作家 小林真一のブログ パパゲーノの華麗な生活

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【 グレープ フルーツ 】

2008-10-04 15:39:33 | 02 華麗な生活

四十台から五十台にかけて、ボクの朝食には
必ず半分に切ったグレープフルーツがついていた。
グレープフルーツを輪切りにしたやつを、ドイツ製の
片側にギザがある専用のスプーンを使って、
実をえぐり出して食べるのが、朝の決まりの儀式で
あった。
一巡しても、まだ実は残っており、二順目でもまだ
残っていて、三順目ですべての実を食べつくす。

十一年前の九月末をもって、ボクが十年以上続けた
このセレモニーが中断となった。
ボクはついに腎臓の機能がなくなり、透析が始まった
のであった。
入院病棟に看護学校を、その年卒業したばかりの
新米のナースがやってきて、「べからず集」を述べた。
その中に「生野菜と生果物の厳禁があった。

理由はカリウムだった。
健常者には、必要栄養素のカリウムだが、
透析患者には厳しいコントローリが課せられた。
「聞いてないよぅ~」

透析患者は、病院にもよるだろうが、血液検査がある。
ボクのクリニックでは、月に二回行われる。
カリウムとリンの値に、多くの患者が悩む。
基準値を超えると、心停止の恐れがあるからだ。

そんな事情で、臆病なボクは大好きだったグレープ
フルーツと、泣いて別れた。大好きなのに・・・・・
「今度生まれかわって、めぐり逢ったら、必ず・・・」
まさか、そこまでは言わない。

グレープフルーツだけじゃない。
西瓜なんて、とんでもない。
大型の梨とも、交際を禁じられた。
みかんの季節がきたって、週に一度か二度、
それも一個だけ。

ボクの血液検査の数値は、カリウムもリンも、
ともに4前後で、これは健常者のストライクゾーン。
だから偶には良いだろう。

今年は今朝のが3個目だと思う。
仮釈放のときだけ会える、恋人のように、
ボクはグレープフルーツを愛しつくした。

       パパゲーノ

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