作家 小林真一のブログ パパゲーノの華麗な生活

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【 失業者時代 (3) 】

2006-10-27 17:08:55 | 12 幼き日々のこと


時々は会社に出かけて行った。

退職金を早く出せと督促するために。

人事部の応接室には盗聴器が仕掛けられ、
それを武内が聴くのだとのウワサがあったから、
その部屋へ連れて行けと、部屋を物色し、
ここだと決めて、大声で武内が聞いたら卒倒しそうな
罵詈雑言を吐いた。まるでガキですわ。

「どこまで出た。1億は覚悟したか」

「無茶言わんでくださいよ。私は所詮将棋の駒ですから」

年上の人事部長が泣きそうに言う。

「武内が盗聴してんだろう、泣き声出したら後で叱られ
まっせ。いま日本石油の株が動意づいている。早う1億
出してくれ。日石株投資に間に合わん」

後で見事に騙される、一年先輩で会社を辞めた男と事務所
を開き、いつでも会社を起こす態勢を整えた。

結局翌年の5月4日、ゴールデン・ウイークのさなかに
ボクの退職処理の全部が整えられ「切腹の儀」完了。

流石に1億には程遠い額が提示されたが、ボクはまだ
44才で定年には遠く及ばず、しかもボクが勝手に辞める
わけで、規定通りなら5百万も出ない。
ボクも冗談で億と言ってたわけで、正規の定年者に近い
額に否やはなかった。

会社が設営していた「適確年金」を全額前倒しにさせた。
「オレが辞めるんだぞ。あと誰が稼ぐんだ」とうそぶいて。

向こう十年間「生活支援金」を出すという。月に十○万円。

まあ勤続22年には過大といっていい金額になった。

一日も早く独立したかった。




                                       パパゲーノ


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