作家 小林真一のブログ パパゲーノの華麗な生活

歴史・エッセイ・小説・時事ニュース・・・なんでもござれのブログです。どうぞよろしく。

【 ハイデルベルグ 】

2012-11-13 15:17:52 | 02 華麗な生活

1960年代にドイツを訪問する機会に恵まれるのは、
一流企業と呼ばれる会社の役員と決まったようなものだった。

ボクの世代から五年程も上になれば、殆どが旧制高校を
出ておられ、ドイツに来たからには行きたい場所があると
口々に言われ、何処かといえばハイデルベルグとの答えが
返って来たものだった。

ボクが始めてドイツに行ったのが68年で、丁度フランスが
ドゴール退陣を要求しての、全国的なストライキでパリ空港も
閉鎖。フランクフルトに滞在し、日航オフイスに行っても、いつ
状況が好転するかが分からない。

ボクの南アでのスケジュールは、決まっているから、パリが
ダメとなっては、どこかで時間を潰す必要があった。
そこで列車で簡単に行けたハイデルベルグを訪問することにした。

この時のボクは、ドイツ語はおろか英語も危ない状況だった。

旧制一高や三高では全寮制で、ドイツ語を学ぶ者とフランス語で
寮の部屋割りが変ったという。
旧制高校のドイツ語を学ぶ中に、アルト・ハイデルベルグという
戯曲があり、それを学んだ人々が等しく憧れたという事情があった
ようである。

ともかくボクもハイデルベルグを象徴する、お城に上ることにした。
そのころはまだ日本からの団体旅行は無かったと思う。

稀に日本人と出会うと、お互いに名刺交換をし、その夜は一緒に
食事を取るのが普通の事であった。

ボクもお城で、一人の日本紳士と出会う。
中米諸国のコーヒー生産者が集まる、珈琲連合の人で大森さんと
いった。大森さんとは、その夜落ち合って一緒に食事をし、ワインも
飲んで語り合った。

コーヒー生産者から見て、二つの重要な国があると言う。
アメリカとドイツだとの事だった。
アメリカは品質は良くないが、とにかく大量に買い付けてくれる。
インスタントコーヒーになるから、品質はあまり考慮されないとの事で
逆にドイツは高級品を狙って買う。

ところがと、大森さんは浮かぬ顔で言った。
ドイツで飲むコーヒーですが、美味しいと思われましたか。
そうだ。ドイツで出るコーヒーは美味くない。
焙煎が下手なんでしょうかねと、大森さん。

ボクは未だにドイツのコーヒーは不味いと思っている。

ハイデルベルグの話をもう少し。
ボクがまだヨーロッパとは全く無縁の64年に、当時劇団四季が、
「若きハイデルベルグ」という劇を公演し、梓みちよが主題歌を歌った。

その曲をyoutubeで見つけた。
梓みちよで検索し、リンデンバウムの歌を探せば出てくる。

♪リンデンバウムの大きな幹に 愛の言葉を彫ってきた
 リンデンバウムは緑の木陰 忘れな草が咲いていた
 角笛がわたる夕べの空 二人の愛の星が上ってくる
            (以下 略)

64年か。ボクは29歳だった。もう29歳か、まだ29歳か。
ボクの会社では、同期入社の多くが海外活動に入っていた。
ボクは完全に出遅れていた。

「華麗な生活」目次へ≫     総目次へ≫

220← 応援 クリックお願いします


最新の画像もっと見る

コメントを投稿