアナ·ニコライエヴァ
才能に恵まれた将来有望な弟子を教える音楽院の教師が今日直面している問題は少なくない。一般に過大評価されがちなコンクールでの成功後、教え子の才能が萎んでしまわないように、もとのスケールを失わないように、型にはまってしまわないようにするにはどうしたら良いか、これが問題だ。
コンサート活動に熱中するあまり自分の全面的な教育に注意をむけなくなり、その事が発達の調和を乱し想像面にも否定的な影響を及ぼしている。そうした学生もまだまだ落ち着いて勉強し、真面目に授業に出て、自分が何でも許されるコンサート奏者ではなく、学生であることを実感する必要がある。
獲得した成果を守り、自己の創造的見地を固め、創造上の信念を人々に納得させることの方がはるかに難しい。困難が生じるのはまさにこの点なのだ。


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チャイコフスキーコンクールⅩⅥ ファイナル最終日

2019年06月28日 | コンサート情報
今、藤田さんの演奏を聴き終えました。

袖で待っている間待ち切れない様子で、演奏するのが嬉しくて仕方ないようでした。
期待通り、最後までのびのびと演奏されていたと思います。
ホロヴィッツが演奏したのと同じ場所でその空気を感じて弾けるのが嬉しいとロシアのインタビューで答えています。インタビュー

ロシア音楽をこんなに嬉しそうに気持ちを込めて演奏してくれたらロシア人ではなくとも嬉しくなります。
彼には人を喜ばせる才能がある気がします。

最後まで音が荒れなかったのは今のところ2人だけです。

審査員のお一人が、音は丸みがあって(まろやかで)深く品があるべきだと。
大きな音で速く弾くのは騒音だとおっしゃっていました。

ファイナルに残った人でも音を叩いている人もいます。
セミファイナルで終わってしまった人の中には洗練された音と深い音楽を聴かせてくれた人もいるのに、また聴きたいの境目が私にはさっぱりわかりません。❓
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チャイコフスキーコンクールⅩⅥ ファイナル2日目

2019年06月27日 | コンサート情報
カントロフ、素晴らしすぎっ !!

指揮者のヴァレリー·ピサレンコもコンテスタントに気遣いながらという指揮ではなく、指揮者として彼の音楽を奏で、オーケストラのメンバーも全くプロの顔になっていました。

コンクールではなかったです。
コンサート中継を見た。

腕の長いところや身体の使い方、澄んだ音。
なんだかギルトブルクに似ています。
ピサレンコとギルトブルクのショスタコのコンチェルトのCDが素晴らしく、ベートーヴェンも今度録音するらしいです。

ピサレンコとカントロフ、舞台袖でも信頼している者同士という感じでした。

カントロフ、もう何位でも構いません。
私の中では歴代1位です !
本物のピアニストがコンクールを受けに来てくれたお陰で、彼を知ることができ感謝です。

堪能しました。
彼の深くわき上がってくる音楽が好きです。
音も!

好きなピアニストが増えて楽しみも増えました。
嬉しい !!
Alexandre Kantorow final
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チャイコフスキーコンクールⅩⅥ ファイナルの前に

2019年06月25日 | コンサート情報
セミファイナルをやっとゆっくり聴くことが出来ました。(それでも全員はまだ聴けていません)
シシキン、あんなに上手いと思っていませんでした。
失礼なっ、です。

音に広がりがあり、色々な音を持っていて抜群にコントロールされています。
エキサイトするかと言われれば、ん~、ですが最後までじっくり聴いてはしまいます。
それにプログラムの流れも上手く構成されていて疲れさせません。
良いピアニストだと思います。リサイタルに行ってみたいと思います。
ヴィルサラーゼのお弟子さんのようで。

フランスのカントロフが結構好きです。
ロシアのピアニストも好きですが、フランスのピアニストも私は好きで、コンクールを聴いても自分の好みが出るものだと思いました。

彼の演奏は内面が伝わってきます。
ロシア人が音そのもので聴かせるのに対し(ギレリスやリヒテルの時代はそうとは限らなかったと思いますが··。音+α。サムイル·フェインベルクのバッハなんて本当に素晴らしい)、カントロフはパッションがあります。内面深くから伝わるものがあります。
ストラヴィンスキーの色彩感溢れる演奏、ワクワクしました。
最後のフォーレはうっとりしてしまいました。
今回のコンクールで聴いた中では一番満足感が得られました。
Akexsandre Kantorow semi-final

彼はドゥバルクと同じレナ·シェレシェスカヤのお弟子さんです。
フランス人の音は香りがあっていいです。 
コンチェルトもブラームスを弾きます。

楽しみ~
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チャイコフスキーコンクールⅩⅥ もうファイナル

2019年06月23日 | コンサート情報
あっという間にファイナルです。

藤田さんファイナル進出です。
嬉しい!
最後までのびのびと演奏できますように。

音の柔らかさがどのくらいホールに響いているかは録画ではわかりませんが、なにせ音楽に真摯に向き合っている姿が好感が持てます。
緻密に構成しているように感じますが、表面だって聞こえないとしたら彼の音のまろやかさでそう感じるのかなと何となくそう思います。

パソコンが突如壊れ、皆の演奏が聴けていないのですが、お気に入りになったコパチョフスキーは進出できませんでした··
残念··
あの透る音が好きなのに··phillip kopachevtsky first round

少し聴けましたが、やはり最後でちょっと崩れていました。最初の謝肉祭も本調子ではない感じでした。
選曲もチャイコンっぽくないかも··

マスレエフが自分が自信を持って弾ける曲を選ぶのが一番いいと言っていましたが、もう少しロシア色のあるものを選曲しても良かったというか、聴きたかったです。
もっと全力で演奏しなければ弾ききれないプログラムが聴きたかったです。

日本で聴ける機会がないかもしれないことが残念過ぎます。
これはロシアに行かなければ!
マスレエフも全然来日しないし、ロシアに行った方が良さそう··

ロシア語は知りたいので勉強するつもりではいます。
グネーシンのソルフェも何を言っているのか知りたいし··
読み方を大体覚えた程度なので、あの切れ目のわからないロシア語、冠詞がないので名詞を活用するロシア語、難しい言語と言われているロシア語。

ク~、頭に入るか··


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チャイコフスキーコンクールⅩⅥ セミファイナル

2019年06月22日 | コンサート情報
第1ラウンドが終わったらもう速攻セミファイナル開始。

Andrey Gugninさんを聴いている所ですが、成熟したピアニストで表現の幅も広いです。
もちろん音も美しく気持ち良く聞けます。
もうコンクールなんて必要ないように思えるピアニストですが、私はこの方を知らなかったのでやはり大きなコンクールは多くの人に知ってもらえる機会なのだと今更ながら思いました。
TCH#16 Andrey Gugnin

おっ、エライもんだと思っていたら最後の楽章で危なくなってしまいました・・
この特殊な状況で最後まで冷静に、しかも情熱を持って演奏しきるのはたいへんなことです。

そう考えると、前回のマスレエフ、全てのラウンドが安定していました。
第2ラウンドは今でも時々聴きたくなります。
コンクール直前にお母様を亡くされ、集中力が研ぎ澄まされていました。
ものが食べられなくなり体力的には辛かったようで、ファイナルのオケとの合わせの前日は起き上がれず1日中寝ていたそうです。
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チャイフスキーコンクールⅩⅥ 始まりました

2019年06月20日 | コンサート情報
前回のチャイコフスキーはショパンコンクールが終了してからやってたんだと気付くくらいコンクールに興味がなかったのですが、今回は一応チェックしています。

今日は第1ラウンドの2日目です。
1日目は、ん~···
2日目は少しコンクールっぽくなってきたような。
ドミトリー·シシキン、見たことがあると思ったらショパコンのファイナリストなのですね。

今、聴いたなかで、ん?物語を感じる、何者?という人が··フィリップ·コパチェフスキー。
写真と実物はちょっとサギじゃないですかですが、平均率1番やハイドンソナタを選んでいる所をみると余裕を感じます。
既に国際的にも活躍しているピアニストのようで、それでもコンクールを受ける所をみると悔いのない人生を歩みたいと挑戦しているのだろうと勝手に応援したくなります。

第1ラウンドでも実力差が結構あるのだと思いました。
でも日本人は1人しか出場できていないわけで、悲しい話です。

今日は唯一の出場者、藤田さんの演奏があります。
起きてはいられないのでライブでは見られないと思います。

のびのび弾いてほしい!
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ミハイル・プレトニョフ ピアノリサイタル 2019/6/17

2019年06月17日 | コンサート情報
気絶しそうになりました・・
特にリストの「La Leggerezza」

この曲の演奏が終わると客席がどよめきました。
2階、3階席のお客さんがプレトニョフの魔術を見ようと次々と身を乗り出していました。

私の席からは身を乗り出しても全く見えませんでしたので音だけを聴いていましたが、ピアノが勝手に共鳴して音が増幅していく様、軽やかな音でも響きを増しながらいつしか空気に溶け込んでいく、というより別の空気を生成しているというか・・・

ロシアンピアニズムの真骨頂です。

前日勉強したプレトニョフの師フリエールが、「硬質ではない豊満な音が前代未聞の大音響となって大ホールに響き渡る」演奏をした人物であったこと、リストの弟子ザウアーがリストの次にリストのソナタの最高解釈者であるとの賛辞を送ったこと、そんなことを思い出しておりました。

リストのピア二ズムを受け継いだロシアンピアニズム。
プレトニョフの演奏を聴いて、リストはこんな音で演奏していたのではないかと思いました。

リストというとバリバリ弾きまくる派手な演奏家と思いこんでおりましたが、プレトニョフの音は柔らかく、響きで聴かせる演奏。

その音で聴いたリストは恐ろしいくらいに音が押し寄せてくる。
これまで聴いたリストとは全く違うものでした。

帰りがけ階段を下りておりましたら後ろを歩いていた若者が「リストの曲ってあんなに凄いと思わなかった」

本当に。
プログラムはどちらかと言うと地味な選曲。
後半は全曲リストで、続けて演奏されました。

昨年聴いたヴィルサラーゼが後半のプログラムをショパンの小品で組んだのと似ているなと思いながら聴いていました。
このプログラミングにストーリーがあるような。

プレトニョフの生演奏は初めて聴きましたが、芸術としての音楽が光を放っていました。
そこに彼自身が投影されることはない。

動画で見るとやる気あるのかという気がしていましたが、実際に聴くと恐ろしいくらいの芸術家でした。
気持ちではなく、音だけで勝手に泣けてきました。

プログラムです。

詩的で宗教的な調べの「葬送」。あの左手の連続オクターブ、弾いてる感じではありませんでした。別の楽器でそういう音響を作っているのかと思いました。柔らかいまま音が膨れ上がっていきました。魔術です。

ベートーヴェンも良かったです。
よくその音を見つけたなという面白さがありました。ホロヴィッツのようにどこからそのメロディ見つけてきたのかというような。しかしそれが伏線になって有機的な繋がりを生み大きな造形物を生むというか。
指揮者であり、作曲家でありというプレトニョフならではの発想。
「熱情」第2楽章の終わりから終楽章への導線は見事でした。そして終楽章の循環呼吸のように続く16分音符。蜘蛛の糸のように途切れることなく、しなやかに操っているようでした。

魔術師としか思えない・・
どこの時空から来たのか・・

ベートーヴェンとリストのプログラム。
ロシアンピアニズムの源流とも言えるプログラムです。
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予習しておきます

2019年06月16日 | 重力奏法
月曜日にプレトニョフを聴きに行くのでちょっと予習をしておきます。

例の「ロシア・ピアニズムの贈り物」によると、

プレトニョフの師はヤーコフ・フリエール(1912-77)
フリエールの師はイグムノフ(1873-1948)
イグムノフの師はズヴェーレフ(1832-93)
ズヴェーレフの師はデュビュック(1812-98)とヘンゼルト(1814-89)

スゴイ・・
家系図でもこんなに遡れません・・

デュビュックの師はフィールド。フィールドの師はクレメンティ。
ヘンゼルトの師はフンメル。フンメルの師はモーツァルト。

クレメンティとモーツァルトの関係は既にご紹介しました。

ご存知のお名前もあると思いますが、少しずつ現代に近付けて大先生方をご紹介したいと思います

・ズヴェーレフ
ヘンゼルトに徹底して練習の意義を叩き込まれ、厳格な指導法を編み出す。
厳しいレッスンで知られていた。準備不足だった弟子のラフマニノフに「出ていけ!」と怒鳴り、次のマクシモフにも同じ所で怒鳴り、マクシモフの座っていた椅子を蹴りマクシモフは椅子から転げ落ち、それを見ていた3人目の生徒はもうビクビクで問題の箇所で上手く行くはずもなく、ズヴェーレフの怒り爆発。「3人とも破門だー」そのあとの生徒も怒り狂うズヴェーレフに「出ていけ――‼‼」

毎日の読書も義務付けられていたそうで、何をどこまで読んだか内容を報告しなければならなかったと。読みの深さが足りないと不合格となり再度読み直し。

しかし厳しい規律は彼らに偉大な仕事をこなす基盤を作る。
彼は弟子たちと共に音楽会、劇、オペラを鑑賞し、小説の解釈の議論もした。

「この素晴らしい教育者は子供たちに関心を起こさせ多種多様な音楽の材料を使って惹きつけた。先生が教えてくれたものの中で最も価値のあるものは腕の使い方。生徒が腕を緊張させ硬く乱暴な音で弾いたり、指先を緊張させて肘を動かしたりすると、情け容赦なく叱った」と弟子のひとりが言っています。

ズヴェーレフ門下 ラフマニノフ、ジローティ、スクリャービン、イグムノフ等。

・イグムノフ
ロシアの最も偉大な教師の一人。
一つ一つの音が聴きとれないほど速く弾く演奏を嫌い、音が明瞭に発音されるよう生徒に要求。しかも乾いた硬質な音ではなく、柔らかさの骨頂ともいえる肉声のような音での明瞭な発音で。
ネイガウスの弟子であったギレリスがイグムノフのレッスンを受けたいと申し出るが他のクラスの生徒を教えることを遠慮。しかし何度も熱心に頼むギレリスに真剣さを感じレッスンを行う。

ネイガウスが病気だった時にイグムノフのレッスンを受けたことのあるヤーコフ・ザークは「演奏の細部を教えるのに彼ほどの愛情を持ってできる人はなかなかいない。数小節の中で何と多くの重要なこと必要なことを語ったか。作品はまるで春の日差しを浴びたつぼみのようにほころびだした」と語っています。

イグムノフ門下 オボーリン(アシュケナージの師)、マリヤ・グリンベルグ、フリエール等

マリヤ・グリンベルグの演奏

J.S.Bachのチェンバロコンチェルト第5番。第2楽章はコルトーが編曲している「Arioso」で有名。
彼女はユダヤ系の家庭に生まれたことで生涯不当な扱いを受けていましたが、その演奏は20世紀屈指のピアニストと言われています。

・フリエール
国際コンクールでギレリスと競い合う。
フリエールの弾くリストのソナタに感動したリストの弟子ザウアーから「作曲者リストの次にこの作品の最高解釈者」とこの曲の手書きの楽譜を賛辞が記されたサイン入りで贈られる。
演奏スタイルは壮大、硬質でない豊満な音が前代未聞の大音響となって大ホールに響き渡り、クライマックスで見せたダイナミックな音はリヒテルからもギレリスからも聴いたことのない轟然たるものであった。

教師として、作品の詩的構想を学生ができるだけ正確に深く理解することに専念した。

Yakov Flier plays Liszt Piano Concerto No.2 (Anosov 1948)



これを書くためにマリア・グリンベルグの演奏を初めて聴きましたが、この情熱、繊細さと格調高さ、一気に好きになってしまいました。
ヴィルサラーゼも彼女を好きな演奏家の一人に挙げているそうです。
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見えてくる

2019年06月16日 | 不思議な音の国
「不思議な音の国」をこれまで26人の生徒さんに使ってきました。1年半ほどの期間にです。



短期間でこれだけの生徒さんに同じテキストを使った経験は私にはありません。
それだけこのテキストを信頼したからです。
これまで色々なテキストを使ってきましたが、やっと信じられるものに出会えました。

同じテキストをこれだけの人数の生徒さんに使うことができたおかげで、
・このメソッドでレッスンをすると生徒さんがどのような弾き方をするのか
・どのくらいの期間で1冊終えられるのか
・癖のある手とナチュラルな手
・練習量の差
・保護者の方のご協力の大きさ
など色々と学ぶことができました。

このテキストを使っていない生徒さんもおります。
「不思議」では音の出し方から始まり、様々なタッチをピアノを始めて1年未満の生徒さんにも教えていきます。

ところが「不思議」を使っていない生徒さんは奏法をひとつずつ覚えていくテキストを使っていないのでそれを身に付けることができていません。

私の教え方が十分ではなかったのが問題なのですが、無理なくそれを教えられるテキストでなければ私のような力の指導者では教えきれないことも事実です。

このメソッドでレッスンをしていると、これまでその内できるようになるだろうと思っていたことが幻想であったことがわかります。

ピアノを弾くのに向いている手、身体の支え、音楽に向いている感性、美的センス、聴く力、集中力、思考力。
これらは育てるものと思っていましたが育てきれないものが存在すると感じるようになりました。

また、イリーナ先生がおっしゃっていた「子供の成長は親次第」
預けっ放し、付き添っていても見ているだけで吸収しない、積極的に参加。
これはそのまま子供に反映します。

あまり気にしないようにしてきたことが見えるようになってしまい、複雑な気持ちでいます。
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「ロシア・ピアニズムの贈り物」#2

2019年06月14日 | 書籍紹介
原田さんの「ロシア・ピア二ズムの贈り物」から今回は系譜の話を。

ロシアのピアノ芸術の種を蒔いたのはアイルランド人ジョン・フィールドだそうで。
ノクターンの先駆者として知られているあのフィールドです。

彼はピアニストとしてもかなりの腕前だったそうです。
恩師であるクレメンティが演奏活動を辞めピアノ製造に熱を入れ、デモンストレーションのピアニストとして最も優れた弟子であったフィールドをサンクトペテルブルクに同行させたのがフィールドとロシアの出会いでした。

フィールドはクレメンティが次の目的地ドイツへ旅立ってもそのまま当地に留まり、このことがロシアのピアニスト黄金時代を築く基となりました。

フィールドは現在もロシアピアノ楽派で受け継がれている「ジュ・ぺルレ」と言う「真珠の粒」奏法を見事にマスターしていました。

ロシアにコンサートで訪れたドイツ人アドルフ・フォン・ヘンゼルト。彼はモーツァルトの弟子フンメルに教えを受け「ジュ・ぺルレ」奏法を習得していました。
ヘンゼルトの演奏はリストの豊かな響きとフンメルの滑らかさを併せ持ち、彼の「歌う」ピアノ演奏は無比のものと謳われました。

ヘンゼルトは格別の待遇でサンクトに留まることを決意し宮廷ピアニストになります。
その傍ら法律学校でピアノを教えたそうです。彼は「詩情豊かな雰囲気、洗練された優美さ、色彩に富んだ音色、芸術的な多様性が自己の中で発達する」ことを生徒たちに要求し促したそうです。
これはロシアピアノ楽派の特徴を表しています。

ヘンゼルトがサンクトに留まって4年後、リストが当地を訪れます。互いの名声を聞き及んでいた2人はそれから40年間親好を続けます。
ヘンゼルトの厳格なメソッドは弟子によってラフマニノフ、スクリャービンにも伝えられていきます。

リストはロシアで直接教えることはありませんでしたが、ワイマールで教えた弟子たちによって、リストのピアニズムがロシアで受け継がれていきます。

そのリストに基礎を教え込んだのがベートーベンの弟子ツェルニーというわけで、ロシアンピアニズムはベートーヴェンまで遡るとなるわけです。

それならフィールドの師クレメンティもその一員と考えて良いわけで、「ピアノフォルテの父」の面目躍如です。ベートーヴェンの「皇帝」を出版していて繋がりもあります。

それならヘンゼルトの師の師モーツァルトもその一員ということに・・
しかしモーツァルトはクレメンティの演奏を「ケッ、指痛めるわ。姉さんあんなの弾いちゃだめだ」と言い、一方クレメンティはモーツァルトの歌う演奏に感銘を受け、歌うことのできるピアノを作りたいと演奏活動を辞めピアノ製造にのめり込むことに。

モーツァルトはクレメンティのテクニックを妬んで「指が硬くなる」からナンネルに弾かないように言ったとも言われています。

利益をむさぼるクレメンティに嫌気がさしたフィールドがクレメンティのドイツ行きを拒みロシアに定住することになり、それがロシアンピアニズムを築くことになる。

書いていてもわけがわからなくなります・・
グルグルしてきます。

クレメンティ→フィ-ルド→「ジュ・ぺルレ」
モーツァルト→フンメル→ヘンゼルト→「ジュ・ぺルレ」
ベートーヴェン→ツェルニー→リスト

この系譜を知るとロシアンピアニズムの特徴がよくわかります。
この芸術がロシアに流れ込んだのは、ピョートル大帝やその後のエカテリーナ女帝が関係します。

リストと同じくウィーンでツェルニーに師事したレシェティツキは、アントン・ルビンシュテインが初代学校長を務めたサンクトペテルブルク音楽院で教授となり多くの弟子を育てました。弟子であった奥様もたくさんのお弟子さんを育てています。

弟子のひとりがクロイツァー、プロコフィエフ、ホロヴィッツの少年時代の師タルノフスキー、バーンスタインの師ヴェンゲローヴァを育てています。

ホロヴィッツはキエフ音楽院でアントン・ルビンシュテインの弟子ブルーメンフェルトに師事。

気難しいアントン・ルビンシュテインの音楽院以外の唯一の弟子がヨーゼフ・ホフマン。熟れた苺の人です。

知らないお名前がゴロゴロ並び、とても覚えられません。
まっ、覚えなくても良いのですが・・

今のところまだ、ネイガウスの名前は出てきておりません。

ネイガウス以前の歴史も相当立派なようで。

次回は、音楽家の言葉で印象に残ったものがあるのでそれをご紹介します。


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「ロシア・ピアニズムの贈り物」#1

2019年06月13日 | 書籍紹介
「ロシア・ピアニズムの贈り物」原田英代著を読んでいます。

5年前に出版された本なので新しいものではないのですが、その頃はまだロシア音楽は好きでもロシアンメソッドなどと言う言葉さえ知りませんでしたので、たとえ見かけていても気付かなかったと思います。

原田さんはモスクワ音楽院のヴィクトル・メルジャーノフ教授の愛弟子の方だそうです。
東西の壁が崩壊したことでロシア人音楽家が西側に出ることが容易になり、ドイツで教授のマスタークラスを受講したことが最初の出会いだそうです。

教授の強靭さと柔軟性が同居したテクニック、そこから生まれる響きの豊かさ、終始語られる音楽。亡き巨匠たちの録音で耳にした演奏が目の前に実際に存在していた驚き。

耳を疑いたくなるほど美しい幻想の世界を描くのその音楽は彼の柔らかい手首から生まれているように見えたそうです。
手が小さいため指使いに工夫を凝らしていた原田さんはこのテクニックなら楽譜通りの指使いで弾けると直感されたそうです。

(これと同じような経験を実は私は学生の頃にしています。私の恩師は小柄で手もかなり小さい方でした。レッスンで先生の手首に度々手を乗せさせていただきましたが、その柔軟性と弾力性には毎回驚きました。この動きがあれば遠い音でも力むことなく届くと思いました。)

原田さんがメルジャーノフ教授に弟子入りした時、「10度は届くのかね」と訊かれ「いいえ」と答えると「では、伸ばせば」と言われたそうで。

そして原田さんのゼロからの修業が始まったそうです。それまでの知識を全て忘れ去り、新たな奏法、音楽への新たなアプローチ、全てにおいて新たな人生が始まったそうです。

ロシアピアニズムの礎を築いた一人ヘンゼルトをリストは「私にも彼のようなヴェルヴェットの手があったら」「私がヘンゼルトのように弾こうと思ったら、少なくとも2年は学ばなければならない」と語ったそうです。

そのヘンゼルトの手は決して大きくなく、手を広げる訓練を黙々と続け弾力性のある広がる手、つまりヴェルヴェットの手を勝ち得たそうです。

リストの師であるツェルニーは電光石火のような速さで弾きたがるフランツ少年に、指を鍛えさせ、様々なタッチを付けさせ、少し緩めのテンポで弾く練習をさせ、自己流で弾くフランツの演奏を矯正するために根気強く基礎を教えたそうです。

この体験が教育者としてのリストを誕生させ、指を様々な動きで鍛えさせるリストの練習システムはモスクワ音楽院に受け継がれているそうです。

手を広げる訓練。
やはり存在するようで。
自分用に買ったこちら自分のためにの楽譜。手を広げるページを毎日20分位していますが、本当に広がってきます。
絶対無理!と思って憬れだけで済まそうと思っていた曲の譜読みを始めました。

原田さんの本は読み始めたばかりですが、ロシアンメソッドの講座で必ず登場するレシェティツキやリスト、イリーナ先生によるとその歴史はベートーヴェンに遡るという話、全部まとめて書かれていました。

次回、こちらでもまとめてみたいと思います。
ちゃんと繋がりがあるようです。


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基礎からって・・

2019年06月12日 | 重力奏法
今日、引き継いだ生徒さんの1回目のレッスンがありました。

昨年の4月からピアノを習い始めた高校生の生徒さんです。
持ってきた楽譜は「子供のバイエル上巻」

基礎から習いたいと言うのでバイエルをやりましたと前任の先生の引き継ぎ書にありました。

上巻が全て終わり下巻に進むところで私に変わりました。

基礎=バイエル

ん~・・・
まずは演奏を聴いてみないことにはどの位基礎が身に付いたのかわかりません。

バイエルの中で弾ける曲や好きな曲はありますか?
と聞きましたらバイエルの中で好きな曲はないと・・

そこでト音記号とヘ音記号の曲を選んでこれ弾いてみて下さいと言いました。

弾き始めがわからないようでしたので少し私が弾きました。

そのあと生徒さんが弾き始めましたが、ヘ音記号が読めていない、音の高さが一致していないので2小節だけ聴いてやめました。

「不思議な音の国上巻」と同じ程度の音域、リズムの「Famous & Fun Favorites Book1」にあるOld Manの出だしを弾いてもらいました。

2分音符、全音符しかないのですが長さはわかっていませんでした。

せっかく1年間頑張ってきてこれでは気の毒です。
そして音質は例のなんの響きもないあの音です。手首は固まったままでした。

そこで「Little Gems for piano」からBlinking StarsとMoon Dustを覚えてもらいました。手の使い方もやりたかったので。

こういう曲は好きですか?

ーバイエルの曲は好きではないけれどこういう曲は好きです。

バイエルの曲をきれいな音で弾こうとは思えませんけど、こういう曲ならきれいな音で弾きたいと思いますよね。

と自分で言いながら思い出しました。

小学生の頃、美しいと思う曲でいつもと違う音で弾いてピアノって本当はこう弾くのかな?と遊んでいたことを。(レッスンではその違う音では弾きませんでした。そんなこと教わっていなかったので急にそんな弾き方をしてはいけない気がして・・)

ロシアンメソッドと言われているものでレッスンをするようになり1年間でできることが驚くほど広がりました。

導入法が異なるだけで音質も曲もこんなに違うのかと。

なのに未だに基礎はバイエルからは根強く存在するようです。

カヴァイエ先生の本を読んでほしいです。
「日本人の音楽教育#4「初心者のテキスト」
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絵が表すもの「夜」

2019年06月10日 | 楽譜の話題
ロシアのテキストにある「夜」を弾いている生徒さんがこの絵の話を覚えていました。

絵が表わすもの

彼女はさらにこう話しました。
「大きい山がある。今は月が見えてるけど月が山の方に動いて見えなくなる。もっと暗くなるから早く歩かないと。」

ホ~、ここまで想像するとは・・

音楽のための絵ではなく、絵のための音楽だなと思いました。
この情景に音楽が聞こえてくる。

これもいいなと思います。

因みにこの山はアララト山だと思います。
ノアの箱船が流れ着いたとされる。

アルメニアの歴史も色々と辛いものがあるので、「お父さんがいない」と最初に言った彼女の言葉は深い・・
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