おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

バッハインヴェンション こころの旅

2023年01月31日 | 書籍紹介

興味深い本に出合いました。

「バッハ インヴェンション こころの旅」杉浦日出夫 著 音楽之友社


テーマやモチーフの分析といった内容ではありません。

音型(フィグーラ)からバッハのメッセージを読み解くのです。


2016年出版ですので既にお読みになられた方もいらっしゃると思います。


人間の罪を表す減7度、死を表す音型、十字架の音型、天使の音型、神の声、etc.


このような暗号から受難の調といわれるf-mollのシンフォニア(9番)を弾くと、辛すぎて弾けなくなってきます。

シンフォニアの9番は、このような話を知らなくとも辛い曲ですが、知ってしまうとあまりにリアル。


こじつけかな、と時々思う所もありましたが、このような楽譜の読み方を知っていて損はありません。

なぜそう感じるのだろう、これをどう言葉で言い表したらよいのだろう、と思うようなところが、音型の解釈から正体が判明した感じがあります。


楽譜の読み解き方が変わる本です。


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いらない

2023年01月29日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症と言われた3歳の男の子のレッスンでのこと。



レッスンを始めて4カ月位経った頃(3歳10か月)、彼が発したある言葉にお母様が驚かれました。

それは、「いらない」という言葉でした。


あるカードを見せたところ、気に入らなかったらしく「いらない」と言って戻して寄こしました。

私は「あら、いらないの」と普通に受け流しましたが、お母様が興奮した様子で、


「初めてこの子、いらないと言った」とおっしゃいました。

いつも手で押しのけるだけで、こんな風に言ったことがない、と。


その時初めて、私は彼が名詞しか言っていなかったことに気付きました。
そして、母親が子供が発する言葉にこんなに敏感であることに、どれだけお子さんの成長を心配されているかと思いました。


自分の気持ち、意志を表した言葉。


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シューベルトの子守歌

2023年01月28日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症と言われた男の子のレッスン。



シューベルトの子守歌を1回目のレッスンで試した時のこと。


最初に反応したのはお母様の方でした。

途中から英語で歌われました。お母様は外国の方でした。
日本語は達者でしたので、私との会話は日本語でした。

中間部に入ると、急にお子さんの表情がパーッと明るくなり、目を輝かせました。


弾き終えると、お母様が「この曲、この子好きなんです」


体験レッスンで大声を出しかけ、「バイバイ」と強く言った生徒さんが、次のレッスンでこんなに明るい表情を見せてくれた時、私はそんなに心配するほどではない、と勝手に思いました。


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まだジュース残ってる

2023年01月27日 | 苦手なことがある子供たち

私が最も印象に残っていて、驚き、そして嬉しかったこと。




小学2年生になっていた自閉症の女の子。

彼女は歌がとても好きな生徒さんでした。
一度聞くとメロディーも歌詞もすぐに覚えてしまいます。

しかし、私の歌を直後からなぞるように歌い、聞いてから模唱することはできませんでした。


そこで、歌いながらグー、パーという動作をして、グーの時だけ歌うパーの時は聞くというように練習して行きました。

そうやって歌やリズムは聞くことが出来るようになりましたが、ピアノは出来ませんでした。

ピアノは真似ることは全くなく、ただガチャガチャ鳴らすだけで、私が弾くと必ず隣でガチャガチャやり始めていました。
そして、私には弾くなという素振りをし、一人で弾きたがりました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


彼女のレッスンではリトミック的なことも取り入れていました。
その日は山登りの設定で音楽に合わせ、坂道を上ったり下りたりしていました。

彼女はいつでも全力でしてくれていました。
ずっと歩いて走ってでは疲れるので、この曲が聞こえたら休みましょう、とシューベルトの子守歌をピアノで弾いた時のこと。
休憩なので、椅子に座って休むということにしました。

動いていない時に私がピアノを弾くと、いつも横からガチャガチャ弾く真似をしていました。この時もガチャガチャが始まるのだろうと思いながら弾いていました。

ところが、黙って聴いていました。


私の方がいつガチャガチャが来るか恐れ、中間部の前で1度目はやめてしまいました。

そしてまた山登りの音楽を弾きました。
彼女はまた椅子から立ち上がり、坂を上るように歩きます。


疲れてきたなと思い、シューベルトをまた弾き始めました。

椅子に座り黙って聴いていました。
彼女の様子を見つつ弾いておりましたら、結局最後まで弾いてしまいました。

最後まで弾き終えると、彼女が言いました。


「いい曲」


私がピアノを弾くのを黙って聴いてくれたのはこれが初めてです。


ある日、この曲をわざと途中で中止してみました。

そうしましたら、

「あーあ、いまジュースのんでたのに、おわっちゃった。ジュースまだのこってる」

と、言いました。

彼女からこんなに長い言葉を聞いたのは初めてでした。
そして曲が途中で終わったこともわかっている上に、何か想像しながら聞いていてくれたこと。


とても嬉しかったです。

後にシューベルトの子守歌が自閉症児に効果のある曲と知りました。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


小2の夏まではほとんど笑ったことのなかった彼女が、シューベルトを聞いた頃から時々笑うようになりました。

この曲のおかげなのか、彼女が変わってきた時期とちょうど重なったのかはわかりません。


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初めて会った時

2023年01月26日 | 苦手なことがある子供たち

話が遡りますが、自閉症の女の子と初めて会った時の印象。




私は自閉症がどのようなものか全く知りませんでした。

ぼんやりとしたイメージでは、自分の殻に閉じこもったり、人と口を利かない、と思っていました。

引き継ぎの生徒さんでしたので、引き継ぎのレッスン見学で会ったのが最初でした。


実際に会ってみると、自閉症というものが余計に分からなくなりました。
イメージと異なっていたからです。

声は大きい、興味のあるものに関心は示す、突然騒ぐこともない。
初めて会った私に「なにせんせい?」と親し気にきいてくる。


私の方が逆に、自分の態度、行動、言動でパニックを引き起こしてしまうことがないか、最初の2カ月くらいは不安を抱きながら接していました。


レッスンを続けていく内に、会話が成立しないことやこだわりがあることがわかり、これが自閉症というものかとわかってきました。

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譜読みの頭

2023年01月23日 | 楽譜の話題

昨年暮れに知った「みみをすます」という教本。

内容がとても素晴らしいです。

ピアノとソルフェージュの本「みみをすます」 あそびながら基礎ができる音楽性にあふれた教本 - 音楽之友社


音の読み方やリズムといったソルフェージュができる上に、ピアノの奏法を丁寧に覚えていける教本です。

不思議な音の国と併用するのにとても合っていると思います。


ソルフェージュと書きましたが、単に歌ったりパチパチ叩けばよいのではなく、譜読みをする頭の働かせ方を学ぶことが出来る内容です。


第3巻の講師に向けたコメントに、
『譜読みの段階でよく観察し、動きを要約するという頭の使い方を身につけさせましょう』とあります。



音がどうのような動きをしているか、どのようなリズムパターンがあるか。

レッスンで生徒たちにこれに気付かせるよう進めていますが、このような教本があると生徒たちもわかりやすいと思います。

しかもやさしい言葉で書かれています。




ピアノを弾く頭、というのはあると思います。
それは元々あるのではなく、作るのです。

演奏をするには色々と下地が必要です。
音符の読み方がわかったら、その先の譜読みのコツを知る。
そうするとそれがアナリーゼへと繋がって行き、より楽曲を深く知ることが出来、表現の楽しみが増します。そこに作曲家や時代背景が加わると、さらに具体化します。

そうすると、どんな音で表現すべきか考えることが出来ます。
そして、どのように音を作り出すかを知りたくなります。自分で試行錯誤してその音を見つけることが大切ですが、基本的なことはあります。それをレッスンで教えてもらい、様々な曲で習得して行き、いずれ一人でそれができるようになってほしい。


音楽を楽しいと思えるのは様々な下地ができてこそ。

練習をおろそかにして、ただレッスンに行くだけでは身に付くものが少なく、出来ないことが増えていきます。それでは長く続けることは出来ません。


日本語では音を楽しむという字を当ててしまっているので、それが商業的にうまく利用されていると感じますが、何もせず楽しみたい人は音楽鑑賞という方法があります。

アウトプットするには、ちゃんと鍛錬や努力は要るのです。

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生徒さんの曲

2023年01月22日 | 不思議な音の国

不思議な音の国で初めて作曲した年長の生徒さん。

曲名を付けてきてくれました。


「すみれ」

ステキ


録画はしませんでしたが、一緒に連弾しました。
曲名が付く前に編曲しましたが、連弾バージョンは何となく花っぽい感じがすると、自惚れております。



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バイバイ

2023年01月21日 | 苦手なことがある子供たち

私が今も悔やんでいる生徒さんのこと。

それは生徒さんに対してというより、お母様に対して力になることが私でも少しは出来たのではないか、と。

これは、2005年の話です。




お子さんは3歳の男の子。

彼の体験レッスンの様子です。



「歌わない」「動かない」「叩かない(リズムを)」

よくあること。初めての場所、初めての人。
このようなことは誰にでもあります。

仕方がない。


しかし、ひとつだけこれまでの経験と違うことがありました。

何もしないのに、母親にしがみつかない。


嫌とも言わない、全く声を発しない。
ずっとピアノを見ている。全く視線が合わない。

次第に何度か視線が合うようになりますが、ゆっくりと静かにそらします。



15分くらい経ち、お母様がおっしゃいました。

自閉症と言われたと。


少し他の子供と違う態度を取ってはいましたが、それが初めての場だからなのか、自閉症だからかは私にはわかりませんでした。


それから5分くらい経ち、グズリ始めました。

お母様は懸命に本人に歌わせようとさせました。


その内、強くはっきりとした声で「バイバイ」と言いました。
初めて聞いた言葉が別れの言葉でした。


この言い方、そして自分が決めたことに大人を従わさせようとするような強い態度。これは自閉症特有のものと思われました。


一旦こうなると、続けることは出来ません。

しかし、お母様は続けさせようとしたので、今度は大声を出しかけました。


限界。


「こうなったら、〇〇くんは絶対にやりませんよ」と言って、レッスン室のドアを開けました。

ドアを開けたのは、その生徒さんにもう続けないから大丈夫とわかってもらうためです。


お母様には今すぐにレッスンを始めなくとも、もう少し待ってからでも良いのでは、と話しました。

3歳といえばピアノレッスンを始めること自体、容易ではありません。


しかしお母様は、他の英語教室で邪魔になるからと辞めさせられた、と。
お話を伺うと、この子の心を開くものがどうしても欲しいと。

グループの体験レッスンも受けていらしたので、グループでまずは始めて、様子を見て個人を始めても良いのでは、とお話ししました。
しかし、納得いかない様子。


結局、いつもレッスンに来るだけで何もできずに終わってしまうかもしれないこと、いつまで経っても同じことを繰り返していて進歩しないと感じるかもしれない。それでも宜しければ、ということで月の途中にも拘らず入会されました。


母親の必死な心情を感じたのは初めてのことでした。

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発達障がいについて② 自閉スペクトラム症

2023年01月20日 | 苦手なことがある子供たち

アメリカ精神医学会(DSM)第5版では、自閉スペクトラム / 自閉症スペクトラム障害と記載されています。

世界保健機構(WHO)の分類(ICD)では、今も自閉症と記載され、DSM第Ⅳ版にあった広汎性発達障害、アスペルガー症候群も記載されています。

目にすることのある、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群の3つについて書きたいと思います。


  


広汎性発達障害

自閉症を中核とするカテゴリーのこと。この中に自閉症やアスペルガー症候群が入っています。

対人関係の困難、強いこだわり、パターン化した行動がみられる障害の総称です。


自閉症

知的障害(精神遅滞とも言います)が伴うもの、伴わないものがあります。

自閉症の75%に知的障害があり、女子の方が知的発達では男子より重症。

IQ70が知的障害有無の境界ライン。知的障害の85%はこの軽度精神遅滞に属します。日常生活に差し支えない程度に身辺のことは出来ますが、普通学級で小学校過程の学習は困難。


<症状>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
① 他人が存在しないかのように見える行動
② 話し言葉発達の遅れ
③ 一本調子の平板な口調
④ 幼児期に指差しをしない
⑤ こだわり、固執
⑥ 相手の気持ちを思うことや共感ができない
⑦ その場の状況に合わせ適切に行動を選択することが困難
⑧ 想像力の欠如
⑨ 平衡感覚、視覚、聴覚に刺激を与え楽しむ
⑩ 迷子になりやすい
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
全員が同じ症状を持っているというわけではありません。

<解説>
①本当はわかっていて、見ない、聞かない、意識しないようにしてガードを張っています。

②③話し言葉が使えない子供が2~3割います。使える子供でも、テレビのフレーズ、大人の会話を真似ている場合があります。
(私の生徒さんで、母親の真似と思われる「あーぁ、ほんとにもうやんなっちゃう」と意味もなく言っていたことがあります。また、一方的に話しますが会話にはなりませんでした。何か言葉を返す時でもオウム返しになり、会話は成立しませんでした。わからない時には特にそうでした。)

④感動した時にそのものを指さすとか、見て欲しい、とって欲しいものを指さすなどのコミュニケーションです。

⑤ナンバープレートを読んでしまったり、時刻表の数字の羅列に惹きつけられたり、反復練習が好き、整理整頓好きと言ったことも含まれます。

⑥相手の嫌がることがわからない、喜怒哀楽がわからないなど。

⑦聞かれてもいないのに住所や電話番号を言うなど。
(私の生徒さんで、レッスンを終えた彼女の前の生徒さんにいきなり、「どこ行くの」「何年生」と言って戸惑わせていたことがあります)

⑧ごっこ遊びが難しいと言われています。ミニカーをただ並べるだけだったり、砂を瓶に詰めるだけだったり、そのようなことを楽しみます。

⑨グルグル回る、手をヒラヒラさせる、耳をふさぎ声を出すといったことです。

⑩半径50㎝の世界にいて外への興味を示しにくい。3~5歳になると、親を気にしながら歩き迷子になりにくくなってきます。その後は、知らない人に話しかけたり寄って行くということが起きてきます。


῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀

自閉症の大半は多動を示すと言われています。
スイッチを見れば押す、隙間があれば物を入れるという衝動性が見られたり、自分の興味、関心で頭がいっぱいになると他のことに全く注意が払えない、など。

自閉症の発症率は昔と今では随分変化しています。
20年近く前には1万人に2~5人でしたが、15年位前には1万人に21~121人と調査機関により大きな差が出ているものの確実に増えています。
現在は自閉スペクトラム症は100人に1人いると言われています。



アスペルガー症候群

知的障害のない自閉症です。言葉の遅れもありません。

高機能自閉症という言葉がありますが、教育の領域で使われる言葉で診断名ではありません。知的障害はありませんが、言葉の発達に遅れが見られます。

<症状>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
① 共感性の欠如
② 自分の気持ちを表現する、他人にわかってもらおうと努力することが苦手
③ 比喩表現、慣用句、ことわざの理解がしにくい
④ 被害妄想にとらわれることが多い
⑤ 友達とルールのある遊びが苦手だが分ると厳格に守る
⑥ 自分のことを棚に上げ他人の不始末を指摘する
⑦ 自分の関心のおもむくままにひたすら話し続ける

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

<解説>
①思いやり、相手の立場に立つ、相手の心を読むことが苦手。相手が自分と違うことを考えているかもしれないと言った推測が苦手。自分が嫌だと思うことを他人に言っても相手がどう感じるかわからない。

②できなくて、わからなくて、困っていますと言えない。その術を知らない。

③文字通り受け取ります。
馬鹿じゃない、顔かして、耳にタコができる、足が棒になる、油を売る、などそのまま受け取ります。

④大きな声を出されていると怒られている、いじめられていると感じる。

⑤⑥厳格に守るので、暗黙の了解がわかりません。
適当にさぼろう、などわからない。周りから浮いたり、ひんしゅくを買かったり、不登校になることがあります。

⑦興味のあるものしかしない。選り好みが激しい。


῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀

アスペルガーの症状は、症状を読んでいると誰にでも多かれ少なかれあるような気がします。

アスペルガー症候群の人は、周りと上手く行かない経験を多く持っているので、小学校高学年、中学生に診断名を伝えることは慎重に行う必要があります。自分を欠陥人間と受け取ってしまうことがあるので。

しかし、できるだけ早く適切な診断をし、対応を始めることが大切です。


気になる子がいたら、
・記録を付け、その子の実態を正確に把握(悪いところだけではなく優れた所も記す)
学校や専門の医療機関での治療教育や指導上の配慮を検討する際に、記録は重要な情報になります。
・一般の小児科や精神科ではなく、発達障がい専門の児童精神科、小児精神科に相談


接し方として、否定的な言い方は避ける。状況判断ができないので、~しましょう、~しようね、といった言い方で伝える。

叱る時には名前で呼ばない。大人になって名前を呼ばれると恐怖を感じる。

῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀

アスペルガー症候群はよく、他人の気持ちがわからないと言われていますが、必ずしもそうではないように思えます。

敏感に感じていることもちゃんとあって、ただそれが自分の中でどう表現したら良いかわからないでいるような気がします。多くのことを感じすぎてわからなくなっている、とも言えるのではないかと思います。

高機能自閉症の方が書いた本も読んだことがありますが、やはりそのように感じました。

(実は、私の所にはアスペルガーかもしれないと思った男子の生徒さんがいました。不登校で小6の時に学校を転校した時に私の所に移動してきました。彼とのレッスンも色々ありましたが、心配していた中学校は2年生の途中までは学校に行けていました。しかし、ある時から行けなくなりました。彼との出会いも私には非常に思い出深く、いつか書くことが出来たらとは思っています。最終的には立派に巣立ってくれました)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献
『発達障がいの子供たち』 細川徹 編 者 / 中央法規 / 2003年
『発達障害ガイドブック』 東篠恵 著 / 考古堂 / 2004年
『高機能自閉症 アスペルガー症候群入門』 内山登記夫 水野薫 吉田友子 編者 / 中央法規 / 2002年
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発達障がいについて① 分類と種類

2023年01月19日 | 苦手なことがある子供たち

発達障がいについて、本を読むと書かれていることですが、こちらに少しまとめてみたいと思います。

発達障がいは、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・子供の時期~青年期(22歳以前)に現れる
・生涯続き症状の軽減はあるものの治るものではない
・脳の機能障害が原因と言われている
・発達障がいの特徴として、同じ子供に異なる障がいが重複して現れる
・対応を誤ると本来発症しなくともよい障がいを発症-2次障害
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□



発達障がいという言葉はアメリカで使われるようになり、世界中に広がりました。Developmental disorders と言います。

日本語では「〇〇障害」と以前は表記されていました。
日本語では、学習障がいLDをLearning disabilitiesの略にしています。
disabilitiesは障害です。しかし、アメリカ、ヨーロッパでは disorders 混乱を使っています。

最近では日本語表記に害の字を当てないのはこのような理由もあると思います。
障碍とも書かれますが、常用外の文字なのでひらがながよく使われます。碍は妨げるという意味です。

῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀


発達障がいには世界共通で使われている分類法があります。

アメリカ精神医学会(DSM)と世界保健機関(WHO)の2種です。

アメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアルは精神疾患のみに使われているのに対し、WHOは身体の病気も含めた疾患全般の分類(ICD)を記載しています。


発達障がいに関しては、個人的にはDSMの方がわかりやすい印象です。
日本でもこちらを使うのが一般的だそうです。(但し、厚生省のウェブサイトにはWHO の内容が掲載されており、日本はWHOに加盟していることから公式な診断や報告はICD を使う義務があるそうです)

DSMは、1992年に発表された第Ⅳ版が長く使われてきましたが、2013年に第5版が作られました。第Ⅳ版まではローマ数字で表記されていますが、第5版はアラビア数字です。


第5版では自閉症について変更が成されました。

第Ⅳ版では広汎性発達障害の中に、自閉性障害・レット障害・小児期崩壊性障害・アスペルガー症候群・特定不能の広汎性発達障害がまとめられていました。

それが、第5版ではこのカテゴリーがなくなり自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害(ASD)となりました。


῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀


発達障がいはDSMでは、神経発達症群 / 神経発達障害群という大きな分類の中にあります。

そこに7つの診断名があります。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・知的能力障害群(知的障害)
・コミュニケーション障害群
・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)
・多動症/注意欠如(ADHD)
・限局性学習症/限局性学習障害(LD)
・運動症群/運動障害群(発達性協調運動障害、チックなど)
・他の神経発達症群/他の神経発達障害群
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

発達障がいは単独では起きません。
上記の7つのものがいくつか重複して現れます。

LDに関しては、読字・書字・算数障がいと種類があります。
自閉症がスペクトラムとなったのは、線引きが困難であるからではないかと個人的には思っております。
ADHDは第Ⅳ版には更に細かく分類されています。

῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀

これらは誰でも見ることは出来ますが、診断は必ず専門医に診て頂かなくてはなりません。


私たちはこれではないかと思うことはあっても、軽率に保護者の方に口にしてはいけないと思っております。
ピアノのレッスンでは、LD、ADHD、ASD、運動障害の可能性のある生徒さんに出会うことがあります。


その可能性があることを念頭に置いたレッスンは何も言わなくとも行うことは出来ます。
障がいのある人に有効なことは、ない人にも有効であると言われていますが、全くその通りです。
むやみに混乱したレッスンにならないように、基礎知識としてピアノ講師も発達障がいのことを知っておくべきだと思っています。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献
『発達障がいの子供たち』編者 細川徹 / 中央法規 / 2003年

参考サイト
DSM-5とは?診断の分類や目的・用途を解説
DSMⅣからDSM5への改訂で発達障害が神経発達障害と総称されます。
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/dsm-5_guideline.pdf
https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/dl/naiyou05.pdf
広汎性発達障害とは?自閉症スペクトラムとの違い、原因と症状、診断、受けられる支援を紹介します。 | LITALICO仕事ナビ
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どこ行くの

2023年01月17日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の生徒さんのレッスンをしていた頃の話です。
18年前です。


当時小学1年生の生徒さんを1月に引き継ぎました。
前年の夏からレッスンを始めたとのこと。


自閉症と言っても色々あります。
発達障がいは1つの症状だけが現れることはなく、自閉症とLD、LDとADHD、自閉症と知的障害など複数の症状を併せ持ちます。

以前は症状の強いものを診断名としていましたが、現在は症状のあるものは併記されます。


尚、アメリカ精神医学会(DSM)の第5版が2013年に作られ、1992年から使われていた第Ⅳ版(ここまではローマ数字表記)にあった自閉症・アスペルガー症候群・特定不能の発達障害は、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)に変更となりました。

現在では自閉スペクトラム症と言うようになっているようです。

この辺りのことは別の機会にいたします。




「〇〇ちゃん、どこ行くの?」

これは彼女がレッスン開始から3カ月間、口にしていた言葉です。
〇〇ちゃんとは自分の名前です。

レッスンが終わる時になると必ずそう言っていました。


いつも私は、
「〇〇ちゃんはお家に帰るのよ」とか、
「レッスンが終わったから、〇〇ちゃんはお家に帰るのよ」とか
「お父さんとお母さんとお家に帰るのよ」と答えていました。


私が答えても、それに答えを返すことも頷くこともなく、本人はただそれを訊くだけでした。



ある日、また同じことが始まったので今度は私が「〇〇ちゃん、どこ行くの?」と訊いてみました。


すると、彼女はニヤッとしました。


「〇〇ちゃん、ホントはどこ行くか知ってんでしょ?」


すると彼女は、またニヤッと笑いました。



それ以来、彼女はこの言葉を言わなくなりました。



彼女はいつも無表情で、何をやっても楽しんでくれているのか、そうではないのかが全く分かりませんでした。

彼女から表情を見たのはこれが初めてでした。


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アルド・チッコリーニ わが人生

2023年01月13日 | 書籍紹介

「アルド・チッコリーニ わが人生 ピアノ演奏の秘密」

全音から2008年に出版された本です。
翻訳はお弟子さんの海老彰子さん。


チッコリーニは小さい時から歌に魅了されていたそうです。

歌手の叔父が言っていた、「自分の音をまるで見えるもののように、聴いていなくちゃいけないよ」は後にシュワルツコップからもさんざん聞いたとか。

はじめてのピアノの先生からはいつもこう言われていたそうです。
「綺麗な音を出して頂戴!私に美しい音を下さい!とても表現力に富んだ麗しい音の調べがほしいの」


初級の生徒を育てる時に、教育者がまず気付かせなければならない第一のことは、音に対する感覚と述べています。

最初の練習の時から先生の第一の関心事は、生徒に音の美意識の感覚を養わせることにあるべきと。



読んでいて驚いたことがあります。

初めて弾く曲も、既に前から知っている曲も2年前から勉強を始めると。
旧知の曲でも以前とは感じ方が違うので、ゼロから勉強を始めるのだそうです。その間に年を取ったのだから、演奏は自分の年齢と共にしなければならないと。



私は運よくチッコリーニの最後の来日の演奏を聞くことが出来、あの演奏を思い出しながらこの本を読みました。

とても納得のいくお話。


歌に魅了されていたこと。
だからあのような演奏ができたのかと思いました。本当に歌を聴いているような様々な音のニュアンス、フレージング。

思い返すと、歌だけではなく台詞のようなところもありました。

本を読んでそうだったのかと。これをピアノという楽器で再現しようと演奏されていたのかと今頃知りました。


必ず暗譜で演奏する話も書かれています。

最後の来日コンサートも、もちろんそうでした。
お歳だし楽譜を見られると思っていたので、全曲暗譜で演奏されていたことに少し驚きながら聴いておりました。

準備に2年かけること、旧知の曲もゼロから勉強すること。


お年を召してから、弾き慣れた感じで演奏されない姿をyoutubeで見かけ、昔は全く好きではなかったチッコリーニが気になるようになり、来日コンサートへ出かけました。

本を読んで、あのお姿がくっきりと思い出されました。



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ノート

2023年01月11日 | 苦手なことがある子供たち

私は自閉症の生徒さんのレッスンをしていた頃、レッスンであったことをノートに書き残しておりました。


また、私が稼働をしている楽器店では講師のグループがあり、自主研修というものが行われておりました。

そこで発達障がいの話を何度かさせて頂いたことがあります。
そのための資料作りもしましたので、手元に色々と残っております。


3人の講師で3カ月にわたり、発達障がいと生徒さんのレッスンについて話をさせて頂いたのが一番最初でした。

1時間半の予定で話をしても、あっという間に時間が過ぎ、終了時間を過ぎているにも関わらず、先生方が話を聞いて下さっておりました。



今ほど、このことを知っている人は多くはありませんでした。
ご自分の生徒さんにいます、という先生も皆無と言って良いほどでした。

それでも話にお付き合い下さったことは、今でも感謝しています。
そして、先生方は皆、生徒さんのことを大切に思っていらっしゃるということです。


今は関係のない話でも、将来思い出して頂ける時が来るかもしれません。
未来の先生が読んで下さることがあるかもしれません。


私が経験したことを少しずつ、このブログに書いて行こうと思います。



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回転

2023年01月07日 | レッスン

年明け初回となるEテレの「クラシックTV」でフィギュアスケートの羽生さんがゲストで出演されていました。

音楽の表現に合わせて滑っているとの清塚さんの言葉。
音楽に、ではなく演奏者の表現にと。

オリンピックの時に、バラード1番のプログラムで最後の回転は回転数が足りなくてダウングレードになったけれど、音楽の演奏に合わせたらこれになった、と羽生さん。


凄いスケーターです。
そういうところで滑っている。技術的な点数を取らず、表現を第一に。


番組では、清塚さんがピアノも回転を利用して弾くと話されていました。

正に。


以前、ご紹介したこちらの動画が回転のことをよく伝えて下さっていると思います。


考えなくとも想う音が出せてしまう人には関係のない話ですが、私にはどちらの方向から音を出すかは結構役に立ちます。

むやみに実験せずに済むので、体力的に助かります。






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生徒さんの曲

2023年01月06日 | 不思議な音の国

久し振りに、生徒さんが作った曲のご紹介です。

昨年夏からピアノを始めた年長の生徒さん。
ご自宅にはまだ楽器がありません。

あまり速く進めないようにしてはおりますが、それでも1曲に2回程度のレッスンで進めています。

曲数は少なく、1回に教本の方は2曲にしています。


このペースで、不思議な音の国上巻の進みに合わせて音の読み方を覚えていると、時間がかかってしまうので、音の順番や読み方はどんどん進めてしまうつもりでいます。

弾き方は練習環境が整わないと十分には出来ませんので、これまでの経験で、楽器がなかった生徒さんにありがちな癖がつかないように気を付けています。


今までの生徒さんたちを見ていると、ピアノを使って曲を作らない方が面白いものができるようです。

この曲は、不思議な音の国上巻で初めて作曲をするページのものです。

使える音は真ん中の「ド」、一つ上の「レ」、一つ下の「シ」。
リズムは4分、2分、全音符のみです。


曲名はまだ付いておりません。
何と付けてくるか楽しみです。




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