案外できていないのが、鍵盤を下ろすこと。
だと、思います。
鍵盤をアタックしたり、鍵盤の上で指だけ懸命に動かしていて、実は鍵盤は下ろせていない、ということは多いと思います。
ピアノの鍵盤は重くないので、少しの力で動きます。
少しの力で鍵盤を下に下げることはできます。しかし、鍵盤を下ろそうと思って下ろすのと、触ったら下りたものでは聞こえる音が違います。
何年も腕の重さを使って音を鳴らすことができない大人の生徒さんがいました。
スライムを使ったりノンレガートのメソッドを渡したりしていましたが、実を結ぶことはありませんでした。
もうその事に触れないようにしようと決めても、弾いている曲が本格的なクラシックなので触れざるを得ずでした。
それがピアセツキー先生の動画を見直して、何の力も加えずに、まず鍵盤を力みなく下ろすことから始めているのを拝見し、これだと思いました。
深く弾く前に、まずはコンと鍵盤を打つことなくただ下ろす。
それをその生徒さんにしてみました。
そうしましたら、翌週、音が変化していました。
前々から、その生徒さんがファンであるピアニストさんの弾き方が、全く力むことなく腕の重さを使って鍵盤を下ろせているから良いお手本になると話していたのですが、少し前にそのピアニストさんの来日時のN響とのコンチェルトの放送があり、それをご覧になったその生徒さんが、本当にちゃんとそう弾いている、とてもよくわかったと。
今年のいちばんの収穫は、鍵盤を下ろすことを知ったことだと。
子どもの生徒さんにも、2つのことを私はこの年末に言うようになりました。
鍵盤をただ下ろして、と、3つの骨が見えるように。
これだけで音が変わります。
深い音は出ませんが、下ろすことが先だろうと気付きました。
決してコンと打たずにただ下ろす。その音で弾き続けられるように。
鍵盤の上で指だけ動かして鍵盤が下りていない音は質が違います。
ゆっくり弾くとほとんどの生徒さんは気付くので、その意識と耳を作り直すところから来年は始めようと思います。
いつまで経っても完成しない自分にあきれつつ、発見できる喜びもあり、生徒さんがいなければ知らぬままでいたこともたくさんあり、改めてみんなに感謝です。