おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

インヴェンション No.1 ファクシミリ版比較①(Edition vol.5)

2019年12月30日 | エディション研究
1720年初稿と1723年清書譜のファクシミリ版を比較してみます。

1720年


読みづらいので書き直しました。

(数か所タイを書き忘れているところがあります

1723年




楽譜を載せただけで量が多くなってしまったので、中身については次回に致します。
ー・-・-・-・-・-・-
とても途中ですが、今年の投稿はこれで終了にしたいと思います。
今年も当ブログを訪れて下さりありがとうございました。

今年一番驚いたことは、ブログをお読みくださっているピアノの先生方にお会いすることができたことです。
自分が書いたものを度々読んで下さっている先生方がいらっしゃるとは想像しておりませんでした。そしてお会いする機会が訪れるとは夢にも思いませんでした。

どの先生方も温かくて熱心で、好奇心があって、生徒さんのレッスンへの労力をいとわない本物の先生方でした。
私も勇気づけられました。

ブログを書き始めた頃は自分しか読んでいないようなブログでした。
いつの間に多くの先生方の目に留まるようになったのかと不思議です。

来年も終わりのない旅を続けていけたらと思います。
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インヴェンション 清書譜(Edition vol.4)

2019年12月28日 | エディション研究
1720年のヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための音楽帳(クラヴィーア小曲集)のPraeambulumとFantasiaをInventio&Sinfoniaとして清書したのが1723年の清書譜といわれるものです。

清書譜の序文には次のように書かれています。

「クラヴィーア愛好家、とりわけ学習希望者が2声部をきれいに演奏するだけでなく、さらに上達したならば3声部を正しく上手に処理し、それと同時に優れた楽想(Invention)を身に付け、しかもそれを巧みに展開すること。そしてとりわけカンタービレの奏法を習得し、それと共に作曲の予備知識を得るための明瞭な方法を示す正しい手引き」

インヴェンション&シンフォニアのあの3つの目的が書かれています。
「テクニックを身に付けてほしい、カンタービレ奏法を習得してほしい、作曲を学んでほしい」

この清書譜で曲順が現在のものになりました。
弟子たちに写譜をさせて勉強させたそうです。

バッハ自身もヴィヴァルディの作品を写譜や編曲をして勉強しました。

初稿の曲順(番号は現在のもの)
1/C-dur,4/d-moll,7/e-moll,8/F-dur,10/G-dur,13/a-moll,15/h-mol,14/B-dur,12/A-dur,11/g-moll,9/f-moll,6/E-dur,5/Es-dur,3/D-dur,2/c-moll
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インヴェンション作品の成立(Edition vol.3)

2019年12月27日 | エディション研究
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、J.S.Bachのインヴェンションには1720年の初稿と1723年の清書譜というものがあります。

初稿というのは長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための音楽帳(クラヴィーア小曲集)のことです。

W.F.Bachが9歳2ケ月の時に長男の教育のために書き始めたのがこの曲集です。
この時点で長男は既にクラヴィーア奏法の基本はマスター済み。
作曲を学ぶためのものだったようです。

そのため曲順が、プレリュード・舞曲→2声→組曲→3声と徐々に複雑になっています。フーガが視野に入ってきた時点で曲集は終わっています。

全部で62曲あります。
平均律第1巻のプレリュード、インヴェンション、シンフォニアの初稿が収められています。

この曲集の「Praeambulum」が現在のインヴェンションです。
Praeambulumはプレリュードのラテン語です。

この初稿、現在のものと少し違う所があります。


こちらの演奏はこのCDです。

それぞれの曲が、チェンバロ、クラヴィコード、オルガンのどの楽器のために作られたかを考察して演奏されています。(このCDには63曲あります)
Klavierbuchlein Fur Wilhelm Fr CD amazon

バッハがこの曲集を作り始めた日付がはっきりしていて不思議に思われたかもしれませんが、これは曲集のはじめに明記しているからなのです。長男への愛情の深さを感じます。

フリーデマンはバッハの子供たちの中で一番才能に恵まれていたと言われています。
ただ、人間性の問題やらで人脈が築けなかったようで、父親亡き後、職に就かず放蕩生活を送り貧困のうちに生涯を終えたそうです。


タイトルページ:Clavier-Büchlein vor Wilhelm Friedemann Bach angefangen in Cöthen den 22 Januar Ao,1720
1720年1月22日から書き始めたとあります。
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楽譜の種類(Edition vol.2)

2019年12月26日 | エディション研究
エディション研究スタート!

まずは楽譜の種類について。

どの版を選ぶかという前に、その版が何をもとに作られているかを知ると信頼度が変わってきます。
出どころがわからないこともあります。おおもとに遡っても、それ自体が判別不可能な場合もあります。

何を言っているんだろうと思われるかもしれませんが、GO,GO!
   
楽譜は全部で7種類あります。

①自筆譜Autograph
作曲者自身が直接書き下ろした楽譜
(音や装飾音等、不明な点があった場合直接自筆譜を見る)

②筆写譜Manuskript
おかかえの写譜家、信頼のできる者(ex.弟子)、その当時の誰かが書き写したもの
(自筆譜が存在しない場合参考にする)

③初版譜Erstdruck
それまで自筆または写譜の形で伝えられた作品の最初の出版
(一般に初版はミスが多いが資料として重要)

④ファクシミリ版Faksimile
①または②を写真で復元
(自筆譜が直接手に入らない場合利用)

⑤原典版Uetext
①②③を基に可能な限り忠実に作曲者の意図を再現したもの
(作曲者の意図するものを理解するときに利用)

⑥批判版kritische Ausgabe
原典版の一種で、新しい資料などにより古い原典版に批判を加えて校訂したもの 校訂報告を添える

⑦実用版Praktisch Edition
アーティキュレーション、ディナーミク、フレージング等、校訂者の主観が入ったもの
(自分が演奏する場合にすぐに利用できるが、ひとつの演奏解釈の例として参考にする)
   

この中で実際に私たちがよく使うのは原典版と実用版です。
自筆譜にお目にかかれるのは研究者や一部の演奏家くらいなものです。
ファクシミリ版でしたら私たちでも見ることができます。

初版譜は自筆譜もない、筆写譜もない時に頼りになりますが、ショパンのように3国同時出版で(フランス、ドイツ、イギリス)その段階で既に国によって異なることがある場合困ります。巻頭か巻末にある校訂報告でそれらは報告されています。

ファクシミリ版を見ると作曲者の熱が伝わってきます。
ベートーヴェンは面白いです。

書いたものをワーッとぐちゃぐちゃに消し、右手と左手を反対に書き直し、それもワーッと消し、結局余白に自分で5線を書いてもとに書いたものに戻る、というのを見たことがあります。
ペンの勢いも感じられ面白いものです。
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エディション研究(Edition vol.1)

2019年12月25日 | エディション研究
7~8年前から書きたいことがありました。

これをどうこのブログにアップさせると良いかわからずそのままになっておりました。

以前より写真投稿の画像がサイズを選べるようになり、大きなものも可能になったのでできるかもしれないと思うようになりました。

なので、ちょっと試してみようかと思います。

タイトル名にあるように「エディション研究」です。
版の比較です。

ここ数年バッハのインヴェンションさえ弾かせたい生徒がいなくなり、もういいかこのままでと、とんだフトドキ者になっておりました。

しかし、長くピアノを趣味として続けられている私より年上の生徒さんがバッハが好きではなかったらしく、あまり弾いてこなかったそうです。

結構難しい大曲も弾くのですが、対位法や3声、4声で書かれている部分が全く構造がわからないらしく、いつまで経ってもそこでつまづきます。

私に見えている楽譜とその方が見える楽譜は違うようなのです。

しかし、同じく長くピアノを弾いていらしてこれまた結構な大曲を弾かれる別の大人の方はバッハが大好きで、この手の構造は説明しなくても見えます。

バッハはとても多くの作曲家に影響を与えています。
バッハを弾かなくともその要素がある他の作曲家の曲はワンサカあります。

ロシアンメソッドでピアノを始めた子供たちが、想像以上に弾けるようになってきているので、将来望みの曲が弾けるようにやはりバッハはやるべきだ!と考え直しました。

それで、どの版を使おうかと思い、もう一度勉強するかと思い立ったのです。
使いたい版はあるのですが、再検討したいと思います。

多くの作品に手を出す気力は今の私にはないので、J.S.Bachのインヴェンションに絞ろうと思っています。

少々専門的な世界なので、なんだろう・・、だから?と思われるかもしれません。
気が向かれたらお読み下さると嬉しいです。
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マスレエフ リサイタルチケット完売!

2019年12月22日 | コンサート情報
昨日発売になったマスレエフのチケットが完売したそうです。

発売開始20分で7割売れ、4時間後には完売。

皆さんマスレエフの演奏を聴きたいと待っていらしたのだと嬉しくなりました。

チャイコン優勝後初来日した時は、弾いたことのないラフマニノフの2番のコンチェルトを1ヶ月で弾けるようにゲルギエフに言われ、それが日本デビューになったそうです。

どんな風に成長したかずっと来日を待っておりましたが、今回は聴きに行けないので、どうかまたすぐに来日されることを願っております。

あ~、きっとサイン会もあるんだろうな··
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グネーシンのガヴリーリン祭り?

2019年12月22日 | 楽譜の話題
以前ご紹介したガヴリーリンの連弾曲。

久し振りにグネーシンを見ましたら、子供たちがガヴリーリンの連弾曲を演奏している動画がたくさんアップされていました。

В. Гаврилин. «Зарисовки» – «Ямская»




エキゾチックで魅惑的な曲集です。
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マスレエフ 来日リサイタル情報

2019年12月21日 | コンサート情報
2020年4月に来日をするマスレエフが、コンチェルトだけではなくリサイタルもするそうです。

おーっ、やったー!

なになに?4月26日

何曜日かな?
GWの少し前だな・・

えっ・・日曜日

ガ~ン
行けません・・
レッスンを休めません・・

はー、今回はご縁がないようで。
面白そうなプログラムなので聴きたかったです。

ドミトリー・マスレーエフ ピアノ・リサイタル | 公演情報


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やろうとすることが大事

2019年12月19日 | レッスン
今日のレッスンで、今年の10月からレッスンを始めた年長の女の子が、来た時から大泣きしていました。

あら・・レッスンが嫌いなのかな?

ずっと泣いているのでお母様に「どうしたんですか?」ときくと、「うまくできなかったので泣いてるんです」

なんだ 、レッスンが嫌で泣いてるわけじゃなかったんだ。

「うまくできないって、よくあるよ」「少しずつできるようになるから大丈夫」

しかし、泣きやむ気配なし。

お母様が「帰る?」
「んん!」(イヤ、帰らないの意)

不思議な音の国の「ポップコーン」「うたいましょう」を私が弾き、そのあと手を持って一緒に弾きました。
大泣きは止まりませんでしたが、手は出してきたので・・

途中でお母様が「もう泣くのやめなさいっ!」
「しゃっくりが止まらないんだもん!」
「しゃっくりなんか出てないでしょ!」

「泣きすぎて止まらないんでしょ?ある、ある、そういうの」
と言って続けました。

途中から本人が泣くのを止めようと思って、鼻や口を手でつまんで抑えようとしていました。

「そんなことしたら苦しくなるから、いいからそのままにしといて」
と言って続けました。

音が途中からでもわかるようにクレ読みをしているので、「ふぁそらしワルツ」を下から上、上から下と弾いていきましたら、途中から泣き止んできました。

最後にLittle Gems for Pianoの「Moon Dust」をこういう曲好き?と聴いてもらいましたら、パ~ッと表情が明るくなり「うん」と言うので、聞き覚えで最初の1段を覚えました。

最後はいつものニッコニコな笑顔で帰っていきました。

今日はもう帰るとならなかったのは、お母様がそうさせないように育てていらっしゃるからです。
誰でも不安で怖いと思うことはあります。

でも、子供を自立させるためには心を鬼にしなければいけない時もあります。
やってみたら大丈夫だったということはいくらでもあります。

もしやってみてダメだったとしてもそれは失敗ではありません。
精一杯やることができれば花丸です。

強い心があればまた挑戦できます。
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サーシャちゃん(アレクサンドラ・ドヴガン)のコンチェルト

2019年12月19日 | コンサート情報
驚きました。

サーシャちゃん、ベートーヴェンの2番のコンチェルトを演奏した10日後にチャイコフスキーの2番を演奏。

チャイコフスキーは第3楽章だけですが、オクターブの連続もヘッチャラ。
小柄で腕も細いと思いますが、手は練習を重ねたガッシリとした手です。

オーケストラと共に音楽を作り出し、自分のことで必死というレベルではありません。
いつも前を向いているベートーヴェンを凛と表現しています。

フレージングといい、ディナーミクの幅といい、音色やタッチの多様性といい、驚きます。
彼女はがむしゃらに弾きまくらなくとも音楽が表現できる力を小さい頃から持っていて(今も大きいわけではありませんが)、コンサートの場で音楽を作り出している新鮮さが良いのです。

考えているけれど考えすぎていない、新鮮だけれど感性のままに弾いてはいない。
音楽が彼女の中から流れ出てくる感じはプレスクールの頃から今も変わりないと思います。

現在12歳。
既にここまで来てしまっている少女は、この先どこまで行ってしまうのか。

11/22/2019 A. Dovgan at the Gala concert of the 15th CRESCENDO Music Festival, Zaryadye Concert Hall


12/15/2019 Alexandra Dovgan in a concert, Grand Hall of the Conservatory, Moscow

緑のドレスが似合っています。
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到着 ! グネーシナのピアノのABC

2019年12月18日 | 楽譜の話題
注文していたグネーシナの「ピアノのABC」が届きました。

注文して18日くらいで届きました。
到着予定は年明けだったので随分早く届きました。

郵便物を持った時にとても軽かったので、3冊注文したけどまさか1冊?と、恐る恐る中を見るとちゃんとありました。

楽譜の大きさは少し小さめです。

ヘンレ版と重ねてみました。

中身はこんな感じ。

音符は大きくもなく小さくもなく。
こちらで購入しました。
AbeBooks The Piano ABC Gnesina

イリーナ先生のエチュード1Aの方が音符は大きいです。
本当はこちらの方が絵が描けて題名を書く所もあるし表紙もカラフルで良いのですが、送料がえらく高くなってしまったので何度も取り寄せることは無理です。

不思議な音の国でせっかく身に付いてきた細かい奏法をグネーシナで確かなものにしたいのです。
これが終れば日本で出版されているエチュードに進もうと考えています。

ロシアンメソッドの導入法は素晴らしく、この方法以外で始めることは今は全く考えておりませんが、それに合ったテキストがまだ不足しているので、不思議な音の国を使っている間と中級になる前のテキストを探すのに苦労します。

ロシアのテキストはグネーシナ以降もうまく集められたエチュードや曲が沢山あります。
1冊の中にエチュード、曲、連弾が入っているので古典的なものはそれで足ります。
それ以外のものを集める労力があれば良いだけだと思います。

しかし日本では指導者があっちからこっちからと楽譜を探して繋いでいかなければいけない状況です。

今は海外の楽譜でもamazonや楽天で買える物でしたら保護者の方に直接注文して頂けますが、こんな世の中になっていなかったらいくら良いものでも続けていけなかったなと思います。

注文した楽譜は前書きが英語でも書かれています。
Google翻訳で見てみます。

自力で読もうとしない··

カメラ機能で訳せてしまう··
いいのか、これで··
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井上直幸さんのDVD 1「作曲家の世界」

2019年12月16日 | 書籍紹介
井上直幸さんのDVD「作曲家の世界」がとても好きです。何度見ても心が洗われます。

見終えたときに心が、ほわ~と温かくなります。
以前は寝る前によく見ていました。一日の終わりに心をリセットしたかったのだと思います。

その「作曲家の世界」は現在は販売されていないかもしれません。
残念過ぎます・・
音楽への情熱を持った素晴らしい音楽家が、作曲家への信愛の情をもって演奏しながらたくさんのことをお話ししてくださっている貴重なビデオです。

井上直幸さんのお話は自分もまだまだ出来ていないんだと偽りではない真摯な気持ちが伝わってきて身近に感じてしまいます。

本当に素晴らしい人はこうなのです。
本当は精神的にも音楽的にもはるか遠くにいる人なのですが、自分と同じだと思わせてしまう。

井上先生の「ピアノのおけいこ」に大変な魅力を感じたのは、先生ご自身も学び続け、真摯に音楽に向き合っていることが伝わってきたからだと思います。
子供にもそれは伝わるのです。

さて、このDVD。
J.S.バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ドビュッシーについて、それぞれの様式と音、ご自分が演奏するときどう向き合っているかといったお話をたくさんの演奏を交えてお話してくださっています。

どのお話も貴重。そして演奏していらっしゃる井上先生を拝見できるのはこのDVDしかないのでその意味でも貴重。
どこかに演奏会の録画があるかもしれませんが一般にはそれを見ることはできません。

そんな井上直幸さんのDVDの中のお話を少しご紹介します。

どのお話も本当に魅力がありますが、代表してモーツァルトについて。

「モーツァルトの曲の中には美しいのがいっぱいいっぱいあって、それを発見しようと思って弾いてます。宝物みたいに詰まってると思う」

「特にモーツァルトは指先がものすごく良くないと。この人の美しい作品に応えようと思ったら、指先、感覚・・特別に美しい音で」

そっけなく正確な弾き方をして
「よそよそしい。こういう所にモーツァルトいないよね。モーツァルトここにいたら、あんま喜んでくれないと思う。耳がものすごくピアノの音を聴く」

「モーツァルトは粒、粒、粒。それが定着してるけど、粒が同じだとつまらないね。粒はいろいろあるんです。色々な大きさがあって自然ならいい。粒さえそろっていればいいというもんじゃないと言っておきたい」

「モーツァルトは難しいことしゃべってきますよね。言ってくることが変わってる。この人が言ってくることは特別魅力がある。幸せなそういう気持ちにさせてくれる作曲家だと思います」

全ての作曲家のお話をされた最後にこのように仰っています。
「音楽ってのは素晴らしくて、いい作曲家たちの世界に接するのは幸せなこと」



井上先生の語り口調と共にお話しされる内容が心に響きます。
きっと永遠に井上直幸さんは私の憧れの先生です。

J.S.バッハの話の所で演奏されている「マタイ受難曲」のソプラノのアリアが神がかりです。私はこのアリアが大好きなので、これを聴いて楽譜を買いました。


買ったもののタンスの肥やしならぬピアノの上の肥やしと化しています。
なんということ・・
まっ、お守りということで



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リラックスさせると言っても

2019年12月15日 | 重力奏法
習い始めから重力奏法で教えるようになって、一人一人抱える問題は違うものだなと思います。

この奏法自体は新しいものではなく、少なくとも50~60年前からヨーロッパでは当たり前の奏法。
残念ながら日本はそれ以前の奏法が伝わったきりになっていたようで・・

ただ、もっと以前、戦前はそうではなかったのではないかと思います。
白系ロシア人が日本に住んでいた時代があり、その音楽家たちが良い教育をしてくれていたようです。

この奏法をソ連では子供たちに教えるためにどうするか上手く考えた指導者たちがいて、プロを育成する音楽教育のカリキュラムもしっかり作り上げたわけです。
大人たちが皆で若い音楽家を育てるのもこの国の特徴だと思います。

ロシアの素晴らしさは幼児教育にあると多くの音楽家が言っています。

私はロシアンメソッドとは重力奏法を子供たちに教える導入期の指導法と今は捉えています。導入さえ間違わなければこれまで教えてきたこととさほど変わることはありません。

これまで上手くいかなかったのは、導入期から身体の使い方を教えることができなかったために一部の子供たちしか進歩しなかったと今は思っています。

それは身体の使い方を覚えられる教本がなかったからとも言えます。

ここまで徹底して身体の使い方、音の作り方を小さな子供たちに教えてきたことはありませんでした。

これが今までと最も異なることです。習い始めて間もない子供たちにこんなことは教えられないと思っていました。

一音弾くごとに必ず手をリラックスさせることや手首をどう使うか、指先の事、深く美しい音で弾くことなど小さな子供に教えることができるのがロシアンメソッドです。

特別な子供たちだけのものでも、特別な指導者だけのものでもなく、私のようなごく一般的な者でも取り入れることができます。

必要なのは根気と長い目を持つこと。
生徒と自分を信じること。
本物を目指すことを諦めないこと。

ところで、ひとつ気を付けたいのがリラックスさせることについて。

腕の力が上手く抜けると腕は重くなります。子供の腕でも結構重いです。
その重さを使うのですが、ただ、鍵盤にもたれかかって弾くのではありません。
第1関節の支えと共に肩で腕を持ち上げている必要があります。

身体全体を支えるのは腰と足です。

第1関節は手首を持ち上げた時に休むことができます。
肩は曲の中で休ませることが可能な時がありますが、基本的にいつも腕を持ち上げる仕事を続けます。黒鍵から習い始めると自然に腕を持ち上げるので良いと思います。

腰と足が休むことはないと思います。

これらはピアノを弾く上で普通のことです。
リラックスさせると言っても全ての力をだらんと抜いて、しまりのない音で弾くものではありません。

生徒さんで力を抜きすぎて、音がだらんとしてしまう子が何人かいます。
力を抜かせるのも苦労しますがその逆も直すのがたいへんです。

どんな質の音が美しいのか耳が手を誘導してくれるようになると良いのですが・・

耳から音を探せるようになってくれる日が来るのはきっと、ずっと先・・

私がピアノを教え始めた時から一貫して変わらないことは、「将来、一人でピアノが弾けるようになってほしい」

いつも教えてもらわないと弾けないではダメなのです。
自分で考え判断できること。
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井上直幸さんのDVD

2019年12月13日 | 書籍紹介
購入した頃、毎日のように見ていた井上直幸さんの「ピアノ奏法」というDVD。1と2があります。

先程、相当久しぶりに見ました。まずは2の「さまざまなテクニック タッチとペダリング」

こんなに素晴らしいお話をしてくださっていたのだと今頃知りました。
重力奏法を知ってから見たのは今回が初めてでした。

もう、色々なことをたくさん教えてくださっています。

「思う(イメージする)ことが先にあって、それを弾いて確かめて聴く」

「ピアノってやつは非常に人工的な楽器で、音がきれいに調律してもらったらあんまり難しくなくポッとやれば、弦楽器と違って簡単に弾けるから、感情を出す、ピアノと仲良くなる、ピアノに入るというか歌わせるのがけっこう難しいかもしれない」

と、最初に話されていました。

まさしく私が今、生徒に話していることをお話しされています。
忘れていた気がしますが、私の中にその話が残っていて同じような話を生徒にしているのかはわかりません。

そして驚いたことに、重力奏法と指の奏法のお話もされています。
しかも実際に曲を弾きながら教えてくださっています。

これを見ていた頃は、重力を使うことをよく理解できていなかったので、井上先生のお話が分かるところと分からないところがありました。

しかし、今はわかります。
成長しているぞ、私!

井上先生はオールシェーンベルクのプログラムでデビューされました。しかも全曲暗譜。

古典派の曲がお得意なイメージがありますが現代曲も得意!
ドビュッシーもお好きだったと思います。

私は井上先生のベルクのソナタの演奏が好きです。
フランクのヴァイオリンソナタの伴奏もすっばらしいです!

現代曲を弾かれるピアニストはタッチが豊かでなければ務まらないと思います。そのようなピアニストは大抵バッハも得意です。

そんな井上先生だからこそ、どこを使って弾くといった身体の使い方をお話しできたのだと思います。

結局はどの音で演奏するかは自分で決めなければいけないのですが、音を作る基本のテクニックを知らなければ不可能な話です。

基本のテクニックを習い始めからしっかりと身に付けていけるのがロシアンメソッドといわれる導入法なのだと思います。


井上直幸さんの先生ピヒトさんはレシェティツキの孫弟子だそうです。
出たっ、レシェティツキ!


C.Franck :Violin Sonata A major 2nd mov. Allegro 2/4
Alban Berg: Piano Sonata op.1 / Naoyuki Inoue
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ブーレーズ & エマール 、井上直幸さん

2019年12月12日 | コンサート情報
作曲家に直接演奏を聴いてもらっている場面です。
ブーレーズの3番のソナタのレクチャーです。

フランス語なので全くわかりませんが、エマールがピアノや椅子の準備を一人でしているところ、ブーレーズからアドヴァイスを受け生き生きとしている様子、床の上で楽譜を並べ直している様子など興味深いです。

音楽家は常に学ぼうとする人たちだとわかります。

Sonate n°3 de Pierre Boulez : Lecture avec le compositeur.


楽譜を見るとそもそも、どの順番で弾くのか私にはさっぱりわかりません・・

この楽譜を見ていて思い出しました。
こちら、シュタインブレンナーのパズル。

好きなように組み合わせて演奏します。面白い発想です。
作曲者については調べましたがわかりませんでした。

この曲はこちらに載っています。

私の年代では懐かしいと思われる先生も多いと思います。
井上直幸先生のレッスンで使われたテキストです。

いつも笑顔でレッスンをしていらしてこの先生にレッスンを受けたい!と思ったものです。
井上直幸さんの先生のピヒトさんを招いて井上先生と一緒に連弾をされた回もありました。
私はシューマンの連弾曲を井上先生の「ピアノのおけいこ」で知りました。

何十年も経って自分が持っていたカラヤン指揮の「マタイ受難曲」のCDの通奏低音をピヒトさんがされていることに気づきました。

井上直幸先生は63歳で亡くなられました。
ご自宅で録音された「象さんの子守歌」は、小さな子供たちのために録音された井上先生の最期の録音です。優しくて、温かくて、純粋な心の演奏です。
象さんの子守歌/CAMERATA TOKYO

こちらのDVDも音楽への愛があふれていてとても好きです。
ブック1と2がありますが、1はもう発売されていないかもしれません。

DVDブック ピアノ奏法(2) さまざまなテクニック 単行本 – 2005/10/30
井上 直幸 (著) amazon

久し振りに見直そうと思います。

◇◇◇◇◇◇◇

DVD1の内容を少し書かせて頂きました。
OGPイメージ

井上直幸さんのDVD 1「作曲家の世界」 - 音の国 / OTO-NO-KUNI

井上直幸さんのDVD「作曲家の世界」がとても好きです。何度見ても心が洗われます。見終えたときに心が、ほわ~と温かくなります。以前は寝る前によ...

井上直幸さんのDVD 1「作曲家の世界」 - 音の国 / OTO-NO-KUNI

 


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