作家 小林真一のブログ パパゲーノの華麗な生活

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【 失業者時代 (4) 】

2006-10-27 17:09:42 | 12 幼き日々のこと


考えてみたら「辞表」というものを出してなかった。

そんなもん出さんと「早よう辞めさせ。退職金は1億
に負けといてやる」と喚いていたのですから、人事部
も困り果てたと思う。

しかし「辞表」は書くべきだった。

「一身上の都合により」なんて誰が書くものか。

好きな重役、皆追い出してTACじゃなかったCAT。

猫が銀行の操り人形の会社なんかに居られるか。

オレ様は「アイ・ドントノウ・ヒム」なんだ。
それが名誉だ。

そうハッキリと退職理由を書いてやればよかった。
惜しいことをした。そう思います、本心から。


正式にクビになったつもりでいたのに、社内報には
「依願退職された」と書いてあると聞き、人事部長
に電話して、

「なんで、ハッキリ、クビにしてやったと書かんのや」
と怒鳴りあげたった。まともな商社マンじゃなかったな。


ともかく天下晴れて失業者になったから、失業保険
貰おうかと職安に出かけていった。

職安は阪急線の池田にあり、すぐに退職金が出るわけ
じゃなく、就職希望者として登録をさせられた。

係りの職員が、ボクを哀れむような目で、好奇心も
隠し切れない目もして、いろいろと尋ねる。

面白いから、こっちも芝居をする。

「なんでまた、こんな良い会社を辞めたんですか」

「実はこれで会社を辞める羽目に」と、小指を立てて
見せる。

職員は身体を乗り出し、「誰かまずい相手ですか」

「社長が口説きに口説いて振られたとウワサの有った」

「へ~え、それで社長の圧力でも・・・」

「よっぽど悔しかったんでしょうネ」

「それで、これからどうします。ここには貴方の希望に
適う仕事は無いと思いますよ」

「そうでしょうね」と肩を落とし、しょんぼりして見せる。

どんな連中が仕事を探し、どんな仕事の求人があるのか
閲覧できる場所で調べていたら、先ほどの職員が仲間を
集めて、盛んにボクのことを話している様子だった。
仲間の連中がチラチラとこっちを盗み見するから分かるんだ。




                                       パパゲーノ


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