日奈久温泉は八代市街地から南に数キロ行った所にあり、
熊本県北の山鹿や菊池とは違った趣がある温泉地である。
【 日奈久温泉発見の由来 】
時は南北朝時代。肥後の守菊池武重の部下に濱田右近がいた。
濱田は延元3年 ( 1338年 ) 9月4日に、
鞍岳一帯(阿蘇と合志の郡境)の戦にて数々の刀剣を負い、
八代の小島にたどり着き、疵を養っていたところ、
漁村の娘と結ばれ一子六郎左衛門をもうける。
18歳の春を迎えた六郎左衛門は、父の持病を憂いて安芸の市杵島姫命に
父の平癒を祈祷すれば満願の夜、衣冠を正した女神が夢枕に現れ、
「 汝、父の病患を憂い我を信じること久し汝の孝心に対し、
霊薬を授くべし、即ちこの干潟の中に平石があり、
それより百歩にして奇石あり、その下にこそ正しく温泉なれ、
父をして17日浴せしめなば、必ず平癒すべし 」 とのお告げがあった。
このお告げに、六郎左衛門は夢の地形をたどり奇石を発見し、
そこを掘り下げると温泉がこんこんと湧き出した。
時に応永16年(1409年)のことで、世にこれを孝感泉と推頌されている。