作家 小林真一のブログ パパゲーノの華麗な生活

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【 失業者時代 (2) 】

2006-10-27 17:07:53 | 12 幼き日々のこと


この頃会社全体が暗くて重苦しい雰囲気に包まれて
いたのには、重大な特殊事情があり、それはメイン
バンクの発言力が強大になるとともに、社長人事に
クチを出し、いち早く東大閥を利用してその銀行に
取り入ることに成功した、武内というアホーが社長
の椅子に座り、人望厚かった機械部門統括の専務が
社外に出されてしまったこと。

豊臣政権で加藤清正が追放されて、嫌われ者の石田
三成が首座に着いたに等しい人事。

武内のアダ名が「アイ・ノウ・ヒム」。
ここらを書きすぎると、目下連載中の小説が書きにく
くなるんだがまあいいでしょう。

武内が専務になってすぐ、社内にTACという言葉
が流れた。帝大・アメリカ・コットンの頭文字を並べ
たもので、要するに武内にとって、旧帝大、米国駐在
経験者、棉花部出身の者だけが信頼に足るとする、
極端な差別主義です。

帝大はホンネは東大なんだけど、それじゃ数が足りな
いから京大・阪大などの旧帝国大学の卒業者を集めて
本来社内では各校が派閥につながると遠慮していた
学閥を「東棉学士会」と称し、それに自ら米国東棉社
社長の経歴を生かして、ニューヨークはじめアメリカ
各地の駐在経験者、己が歩んだ棉花部。
この三者を集めて会社の中枢を握る。

ウイーン・東欧に出張して来る者の多くは機械部門で、
上記の三者に入らない者が多い。
言ってやった、TACだと?並び替えてみろ、CATだ。
キャット、猫じゃないか。

武内がヌカしたらしい。海外店の長はよろしくTAC
で固めるべしと。リシャッフルするんだと。
「アイ・ノウ・ヒム」だけしか信頼できない情けない
ヤツ武内。トーメンを潰したA級戦犯の第一号。

いずれ小説で徹底的に叩きます。

後のハナシになるが、こやつの葬式は哀れだったらしい。
ボク?ボクが行くわけ無いじゃないか。

亡くなった奥さんの後釜に据えた銀座の二流クラブの
冴えない女。それに怒った二人の息子たちは、オヤジ
に愛想つけ没交渉。肝心の女は武内が死病に取り付かれ
たと見るや、獲るべき物を獲って、ハイ、サヨウナラ。

こんなアホーが社長になって、社内に積極的に閥を作り、
それで全社の意気が上がるわけがない。ろくな死に方
出来なくて当然。

ボクは時間が余るほどあるから、シンガポールに行き、
スリランカも訪れ、ヨーロッパまで足を伸ばした。
何かを輸入販売する小さな会社を起こすつもりだったから。




                                       パパゲーノ


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