二人は並んで座っており、何か話しているようだ。
やがてリーネの方が何かを叫ぶと、立ち上がり格納庫へと走って行った。
話した内容こそ聞こえなかったどう見ても、物別れに終わったような雰囲気であった。
「リネットさん……」
ミーナが心配そうに呟き、
坂本少佐、わたしの順で口を開いた。
「参ったな、リーネの優しさが気弱になっているようだ」
「そうね、弱いことは悪くない。
むしろ時には臆病さが慎重さへと繋がりることがあるわ」
「確かに、今でも訓練ではむしろ宮藤より上だし、
座学は士官学校に受験できる程度はあるから、リーネは出来ることに違いないのだが」
何度かの実戦でリーネの教育も兼ねて彼女とペアを組んだことがある。
大抵緊張で途中でバテるか、墜落するか、参加しても碌に戦えないパターンであった。
しかし、訓練では相変わらず魔力をいもてあまし気味な宮藤と違い、安定して飛ぶことができる。
たまにする座学でも宮藤が四苦八苦する一方で、スラスラと答えを出せた。
ためしに士官クラスの戦術指揮に関する問題を出したら、キチンと解答することができた。
少なくても訓練校では出されなかった問題を出したが、
どうやら、そもそも訓練校に入る前に親戚の軍人が家庭教師として色々教えてもらったらしい。
考えてみればリーネの家、ビショップ家は代々ウィッチを輩出したブリタニアの名家だ。
ウィッチが社会に求められた役目は護国の戦乙女、そんなのが代々続くとなれば自然と親戚に軍人はいるし、
軍隊に入る前から軍人としてある程度教育されるわけである。
そういえば、ユンカーのゴトフリードの兄さんもそんな感じだった。
今は『グロースカールスラント師団』に配属されたと聞いたけど、どうしているだろうか?
「射撃の腕も悪くないし、
後は如何にしてリネットさんに自信を持たせるかが問題ね」
「ミーナ、言うのは簡単だがそれは難しいぞ。
私も未熟だった時代は自分に自信が持てず、
実戦で自分の力を証明してようやく自信が持てたくらいだからな」
ミーナ、坂本少佐がリーネを論評する。
だが、わたしはリーネが今後改善されることを知っている。
そして、これから何が起こり、この世界の未来とわたし達がどうなるかも。
幸いなことに、【原作】は某バッドエンド製造機が脚本を書いたわけでないので、
努力、友情、萌え、パンツで構成されこの物語はいつか幸福な未来へと収束してゆくだろう。
しかし、同時にわたしは知っている。
これは戦争、それも基本人類側が不利な戦争だから多くの地獄があることを。
ネウロイの瘴気で全滅した避難民の隊列、家族や国を守るために殿となって玉砕した部隊。
わたしはその情景と一人一人の顔を忘れることができない。否、忘れてはいけない。
かつて【原作知識】という結論を知っていたので楽観視していた。
しかし、その結論が出される過程でどうなるかこの数年で分かった。
【原作】なんて少しの差異であっと今に変わることは『赤城』の件で分かっている。
わたしが介入したせいであそこまで変化するとなると、今後もさらに変化してゆくだろう。
次のネウロイ襲撃。
すなわち【原作】イベントは今日宮藤とリネットの会話イベントで解禁された。
既存の情報分析でも、数日以内にネウロイが襲撃してくることは確定済みであり、
間違いなく明日にはネウロイが襲撃してくるだろう。