大阪出張の折、堂本印象さんの絵でも見て帰ろうかという気になり、京都に立ち寄る。いつものように突然であった。こういう心の動きから出てくるものにしか感じなくなってきているような節がある。
京都駅に降り、エスカレータで地上に昇っていくとき、何気なく右側の雨空を見上げる。そのとき、灰色の空を背景に駅ビルの黒に縁取りされている京都タワーが目に入った。それは今までに気付かなかった姿で、ほんの一瞬のことであったが、大げさに言うと美しいと思った。以前に同じ場所で駅ビルの天井に美しさ (どう表現したらよいのかわからないが) を感じたことがあったので、何かが飛び込んでくることを待っていたのかもしれない。
京都タワーはすでに何度も見ているが、なぜ不評なのかということはよく理解できていた。しかし、その日はまわりとの関係においてタワーが別の意味を持ったようだ。 「タワーのある風景」 に硬質の美しさを見ていた。