おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

「勉強で疲れている子供」(第15号)

2012年06月10日 | 苦手なことがある子供たち
小学校の高学年になりますと、中学受験のため熱心に塾に通う生徒さんが出てきます。

そのような生徒さんがピアノの練習量が減ることで、以前よりうまく弾けなくなったと思われる先生がいらっしゃると思います。
確かにそれもありますが、ピアノがうまく弾けなくなる原因はそれだけではないと私は思っています。

空間認知について色々と知ることができたお陰で、ピアノを弾く時にいかにその能力が多く使われているかに気付きました。

長時間、本を読んだり、文字を書いたり、文章を作ったりした後でピアノを弾くとうまく弾けないことがあると思います。
脳の使う場所がピアノを弾く時とは違う気がします。
ピアノを弾く時は脳のもっと広い所を使っている気がします。

音を出す前に全てのことが頭の中で瞬時にイメージされていないとピアノはうまく弾けません。
それはどれも目で見ることのできないものです。
まさしく空間認知の能力です。

ピアノを弾く人は高齢でもお元気な方が多いと思います。
次の行動や作業を頭の中で瞬時に働かせることに長けているのではないかと思います。
お料理をされる方も手順の良さが必要とされていますが、それと似ている気がします。
できあがりの味、香り、器、盛り付け、出すタイミングなど全てイメージされてお料理は進んでいくのだと思います。

小学生の生徒が熱心に勉強を続けていると、脳の一部分を酷使するように思います。
私は脳科学者ではありませんのでこれが正しいかは自信がありません。
ただ、それまですんなりと出来ていたことが、たった2拍のために15分~20分の時間をかけなければ出来ないほど頭が働かない状態になっている生徒を見ると、もしかしたら空間認知の力が衰えていることが原因ではないかと思ってしまいます。

よく、レッスンに早めにいらして前の生徒さんのレッスンが終わるのを待つ間、学校の勉強やドリルをして待っていらっしゃる生徒さんがいます。
そのような生徒さんは大抵レッスンでうまく頭が働かず、レッスンの終わり頃になってやっと頭が働くようになり、残念ながら丸はもらえずに終わるということが多々あります。

個人のお宅でレッスンを受けていらっしゃる生徒さんは、前の生徒さんのレッスンを見ることが出来それだけで勉強になりますが、楽器店の音楽教室は残念ながらそれが出来ません。
レッスンの前は何もせずにお待ちいただけるとありがたいと思っています。

時間が惜しいとお考えの保護者の方がお子様の為と思われてなさっている事が、かえってお子様に負担をかける事態になっている事を知っていただきたいと思います。

習い始めの生徒さんの中には空間認知の力を使う機会が少なかった方もいらっしゃると思います。そのような生徒さんは初めはスムーズに進みません。
やっとピアノを弾く頭になってきたと思った頃に、「この子は向かない」とか「音が読めるようになればいい」とおっしゃってやめさせられる保護者の方が時々いらっしゃいます。

お子様の習い事を長続きさせるには、保護者の方の忍耐力も必要です。
安易に始め、簡単にあきらめる事を繰り返すことがどのような事態を生み出すか保護者の方にはよくお考えいただきたいと思います。
身に付けた能力は使い続けない限り衰えていきます。
ピアノは、自転車に乗れるようになった人がしばらく乗らなくとも乗れるというものとは違います。

お子様が成長する中でこの時でなければ得られないもの、時機を逃すと得にくくなるものがあるはずです。

ピアノレッスンは音楽以外にも得られるものが非常に多いと思います。
それは考える力、根気強くやり抜く力、打たれ強さとして将来必ず役立ちます。
そしてさらに、音楽の美しさで心が潤されるのであればこんなに素晴らしいことはないと思います。


           


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「音の長さの感覚」がつかめない生徒(第14号)

2012年06月03日 | 苦手なことがある子供たち
実は、私がレッスンをしていて最も改善しにくいのがこの音の長さの感覚です。
これは子供、大人に関係なく一部の人たちに現れます。

何拍伸ばすかはわかっている場合が多く、リズム打ちも思ったよりできます。

ところが演奏となると特に長い音符に対してかなり不正確になります。
演奏しながら自然にテンポを感じる感覚が働いていないように思います。

その方たちが演奏している時に声を出して数えているのを聴いていると、2拍、3拍、4拍等はその前までとは
全く違うテンポでただ、「1,2」と言っています。
そして大抵、弾き始めの音だけ見てすぐに弾き始めます。

演奏を聴いていると音と音の間の感覚がなく、音は点として感じられているように聞こえます。
拍子感やテンポ感と言った枠がない状態で自分勝手に音を散りばめて弾いているといったらよいでしょうか。




これまで空間認知と運動能力について書いてきましたが、リズム感もこの2つの能力に関係していると思います。
特に空間認知の力です。目の前にない物の形、量感などを推測する力です。

音の長さは時間的な量感と言えます。その感覚を苦手としていると私は考えています。

音の長さの感覚がつかみにくい生徒さんにスーパーボールを弾ませてもらって下さい。
おそらく弾ませられないと思います。
弾ませるそのことしか考えていないので、ボールが戻ってくる時間を考慮していないのです。

しかし、ボールが戻ってくる時間を意識していただくと弾ませられるようになります。
そのあとでメロディーだけ弾いてもらって下さい。
聞いたこともないような滑らかさで演奏されると思います。

この感覚を育てることは容易ではありません。
子供の頃からバレエやダンスを習っていても、いつも1人だけ先に動き始めてしまい他の人と合わせられなかった話を
このような生徒さんからよく聞きます。

経験や訓練によってなかなか培われない感覚なのかもしれません。

だからと言って何もしないではいつまでたってもそのままです。
諦めずにリズム打ちは続けるべきです。
ヒンデミットの「音楽家の基礎練習」には、音楽家ではなくとも使えるものがたくさんありますので参考にしています。

このような生徒さんはこちらの手拍子に合わせて手を叩くことも苦手です。
特に大人になられてからピアノを始めた生徒さんです。
(大人の生徒さんでも元々リズム感の良い方はいらっしゃいますので、どの方もという話ではありません。)
テンポを変えて手を叩いてもテンポが速くなるとメチャクチャです。
どのテンポで叩いているか良く聴かずにいきなり叩き始めますので、こちらのテンポと合わないばかりかご自身のテンポも一定ではありません。

おそらくある意味、見通しを持つことを苦手としているのだと思います。

リズムの感覚を苦手としている生徒さんには難しいことが多いと思いますが、色々と続けていると次第に音の長さの感覚がつかめるところも増えてきます。
しかし、どうしても苦手なリズムはありますのでそこはおまけが必要です。

それから、レッスンではリズムのこと以外でもできるだけ空間認知の力を意識的に使ってもらいます。
次の音を出す直前に、その音と鍵盤の位置、そこにある自分の手の形や向きなどを瞬時にイメージするようにです。
音楽的なことまでは初めから要求しません。但し、いつも美しい響きの音であること。後からでは手の使い方を全てやり直さなければいけないことになりかねず、イメージしたものをまた変えなければなりませんので。

ピアノの蓋の上で弾いていただくことを多く取り入れていくと、自分がどれだけ正確にイメージを描かずにピアノを弾いているかが分かるはずです。




(Amazonnでのご購入はこちら)
ヒンデミットの「音楽家の基礎練習」音楽之友社

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
追記:
以前、音の長さが目で見えるようにパタパタ定規のようなものを作ったことがあります。
「まん中のドが探せない」子供(第7号) - 音の国 / OTO-NO-KUNI

それに代わるものとして使えると思ったものがあるので、ご紹介します。

この丸を1拍なら1個、2拍なら2個と押すだけです。
丸を書いたり、リンゴを書いたりすることと似ていると思われるかもしれませんが、こちらの方が目の前に実物がある感覚を持てます。

長い音を伸ばす時に、最初は押した数だけそのまま手を叩いてしまうと思いますが、次第に心の中で数を数え、手の方はそのまま伸ばすことができてくると思います。

時間がかかるかもしれませんが、苦手意識がつかないように遊び感覚で出来れば、と思います。

2021年6月16日
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする