おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

丸3年

2023年02月26日 | レッスン

コロナ禍になり、人前で演奏することがパタリと無くなりました。

そして、本日3年ぶりに発表会の講師演奏ではありますが、演奏いたしました。


ピアノ人生初のブランク。

人生が短い方ではないだけに、ピアノを弾いてきた期間が長いので、私にとってはこの3年は小さくはなかったです。1週間前から心臓ドキドキでした。

テンポがゆっくりで短い曲でしたので、手が動かないという心配はありませんでしたが、問題は暗譜。

余計なことは考えず、いつも通り考えつくことは全てやるしかない。


新しく譜読みし、人前で弾いたことがない曲でしたので、リハーサルとしてレッスンの時に一人の生徒さんに聴いてもらいました。

毎年弾いていても本番は何が起こるかわからないのに、しばらく人前で弾いていない状態での本番は、未知すぎて自分でも想像がつきませんでした。


*・。*・。*・。*・。*・。


このような状態の時に自分の支えになったのが、これまでどんな時も逃げずにやり抜いてきた自分でした。

こんな状態で人前で弾く人いないな、と思いながらも本番で弾いてきました。

過去の自分が自分を助けてくれるものだと思ったのと同時に、その過去に、支えてくれた人たちがいたことも思い、生徒さんたちの演奏を聞いていて、私も自分が受けてきた恩をこの人たちに送らなくちゃな、と思ったのでした。

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症状は変化する

2023年02月25日 | 苦手なことがある子供たち

現在小学4年生の男の子の生徒さん。

卒園する頃からレッスンに通っています。
少し前に不思議な音の国上下巻とも終わりました。


体験レッスンは年長の1月だったと思います。
その時に、ADHD と言われました、とお母様から伺いました。

レッスンは考えてお返事しますとおっしゃり、1か月後にいただきました。

ADHD にしては落ち着いている印象でした。もっとたいへんな生徒さんは普通にいます。
集中力がなく、しょっちゅう体を動かしていたり、レッスンに関係のない話を突然したり、いつまでも話し続けていたり、ページの先が気になってこれは何?これはどうやって弾くの?ときいてきたり。

彼は、そのようなことはほとんどありません。
時々、先の事が気になるようですが、「今はいい」とか「まず、こっちだ」と言って自分でコントロールしようとしています。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


ただ、小3の終わり頃から、自分で勝手にどんどんイライラしてくることが出てきました。

「できない」と言ってイライラ。

ゆっくりやればできるから、と私もゆっくりな声で静かに話すのですが、イライラはエスカレート。そうなると、口出しすると余計に駄目になるので黙って見ているしかありません。

それがレッスンの終わり頃に来ることがあり、本人は目に涙を浮かべ、怒ったまま終わることになります。


その姿を見ると、他のお母様でしたら一大事と大ごとになることもありますが、彼のお母様はその辺りのことは心得ていらしていて、あらまぁ、仕方ないわね、というお顔をされます。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


その生徒さんを見ていると、自分はできない、と必要以上に思っている節があります。
学校でどのような経験をしたかはわからないのですが、解ることが君にはできる、と知ってもらうことがピアノレッスンでの役割では、と思っています。

気持ちだけが焦って、思考が停止しイライラして怒り出しているだけなので、言葉でなだめても通じないわけで、実際に解ることを経験してもらうことが必要です。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


今回、ほぼ10年振りに発達障がいのことをこちらにまとめていて、自分で過去にまとめたADHDの所を読んでいて、 ADHDの25~50%に9歳前後に現れる症状があることを思い出しました。先日のレッスンで初めてチックが表れていたので、慎重に見守らなければと思います。

また、最近その生徒さんは、話が通じにくくなっていると感じます。男の子は一度にふたつの事を言ってもわからないお子さんが多いので、ひとつずつにしていますが、そのひとつを伝えるのに時間がかかるようになっています。

例えば、ある小節の音の動きを楽譜を指差して話していても他の所だと思って「わからない」とイラついてきたり、右手だけと言っても何をしたら良いかわからずにいて、両手で弾こうとして「できない」とイラついたり。



年齢によって症状に変化が見られ、いつも良い方に向かって行くわけではないことを忘れてはいけない、と改めて自分の中に刻みました。

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発達障害について③-2 ADHD児の行動への対応

2023年02月24日 | 苦手なことがある子供たち

ADHDの生徒さんにどう対応したらよいか、本にあることですがまとめてみます。

ピアノレッスンで参考にできることがあるかもしれません。



<立ち歩く>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
思い付いたらすぐ行動に移ったり(ADHD)、学習が理解できず集中力をなくしている(LD)        
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
用事を頼む。ハンドサインを決めてがまんを覚えさせる。



<些細なことで感情が高ぶる>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
感情をコントロールする力が弱い       
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
怒ったり、泣いたりしないことを目標にする。ゲームなどで勝ち負けにこだわり負けそうになると怒りだしたり、泣き出したりするときは「おしい!」「いいところまでいってる」と次回に期待を持たせる言葉を掛ける。ピンチに陥った時に「このスリルがたまらないね」とゲームのワクワク感を味わえるようにする。誰にでも負ける時はある。気にしない、気にしないなどと声を掛ける。深呼吸する、水を飲む、何かを握りしめる。



<思い通りにならないとダダをこねる>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
ADHDのある子は感情を抑えることが苦手。泣き叫んだ結果、思い通りになった経験が重ねると、意見を通す手段として学習してしまう     
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
あくまでも冷静に対応する。子供が興奮している時には頭ごなしに注意するのではなく、まずは落ち着かせる。その後「それはいけない」「〇〇しましょう」と静かに低い声で言いきかせる。場所を変えて話す。なぜいけないか、どうすれば良かったか穏やかに説明する。「〇〇したかったんだよね」と気持ちを受け止める。



<学校へ行きたがらない>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
うまくいかないことが多く恥ずかしい、みんなと同じように出来ずやる気がなくなっている      
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
自分が置かれている状況を説明することが苦手で、自分でもなぜかよく分からないことが多い。子供のストレスが強ければ、2~3日休ませる。背景に何があるのか、どのような対策が必要か先生と保護者が一緒に考える。


<登園をしぶる>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
母親と離れるのを嫌がる。何のために行くかわからない。感覚面で過敏さがあり色々な刺激に耐えられない        
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
母親と離れるのが怖いのは、あとで迎えに来るということがわからず不安だから。いつ迎えに来るかわかりやすく伝える。門に入ってしまえば平気な子、保護者がいなくなれば遊び始める子もいる。



<家でちっとも勉強しない>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
勉強に対する苦手意識が強い、一人ではできない、手順がわからない       
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
勉強する曜日、時間を決める。終わったら必ずほめる。カレンダーに記録する。テレビを消し家族全員が勉強モードになる。空腹時、満腹時を避ける。親は過剰な声かけ、指示は避ける。



<習い事をやめたい>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
なぜやめたいか確かめる。ほかにやりたいことがあるか、本当によく考えてのことか。説得するばかりではなく、子供の気持ちを受け止めその上で対策を練る。 
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
話し合いは子供が本当に自分がやりたいことを考えるきっかけになる。どう説明すれば自分の気持ちを分かってもらえるかを学ぶ機会になる。やめる時期をすぐにではなく、〇〇が出来るようになったらと区切りをつける。もったいない、結局はダメかは言うべきではない。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


自分の気持ちを言ってもどうせ否定される、という経験を子供に何度もさせてしまうと、言わなくなります。気力をなくすか勝手に事を進めてしまうかになると思います。

親や周りの大人は自分の意見を押し付けず、まずは本人の考えや気持ちを聞くことです。

ここに書いたことは、ADHDに見られるだけではなく他のお子さんにも通用するはずです。ピアノレッスンでもお目にかかることが少なくない話です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献
『発達障害のある子へのサポート実例集 小学校篇』上野一彦 月森久江 著 / ナツメ社 / 2010年
『こんなとき、どうする?発達障害のある子への支援 幼稚園・保育園』内山登紀夫 監修 / ミネルヴァ書房 / 2009年
『健康ライブラリー AD/HD,LDがある子供を育てる本』月森久江 監修 / 講談社 / 2008年

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発達障がいについて ③-1 ADHD

2023年02月23日 | 苦手なことがある子供たち

ADHD、ADDといった言葉を聞いたことがあると思います。

ADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害のことです。

以前は注意欠陥・多動性障害と呼ばれていましたが、アメリカ精神医学会のDSM-5の改訂で現在の診断名に変わりました。

ADDは多動のないものです。現在では不注意優勢型ADHDと言うそうです。
大人の場合は、整理が極端に苦手、物が捨てられない、エネルギッシュに物事を始めるものの途中でやめてしまう、といった症状が現れます。


ADHDの障害は次の3つです。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・不注意(注意を持続させることの困難)
・多動性(過剰な行動)
・衝動性(衝動をコントロールする・抑制の欠如)    
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

これらは同程度に混同するわけではありません。


基本障害は行動抑制の欠如ですが、症状や問題は変化して行きます。
幼児期・学齢期(6~15歳)にかけ、多動・衝動性が見られますが、学童中期には多動は収まってきます。
不注意は思春期以降も続く傾向があります。

男児に多く、女児に対し5:1~8:1の割合で見られます。
常に症状が出るわけではなく、教室や大勢の中、勉強時間、食事中、支度中に現れます。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


アメリカ精神医学会のDSM-5は、多動症/注意欠如(ADHD)になりましたが、その前のDSM-Ⅳには、注意欠陥および破壊的行動障害とありました。
破壊的行為障害とは、行為障害・反抗挑戦性障害・特定不能の破壊的行為障害を言います。

WHOのICDには、現在も行為障害、反抗挑戦性障害が書かれています。

(発達障がいの診断基準はDSM(アメリカ精神医学会)とWHO(世界保健機構)の2種類存在します)

反抗性挑戦障害は非社会的行為ではありません。

ADHDの25%~50%に反抗性挑戦障害は現れます。
これは、9歳前後に発症し思春期以降は発症しません。かんしゃく、口論、大人の要求を無視、わざと他人をイライラさせる、執念深い、といったものです。精神療法やカウンセリング、両親への行動療法が必要になります。

そして、これが進んでしまうと行為障害という2次障害が引き起こされます。
2次障害とは、発達障がいが原因で起こる失敗や挫折の繰り返しから、感情や行動にゆがみが生じ、周囲を困らせてしまう行動をとることです。


行為障害は、ADHDの10%にみられます。残虐行為、放火、盗み、家出、激しいかんしゃく、といった非社会的行為です。
行動を間違っていると認識していることが滅多になく、罪悪感が欠落しており治療は困難です。施設での治療が必要になります。


ここまで進んでしまう原因は、出来ないことや不快に感じることに配慮して対応しないためです。

反抗挑戦性障害の段階で、上手く行かないことが多いことから、「わざとふざけている」「やればできるのに」「何度言っても言うことを聞かない」と親が叱ってばかりいると危険です。

防ぐためには、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・雑談をする
・返事が返らなくとも腹を立てない
・気長に構える
・感情を表に出せるよう仕向ける     
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
返事が返らないのは、無視をしているわけではなく、自分の気持ちについて話すことに慣れていない、自分の好きなことについて考えていて気付かないことがあるからです。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


家庭での対応が大切です。他の発達障がいと違い、気持ちの持ちようとか、心がけ次第とか思われてしまう可能性があります。ADHDは前頭葉の機能不全です。(前頭葉は注意・思考・感情のコントロールをつかさどり、物事を整理・処理・実行する機能を担います)

家でもピアノレッスンでもガミガミ言われていたら、その子供は行き場がなくなります。

ピアノのレッスンは雑談が必要な子供の場にもなります。
ピアノレッスンを受ける目的が、必ずしもピアノが弾けるようになるだけではないのです。

話している内に、自分の中にあることが整理されて見えてきます。
親以外のよく会う大人で、しかも学校の先生と違い一対一です。
2年でも3年でも、その生徒さんが気が済むまで話に付き合えるのがピアノの先生でもあります。


30分レッスンの25分が雑談でピアノは5分でも、その生徒さんにそれが一番必要なことでしたらそれで良いのです。

後ろに生徒さんがいなければ、教室が閉まる時間まで話を聞くことだって出来ます。ピアノを全く弾かずにそうやって毎週1時間半過ごした生徒さんもいます。


雑談ができるのは、あまり小さい年齢では無理で、小学校高学年以上です。

毎週一人一人の生徒さんと会っていて、しかも幼児から大人まで接しているピアノ講師は、学校の先生や親とも違う存在です。

そうは言っても、頑なに人に頼れないタイプの子供もいます。親がそのようなタイプであり、迷惑をかけてはいけないと考えているのかもしれません。人を頼ることは悪いことではありません。人間は誰かの役に立てることを嬉しく思うものです。

その子供が話せるようであれば、話を聞く。
2人の間だけの話。親に筒抜けにしないで。

誰でも、最後に決断するのは自分です。
それができる日まで見守る縁が訪れることも私たちにはあるのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献
『発達障がいの子供たち』 細川徹 編 者 / 中央法規 / 2003年
『発達障害ガイドブック』 東篠恵 著 / 考古堂 / 2004年

参考サイト
ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?特徴やよくある困りごと、接し方など|LITALICOジュニア|発達障害・学習障害の子供向け発達支援・幼児教室|療育ご検討の方にも
ADDとは?症状や診断基準、ADHDとの違いを解説します


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優しさ

2023年02月17日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の女の子のレッスンを始めて6年経った時にあったこと。

これは私への最大の贈り物。



ご両親に連弾を聴いて頂いた時のこと。

喜んでくださったお二人の姿を見て、ご両親がレッスン室を出られたあと、「ありがとう」と私の腕をなでながら言いました。

その時、私は心の中がフワリと温かくなり、「私の方こそ、ありがとう」と、いつの間にか、人に感謝する気持ちを知った彼女に驚きながら喜び合いました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


私は彼女と出会ったことで、相手をそのまま受け入れることを学びました。
性格や考え方といったものではなく、本人にもどうにもならないことがあると知り、それは他の生徒さんとの付き合いにも活きていると感じます。

受け入れるということは気付くことでもあります。
彼女は私にそれを授けてくれ、それが私から他の人にも伝わっているように思います。


また、彼女には曖昧さは通じず、いつもまっすぐに向かっていくしかありませんでした。

嬉しい時は本当に喜びを表し、良くないことは本気で叱りました。
彼女は私に素の自分を出して共に歩むことを教えてくれました。


もし、自閉症の生徒さんに出会ったら、講師として自分は何もできない、どうしたら良いかわからないと避けずに、その生徒さんが出来ることを探して、成長を待って、まっすぐ向かってみてください。

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こんなに弾けるとは

2023年02月16日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の女の子と初めて連弾ができた時の感激は、今も忘れません。



シューベルトの子守歌の後、少しずつ笑うようになった彼女。

小3の後半から前の人のレッスンが終わるのを静かに待つようになりました。

そして、この頃から会話が成立するようになってきました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


初めて連弾ができたのもこの頃です。

私がピアノを弾くと必ず横でガチャガチャ弾く真似をしていたので、連弾は夢だろうと思っていました。


それが私が横で弾いても”弾かないで”というそぶりを見せなくなってきたので、もしかしたらと練習を進め、ある時、4小節の曲が、最後まで一緒に弾けました。

連弾が成功するとは思っていなかったので、この感動を独り占めにはできないと思い、レッスン室の外で待っていらしたお父様に「初めて連弾ができたんです。聴いて下さい。」と部屋に入って聴いていただきました。


「こんなに弾けると思わなかった」

と、喜んでいらっしゃいました。


別の日にお母様にも聴いていただきました。

連弾を聴き拍手をするお母様の姿を見て、部屋を出ていかれてから、その生徒さんが「喜んでた?」ときいてきました。

人の感情がわかるようになってきたのか、拍手をする時は喜んでいる時、と覚えたのか。
いずれにせよ、人の感情、気持ちというものの存在に気付いてきたと思いました。


連弾をするときに自分から「せいのーせ」と声をかけてきたり、冬さんさよならの歌で「冬はどこに行くの?」「春ってなに?」、ときいてくるなど、自分以外の存在、物事に関心が向いてきていました。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


小4の夏頃には、こちらから渡したものを両手で受け取れるようになり、冬には、静かに椅子に座り、自分の番になるとスクッと立ち上がりレッスン室に入るようになりました。

なかなか帰りたがらなかったものが、30分でレッスンは終わりなのだとわかるようになり、翌週のレッスンが休みの時に納得してもらうのに一苦労だったものが、休みの日もあるということがわかるようになりました。

これは少し笑える話で、なぜ休みかはレッスン回数が決まっているからなのですが、それを私が「一人で練習できるように」などとわかりにくい言い方で理由を言っていたもので、余計に納得できていませんでした。

それで、ある時に「先生も休みたいから」と言いましたら、それ以来、休みの週は「先生が休みたいから?」ときくようになりました。


小5になると、スタッフから手渡されたカード(会員証)を受け取る時に、奪い取るように受け取らなくなりました。鉛筆やペンの渡し方を覚えたのもこの頃です。

アスペルガーの人が書いた本に、このようにあります。
『物を受け取らせるには、ありがとうなどの返事や反応は一切期待せず、ただそのものをそこに置いて下さればいい』(モーツァルトとクジラより)

まずはここからスタートです。

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音楽療法

2023年02月11日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の生徒さんのレッスンを始めた頃、音楽療法で何かできるかもしれないと思いました。


音楽療法のことをよく知りませんでしたので、図書館に行ってみました。

数は多くはありませんでしたが、その中にCDのついた本が1冊ありました。
読むより聞いた方が速いと思い、その本を借りてきました。


CDを聴いて驚きました。
実際の現場を録音してありましたが、即興演奏でどんどん進めていて、その音楽が即興とは思えない完成度で美しかったのです。

1960年代のものでしたが、音楽が全く古くなく、ミュージカルのような音楽でした。


これは歌として何曲か生徒さんに歌ってもらいたい、と思いました。
挨拶に使っている曲がレッスンで使えると思い、譜面に起こし始めました。


そのようなことをしていた時に、同じ楽器店で同じ曜日に稼働している先生と帰りの電車が一緒で、そのCDの音楽が即興とは思えない素晴らしさ、という話をしました。

そうしましたら、「それ、ノードフロビンズ音楽療法じゃないですか?」と言われました。

そんな気もするけど、覚えてない··
ん?音楽療法に詳しいのかな?ときいてみますと、そのアシスタントをしていると。

なんという偶然。


曲の楽譜が出版されていて、確かヤマハでも買えると仰るので、早速買いに行きました。

何種類か出ていて、その中の挨拶の歌を集めたものを買いました。



音楽療法に関しては、私には無理だと思いました。
そのCDを聴くと、障がいのある子供の症状に合わせて音楽を作っているようで、自閉症で症状の強い子供には不協和音の連続で、しかもかなり強い音で何度も何度も叩くように弾いており、聞いていて気持ちが悪くなってしまいました。

こんなことは出来ないと思い、レッスンの始まりと終わりがわかるように挨拶の歌だけ使わせてもらうことにしました。

この始まりと終わりがわかるようにすることは、このような生徒さんのレッスンでは必要なことです。
彼女が小学校を卒業するまではこれを続けました。小6の途中から必要ないくらいになりましたが、学年の途中で辞めると良くない気がしたので、小学校卒業まで続けました。



ノードフ氏、ロビンズ氏のセッションの様子がyoutubeにありました。
いくつか拝見しましたが、CDで聴いたような音楽は聴けませんでした。しかし、このようにピアノのすぐそばで笑顔で行っていると知ることが出来ました。
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音を読むことは・・

2023年02月10日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の女の子に音の読み方を覚えてほしいと思い、「アルフレッドレッスンブックA」を使った話です。



この教本は5線を使用する前の段階が長く作られています。

丸の動きを見て弾いていきます。

そしていよいよ音を読む段階に入ると、ヘ音記号の「ファ」から始まります。

ヘ音記号の書き始めがファの音であるからですが、彼女に何度かそのことを説明するとわかってくれました。

内心そこまでは大丈夫だろうと思っていました。
しかし、そこから先は期待していませんでした。


ところが、ノートにファの一つ上の音を書き、「これ何?」ときくと、あっさり「ソ」と答えました。

そしてもう一度ファを書くと、それも「ファ」とあっさり答えました。

調子に乗り、もう一つ下の音を書いてみましたが、それはすぐには答えられませんでした。

毎回行っていたハンドサインでドレミの順番を「ソソソ、ファファファ、〇〇〇、レレレ」と歌って見せると「ミ」と答えました。

かなり誘導的でしたが、彼女が音を読んだ。信じられませんでした。


翌週、もう一度同じことをしてみました。
しかし、ファもソもミもわからなくなっていました。誘導しても適当な音を言うだけでした。

落胆しました。


その日はノートに同じ音に同じ色を塗る宿題を出して終わりました。

ただ、以前の彼女でしたら、興味がなければ適当に答えることさえしませんでしたので、これは進歩なのです。

2週間後、彼女は復活し3つの音を自らの力で読みました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


結論としては、音を読むことは不可能だろうと思っています。

「あいうえお」の五十音が組み合わさり言葉になるように、「ドレミ」の音が組み合わさり音楽になることが理解できなければ、何のために音を読むのか意味が解らないので、この抽象的な図形のようなものを読もうとは思いません。

また、2~3個の音が読めたとしても、いつも読めるわけではなく、音を読める日を待っていてはあまりに時間がかかりすぎます。

その間に身に付けられるであろう、聞き覚えや歌に時間を割いた方が余程良いと思います。


彼女にとって必要なことは、ピアノが一人で弾けることではなく、音楽経験を通して人とコミュニケーションを取ること、自分以外の人間の存在を認識すること。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


どこまでのことが出来るだろうと色々と試みる時間が、私には1年必要でした。

自閉症者はこだわりが強く、パターン化したものを見つけ出すのが得意です。しかし、不規則なものに対しての対応は困難に思います。

瞬間的に数がわかったり、形がわかったりという特徴があり、それをどうにか音を読むことに活かせないかと探ってきました。

何度も試してはやり直しを繰り返した結果、この結論に達しました。



自閉症児のレッスン経験がたくさんある先生は、すぐに方針を決められたのかもしれません。

ただ、同じ子供は一人としていないであろうこと、その時の気分で出来る出来ないにたいへん落差があること、年齢が上がると気持ちの成長に合わせて、以前出来なかったことでもそれを受け入れる気持ちになり出来るようになることがあります。

決めつけて進めることはするべきではないと思いますが、私の一つの結論として、音の読み方に関しては困難であろうと思います。


もしやるとしたら、初めから音楽本来の姿のまますることです。
五線の線や間に丸を書く練習などせずに。

様々なことが順を追ってしようと計画立てても、受け入れる気持ちになる時とそうではない時に落差があり、ひとつの線につながるのに時間がかかり過ぎるので、結局つながらないのです。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


実は、10年くらい前に大人の生徒さんで自閉症の方がいらっしゃいました。
お仕事を休職中で時間があるのでピアノのレッスンに通うと。ピアノは初めてではなく、ご経験がありました。
ご本人が楽譜を用意され、これを使いたいと持って来られました。その楽譜は音名が全てふられていました。私も音の読みがこの生徒さんに必要なことではないと思いましたので、それを使いました。鍵盤の位置を知ることと、5本の指を使うことが出来れば、知っている曲はリズムも取れるのでこのように音楽を楽しめるのだな、とその方を見て思いました。

レッスンスケジュールのカレンダーを渡した時に、レッスンが休みの日に❌を付けただけでお渡ししましたら(本当はレッスン有りの日には⭕も付けるのです)、「ここ、丸書いてもらえます?こういうの、ちょっと駄目なんで」と遠慮ぎみに言われました。
症状が軽いと思っていたので、生徒さんが多いと⭕を書く作業が負担で省略してしまったのですが、こういうのはやはり彼にはいけなかったのだと反省。

仕事に復帰できる体調になったので、ピアノレッスンと両方は出来ないと退会されました。
私は前後に生徒さんがいて知らなかったのですが、他の先生からこの生徒さんがお母様と一緒にいらしていて、教室の向かいに映画館があるのですが、そことの間にある椅子でいつも待っていらっしゃると聞きました。
私のレッスンの時には一度もお姿を現されたことがないのですが、色々と気遣ってそうされていらっしゃるとことが察せられました。そして、こうしてずっと静かに見守られていらっしゃるのだと知りました。


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みそしるレモンフランスパン

2023年02月09日 | 苦手なことがある子供たち

これは自閉症の女の子に、なんとか音の読み方を覚えてほしいと思い、試したことです。



「ふよみなんてへっちゃら(共同音楽出版社)」というテキストがあります。

最初にしたことは、高さの違う5つの「ド」を覚えてもらうこと。

これが覚えられなければ、たぶん何をしても無理だろうと思いました。
私が抵抗を感じるほど何度も繰り返し、5つの音のカードと鍵盤の位置は覚えられました。


そして次に行ったのは、このテキストにある簡単に音の読み方を覚えられる「みそしるレモンフランスパン」

ト音記号の第1線が「み」
一つとびで読むと「みそしれふぁ」になるので、それを「みそしるレモンフランスパン」と覚えてしまうものです。


最初にこの「みそしる」の話をした時に、彼女はたいへん興味を示し「もっと教えて」と言いました。なんだかワクワクしました。

こんな言葉、他の生徒さんからも聞いたことがありませんでした。
嬉しい言葉です。

しかしその日は、ちょうど時間がきてしまい、「みそしる・・」の読み方を詳しくすることは出来ませんでした。


翌週、その続きをしようとしましたら、彼女は興味を失っておりました。

こうなると興味を呼び覚ますのは至難の業です。
私はあきらめました。

たとえ興味を持ち続けていたとしても、この方法は彼女には向いていなかったのではないかと思いました。

なぜなら、その順番でしか読めないからです。
第2線にある音が何かと言うことになると「みそしる、だから、ソ」と考えていくことがおそらくできないであろうと思いました。


丸暗記はたいへん得意です。しかし、それを活用する力には恵まれていない。そのことを受け止めるのに私が1年以上かかってしまいました。


結局、彼女に多少なりとも有効だったのは、当時使っていた「アルフレッドレッスンブックA」でした。

その話は次回にいたします。

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作曲家を知ろう!ヘンデル

2023年02月06日 | 作曲家を知ろうシリーズ

今月、生徒さんに聴いてもらう作曲家はヘンデル。

何人かの生徒さんは、習い始めにあのヘンデルのパッサカリアを連弾に編曲したものを弾いてもらっているので、ヘンデルの名前自体は知っています。


ヘンデルは<ハレルヤ>や、表彰式の時によく使われる<見よ、勇者は帰る>の作曲家ですので、曲を聞くと「へぇ」となるかもしれません。

どんな反応があるか楽しみです。


先月のシューベルトは、冬休みの間に聴けたこともあり、感想を書いてくるのが皆、早かったです。

学校の音楽の授業で聴いた曲もあったようです。

感想で多かったのが、曲が美しいと。
高学年以上になると、古典派とロマン派が混ざっているようだと。


趣味でもこのように知識を広げていけるのは良いことです。
歴史のことも書くことがあるのですが、今はよく分からなくとも、高校生になった時にでも少し思い出してもらえたら嬉しいと思います。


ヘンデル | Composer Sakkyokuka

Composer Sakkyokuka

 


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後悔

2023年02月04日 | 苦手なことがある子供たち

3歳の自閉症の男の子のレッスンは、ゆっくりではありましたが少しずつ反応が良くなっておりました。

2カ月くらい経つと、少しずつ手を動かしたり声を出すこともするようになっていました。

家では、レッスンでしたことを一人でやり始めることもある様子でした。
こんにちはのリズムを手の平にトントンしたり、グーチョキパーの歌と共に手を動かしたりと。



ところが半年くらい経った頃、お母様の方が体調を崩され、しばらく頑張ってレッスンに連れて来られていましたが、療養しなければいけない状態になってしまいました。

国に帰って治療すると。ご出身が外国の方でした。

それで彼はレッスンに来られなくなりました。

お父様が1度だけ連れて来られましたが、手に負えない様子でした。
レッスン室のドアを開けると、ピューッと飛び出しあっという間に姿が見えなくなってしまいました。お母様と一緒の時はそのようなことが一度もありませんでした。あの体験レッスンのドアを開け放した時でさえ。


お母様が痩せてこられていたので、気になっておりました。
もう一人の自閉症の生徒さんのご両親と、お話をする機会を作った方が良いのではと思っておりましたが、出過ぎたことかとも思い、踏み出せませんでした。

今思うと、もっとお母様にお子さんはよくやっていることを伝え、お子さんとお母様のお二人を褒めるべきだったと思います。

異国の地で、しかも発達障がいの情報自体が日本では十分ではなかった頃です。

不安に思われていたことが多かったはずです。
私に経験が少なく、もう一人の生徒さんもどうなるのかわからない中で私自身も自信がありませんでした。

力になれなかったことを、今も悔やんでいます。

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失敗

2023年02月03日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の生徒さんのレッスンで失敗したこと。

何をしたら良くないことが起きるのかわからず、気を付けていたものの、このような反応が出てしまうのか、と思ったことがありました。



彼女が小学2年生だった時のこと。

彼女はいつも1本指でブツブツ音を切ってピアノを弾いていました。

(ロシアンメソッドを知った今でしたら、むしろスタートはそこからと思いますが、その頃はこの導入法を知りませんでした)


まずは指を順番に使うことを覚えてほしいと思っていました。

(今でしたら、まずは3の指だけで弾いてもらいます。)

その日はノリノリでピアノを弾いていたので、今ならやってくれるかもしれないと思い、指を順番に使うことを教え始めると、態度が一変。


突然無表情になり、壁の一点を見つめて動かなくなりました。

名前を呼んでも、揺らしても、顔を覗き込んでも、くすぐってみても、無表情で壁の一点を見つめたまま動きません。


完全に彼女の中から私は消えていました。
自分の周りに囲いを作った様子でした。


私としては軽く「こうするといいよ」と強制するつもりもなく言ったのですが、邪魔された気分だったのかもしれません。

しばらくこの事はしてはいけないと思い、1本指のブツブツのままでした。

しかし、この3カ月後、絵を見て弾くクラウス・ルンツェの「2つの手12のキー」というテキストを使い、両手で5本の指を使いレガートで弾くことが出来るようになりました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


私の失敗はもう1回あります。

また同じ状態にしてしまったのです。

それは音の読み方を教えた時でした。
自閉症児に音は読めないと言われていました。しかし、何か方法があるのではないかと、その機会を私は狙っていました。

まずは5線を使ってどのくらいのことがわかるかと試し始めた途端、無表情で壁の一点を見つめ動かなくなりました。

またやってしまいました。

すぐに歌を歌い始めましたら、彼女は戻ってきました。



自閉症の人は抽象的なものが苦手です。
彼女には、ドレミは音の高さやメロディーというものを表したものではなく、歌詞でした。ドという言葉が音の高さを表していることがわかっていませんでした。

今でしたら、楽譜を読むことにこだわらなくとも、聴いて覚えられる曲を弾いてもらいます。私がそのような曲の存在を知ったからです。

不思議な音の国の教本には、音のキャラクターがいるので、今でしたらもっと違う教え方ができるかもしれません。


結局、音の読み方を教えることは出来ませんでした。


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困惑

2023年02月02日 | 苦手なことがある子供たち

シューベルトの子守歌後、少しずつ笑顔が見えてきた自閉症の女の子。

レッスンが順調に進んできていました。


ところが、夏休み中にレッスンに1度しか来れなかったことから状況が一変しました。




久々に会った彼女は、どうしたことかハイテンションで落ち着きがなく、声もやたらに大きい。

歌やピアノも途中から勝手にテンポを速める。

彼女のピアノに伴奏を付けようとすると、私の手をどけて一人で弾きたがる。私が弾き歌いをすると横からピアノをガチャガチャ鳴らす。


8カ月前に戻っていました。


虚しさが私の中に沸き上がりました。
積み重ねが出来ない。またやり直しという想い。

せっかく彼女と楽しい時間が過ごせるようになってきていたのに・・


こんな時にいつも思いました。
ご両親は彼女と毎日一緒、一生一緒なのだと。

気を取り直してまた始めるしかない。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


このようなことはその後も幾度となくありました。
休みが続かなくとも。

やっとこれならできる、という状態になっても翌週にはその記憶をそっくりどこかに置いてきてしまったようでした。

その繰り返しでした。

しかし、年数を重ねてわかったのは、その時にできなかった、というより受け入れてもらえなかった、と理解した方がよいかもしれませんが、3カ月、6か月と間をあけて再び試みるとできるようになる、ということです。


どのお子さんでもそうですが、その時を待つことがレッスンには必要です。
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