ほほえみ返し
朝イチのひと仕事を片付け、気分転換とばかりにパセオを飛びだす。
ご近所をちょいと歩けば、昭和30年代的な懐かしい光景が広がる。
父や母との外出はどこへ行くにも都電だった。
あのころのダダッ子感情がふいによみがえる。
このまま飛び乗って、終点(三ノ輪)で昼酒でもやるか?
でも今日はまだ、あとふた仕事ばかり残ってるぜ。
ありゃ明日でもいーだろよ。
でも夜はライブと呑み会じゃねーか。
途中どっかで昼寝でもすりゃ大丈夫だろ。
また飛鳥山で浮浪者にまちがえられてーのか?
ありゃたしかに浮浪者の方々に気の毒だったわ。
ベンチで寝るときゃネクタイぐれえ締めろやっ!
ベンツで寝るときゃそーしてやるわい。
生まじめな私とそうでない私のヨタれ話もそこそこに、今日のところはこんなもんで勘弁してやるかと結局仕事に戻ることに。
………じゃあ、またね。
苦笑とともに都電を見送る。
上野のお墓はまた今度だ。
父母が ほほえみ返す 三ノ輪行き