おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

予習しておきます

2019年06月16日 | 重力奏法
月曜日にプレトニョフを聴きに行くのでちょっと予習をしておきます。

例の「ロシア・ピアニズムの贈り物」によると、

プレトニョフの師はヤーコフ・フリエール(1912-77)
フリエールの師はイグムノフ(1873-1948)
イグムノフの師はズヴェーレフ(1832-93)
ズヴェーレフの師はデュビュック(1812-98)とヘンゼルト(1814-89)

スゴイ・・
家系図でもこんなに遡れません・・

デュビュックの師はフィールド。フィールドの師はクレメンティ。
ヘンゼルトの師はフンメル。フンメルの師はモーツァルト。

クレメンティとモーツァルトの関係は既にご紹介しました。

ご存知のお名前もあると思いますが、少しずつ現代に近付けて大先生方をご紹介したいと思います

・ズヴェーレフ
ヘンゼルトに徹底して練習の意義を叩き込まれ、厳格な指導法を編み出す。
厳しいレッスンで知られていた。準備不足だった弟子のラフマニノフに「出ていけ!」と怒鳴り、次のマクシモフにも同じ所で怒鳴り、マクシモフの座っていた椅子を蹴りマクシモフは椅子から転げ落ち、それを見ていた3人目の生徒はもうビクビクで問題の箇所で上手く行くはずもなく、ズヴェーレフの怒り爆発。「3人とも破門だー」そのあとの生徒も怒り狂うズヴェーレフに「出ていけ――‼‼」

毎日の読書も義務付けられていたそうで、何をどこまで読んだか内容を報告しなければならなかったと。読みの深さが足りないと不合格となり再度読み直し。

しかし厳しい規律は彼らに偉大な仕事をこなす基盤を作る。
彼は弟子たちと共に音楽会、劇、オペラを鑑賞し、小説の解釈の議論もした。

「この素晴らしい教育者は子供たちに関心を起こさせ多種多様な音楽の材料を使って惹きつけた。先生が教えてくれたものの中で最も価値のあるものは腕の使い方。生徒が腕を緊張させ硬く乱暴な音で弾いたり、指先を緊張させて肘を動かしたりすると、情け容赦なく叱った」と弟子のひとりが言っています。

ズヴェーレフ門下 ラフマニノフ、ジローティ、スクリャービン、イグムノフ等。

・イグムノフ
ロシアの最も偉大な教師の一人。
一つ一つの音が聴きとれないほど速く弾く演奏を嫌い、音が明瞭に発音されるよう生徒に要求。しかも乾いた硬質な音ではなく、柔らかさの骨頂ともいえる肉声のような音での明瞭な発音で。
ネイガウスの弟子であったギレリスがイグムノフのレッスンを受けたいと申し出るが他のクラスの生徒を教えることを遠慮。しかし何度も熱心に頼むギレリスに真剣さを感じレッスンを行う。

ネイガウスが病気だった時にイグムノフのレッスンを受けたことのあるヤーコフ・ザークは「演奏の細部を教えるのに彼ほどの愛情を持ってできる人はなかなかいない。数小節の中で何と多くの重要なこと必要なことを語ったか。作品はまるで春の日差しを浴びたつぼみのようにほころびだした」と語っています。

イグムノフ門下 オボーリン(アシュケナージの師)、マリヤ・グリンベルグ、フリエール等

マリヤ・グリンベルグの演奏

J.S.Bachのチェンバロコンチェルト第5番。第2楽章はコルトーが編曲している「Arioso」で有名。
彼女はユダヤ系の家庭に生まれたことで生涯不当な扱いを受けていましたが、その演奏は20世紀屈指のピアニストと言われています。

・フリエール
国際コンクールでギレリスと競い合う。
フリエールの弾くリストのソナタに感動したリストの弟子ザウアーから「作曲者リストの次にこの作品の最高解釈者」とこの曲の手書きの楽譜を賛辞が記されたサイン入りで贈られる。
演奏スタイルは壮大、硬質でない豊満な音が前代未聞の大音響となって大ホールに響き渡り、クライマックスで見せたダイナミックな音はリヒテルからもギレリスからも聴いたことのない轟然たるものであった。

教師として、作品の詩的構想を学生ができるだけ正確に深く理解することに専念した。

Yakov Flier plays Liszt Piano Concerto No.2 (Anosov 1948)



これを書くためにマリア・グリンベルグの演奏を初めて聴きましたが、この情熱、繊細さと格調高さ、一気に好きになってしまいました。
ヴィルサラーゼも彼女を好きな演奏家の一人に挙げているそうです。
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見えてくる

2019年06月16日 | 不思議な音の国
「不思議な音の国」をこれまで26人の生徒さんに使ってきました。1年半ほどの期間にです。



短期間でこれだけの生徒さんに同じテキストを使った経験は私にはありません。
それだけこのテキストを信頼したからです。
これまで色々なテキストを使ってきましたが、やっと信じられるものに出会えました。

同じテキストをこれだけの人数の生徒さんに使うことができたおかげで、
・このメソッドでレッスンをすると生徒さんがどのような弾き方をするのか
・どのくらいの期間で1冊終えられるのか
・癖のある手とナチュラルな手
・練習量の差
・保護者の方のご協力の大きさ
など色々と学ぶことができました。

このテキストを使っていない生徒さんもおります。
「不思議」では音の出し方から始まり、様々なタッチをピアノを始めて1年未満の生徒さんにも教えていきます。

ところが「不思議」を使っていない生徒さんは奏法をひとつずつ覚えていくテキストを使っていないのでそれを身に付けることができていません。

私の教え方が十分ではなかったのが問題なのですが、無理なくそれを教えられるテキストでなければ私のような力の指導者では教えきれないことも事実です。

このメソッドでレッスンをしていると、これまでその内できるようになるだろうと思っていたことが幻想であったことがわかります。

ピアノを弾くのに向いている手、身体の支え、音楽に向いている感性、美的センス、聴く力、集中力、思考力。
これらは育てるものと思っていましたが育てきれないものが存在すると感じるようになりました。

また、イリーナ先生がおっしゃっていた「子供の成長は親次第」
預けっ放し、付き添っていても見ているだけで吸収しない、積極的に参加。
これはそのまま子供に反映します。

あまり気にしないようにしてきたことが見えるようになってしまい、複雑な気持ちでいます。
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