1952年に占領軍による検閲が解かれると、山端の写真展が東京で開かれた。3年後にはその中の1点が « The Family of Man » と題してニューヨークの現代美術館 (MOMA: Musée d'Art moderne de New York) で展示された。ご飯の入った茶碗を持った子供の写真で、その周囲で起こっていたおぞましいことについては何も語るものではなかった。
原爆投下50周年には、山端の写真に写っている人を探し出す企てがなされた。もちろん、生存していた人は僅か。その中に、子供にお乳をやっている若い母親 (la jeune mère allaitant son enfant) として写っていた女性がいた。彼女にその写真を見せた時、子供がどのように死んだのか、衰弱して亡くなるまでに数日しかかからなかったことなどを語った。
彼女の心の中を、おそらく初めて見るその写真に接した時に心に去来したものを想像することは誰にもできないだろう。考えられないような長い時間を越えて、子供が再び目の前に現れた。生き返らすことのできない子供として。彼女は一つのことしか言えなかったであろう。あの子供はこの上もなく大切な存在で、何者もその死を正当化できないだろう、と。
山端庸介 SARINAGARA -YOSUKE YAMAHATA (I)
山端庸介 SARINAGARA -YOSUKE YAMAHATA (II)
山端庸介 SARINAGARA -YOSUKE YAMAHATA (III)
山端庸介 SARINAGARA -YOSUKE YAMAHATA (IV)
山端庸介 SARINAGARA -YOSUKE YAMAHATA (V)
PHILIPPE FOREST - SARINAGARA - 小林一茶