薔薇エティ
久方ぶりに、東京北区の旧古河庭園へとバラ見に出かけたのは、ある五月晴れの日曜日、昼下がりのことだ。
元旦以来の休暇をとった連れ合いをお供に、めでたくも約半年ぶりに夫婦そろっての行楽である。
ご近所代々木公園に近ごろできたドッグランで、朝方からくたくたになるまで遊ばせてあるので、わが家の守護犬ジェーはこの日は留守番担当だ。
名高いここ旧古河庭園の薔薇は、ヴァリエーションが実に豊かである。
色や姿が好ましい上に味わいも繊細ときてるからまったく飽きがこない。
どことなく私と正反対なところが、私を惹きつける真の理由なのだろうがそれがどーした。自覚症状があるだけマシである。
さて、その華麗なる薔薇園の奥には、これまた美しい日本庭園がある。
折りよく、うれしいくらいに新緑がまぶしい。
ここから歩いて15分ほどのおなじみ駒込・六義園にはスケールの点で及ばぬものの、凛としたその風情はどこまでも細やかであり、しっとり深い陰影をおとす散策道にはノスタルジックな薫りがあふれている。
心地よくも脳裏に響く幻聴は、アントニオ・マイレーナのティエントである。
こうした情景をぶらついていると、それだけですっかり心が和んでしまうのは寄る年波の効用だ。
ならば、歳を取るのもそれほど悪かねえ。
そう、歳を喰えば喰ったなりに、新たな楽しみが生じるのだ。
人生至るところ青山あり。
諸君らのような、若く美しいお方には理解不能な世界かもしれない。
ふ、若造どもめ(←50歳未満)、
どーだ、うらやましーか?
なんなら、そこの貴方(←できれば30歳未満)、
特別に私(←52歳)と替わってやってもいーぞ。