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二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

第17話「吸血鬼Ⅱ」

2013-11-12 23:24:31 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

月明かりをバックに白いシャツをだらしなく着た男。
瞳は血のように赤く髪は黒くボサボサで、少なくても俺の周囲では見たことのない人物。
いや、あの夜に出会った男だと思うけど、呼吸が乱れる。

知らないはずなのに、知っている気がする。
いや違う、随分と変わってしまったけど俺は知っている。

――――ジクリ、ジクリ

「う―――ー」

胸の傷が疼く。
触れれば服がじわりと血で滲んでいる。
そして封印された記憶が解放され、次々に過去の記憶が流れる。

八年前、シキは一度俺を殺した。
あの広場で俺は殺され、シキ、四季も殺された。

「ぐ―――ー」

ひどい頭痛が走り、
次々に過去の風景が再現されてゆく。

思いだす、いつも一緒にいた少年のことを。
習い事から連れ出した秋葉と三人で遊んでいたあの時、
あの暑い夏の日までずっと一緒だったのにどうして俺は――――。

「四季、なのか?」
「そうだよ、志貴、ほんとうに、ほんとうに久しぶりだな」

シキは実に嬉しそうに言う。
でも、ありえない、シキはあの日死んだはずじゃあ…。

「ひゃはははは!!『ありえない』なんて顔してんなぁ。
 たしかに俺は一度死んだ、けどあのクソ親父、情があったのか今日までピンピンしていたってわけだ」

俺の呆然とした顔が面白いのか、四季は可笑しそうに笑う。
よほど可笑しいのか腹を抱え、涙を流しながら笑い、直後四季から蒸気が吹き出て絶叫が響く。

「だまり、なさい……四、季」
「秋葉!?」

胸元にいる秋葉の攻撃だった。
髪を赤くした秋葉が息絶え絶えになりつつも四季を攻撃していた。
どうして!?そう疑問に思い口を開く前に秋葉が語った。

「今まで黙っていてごめんなさい、兄さん。後で必ず説明します」
「……秋葉」

眼を伏せて、罪悪感に浸る秋葉。
秋葉は俺の隠された過去を知っていた、
けどどうやら俺が想像していた以上に複雑な事情が入り組んでいるらしい。

「は、ははは、秋葉も大人になったなぁ」

え、と秋葉が驚くと。
ロア、いや四季は酷い凍傷に罹った姿をしつつも、
魔法陣のような物を展開させててそこに立っていた。

「そんな……わたしの混血の能力が防がれた!」
「いやいや、結構秋葉の攻撃は効いたぜ、まるで親父のようによぉ」

秋葉が信じられないと唖然とし、親父の言葉で硬直させる。

「そして、これはお返しだよ秋葉」

お返しとばかりに一閃、
まずい、初動が遅れたから避けることができない。
せめて秋葉だけは守ろう、そう思って秋葉を抱きしめて守るように身をかがめたが、

ガキィン、と鋭い音と火花が辺りに散った。

「ボクを忘れてもらってはこまるかな」
「ああ、テメェか小娘。無粋な真似を折角の家族の会話を妨げるなんてよぉ」

乱入者は弓塚だった、
弓塚を四季が睨むがすぐに強者特有の余裕の笑みを浮かべる。

「作り掛けだった拠点が代行者に潰されたとはいえ、
 今のオレ、いや私は貴様などに比べればアリと象以上の力の差があるのがわらないのか?
 幾多の死を受け入れ乗り越えて来た私からすれば、例え貴様のポテンシャルが高くてもあまりにも――――脆い」

役者のつもりか腕を広げ大げさに言う。
でも、言っている内容が法螺ではなく本当の事だと俺にはわかる。

「所で、もしかしてここも学校と同様に拠点化しているのかな?」

「おや、小娘。いや、君はどうやら聡いようだな。
 その通りだ、メインではないがここはサブの拠点となっている。
 本来ならばメインの学校を拠点に街全体に精気を吸収する陣を引いたが、
 君たちの努力と代行者がまさか昼間から拠点を強襲するとは思わなくてね、だからこうしてここで顔を見せたわけだ」

四季、いや口調が変わったからロアかもしれないが、弓塚と比較すればどちらが勝つかは明確だ。
たかが数日で吸血鬼になったばかりの弓塚よりも、幾百年もの歳月を過ごした元凶の吸血鬼の方が勝つのが子供でも分る。
それに、眼の前の男は俺と同様にあの死の世界が『視えて』いるのだから。

「たしかにこれじゃあ、ボク1人じゃまけるね」
「ほう……」
「弓塚っ!!」

弓塚はあっさりと自分に勝機がないことを表明した。

「けど、時間を稼ぐことぐらいは出来る。
 それに――――勝利のカギは既にこちらの手札にあるから」

「はっ!笑わせてくれる!!勝利だと、この私にか!!」

侮るロア、しかし弓塚はどこまでも冷静で、

「だから一緒に戦いましょう――――アルクェイドさん」

刹那、ロアが吹き飛んだ。
いや正しく表現すると体が地面ごと真空の刃に八つ裂きにされて、
肉片と贓物をまき散らしながら飛んでいったと言うのが正しかった。

「ようやく、会えたわねロア」
「アルクェイド…」

そして、それはアルクェイドによるものだった。
何か言おうと思ったが彼女が纏う空気に気圧されて辛うじて名前を口にすることしかできない。

俺が知るようなア―パーな空気は消えうせており、
ネロや暴走した弓塚の時よりもずっと、殺意と敵意をまき散らしていた。

けど俺は『視た』、死の線はアルクェイドの全身に走っており、
まるで継ぎはぎだらけの人形を無理やり動かしていたようなもので嫌な予感しかしない。

「アルク、ェイド」
「ん、志貴。私は大丈夫だよ」

くるりと振り返ると何時もの笑顔を見せる。

「私は死なないよ、だって私は吸血鬼だもん」

――――嘘だ。

「やだ、志貴。泣きそうになっているじゃない。
 それに今の私にはさっちんもいるし大丈夫大丈夫」

それが、嘘であることは俺にも分った。
たしかに2人掛かりならば元凶の吸血鬼を確実に殺せるだろう。
けど、アルクェイド・ブリュンスタッドもそこで限界を迎えてしまう。

認めない、認めてたまるか。
アルクェイドをほっといてたまるか。
弓塚といいどうしてこのア―パー吸血鬼は黙って自分で解決しようとするんだ。

「く、くは、くはははははは!!
 弱体化したとはいえやはり真祖の姫はそうでなくてはならない!!
 堕ちた魔王を一切の慈悲を持たず、蹂躙し、殺戮する破壊と恐怖、まさしく真祖の姫だ!!」

そうしているとバラバラになったにも関わらずロアが再起して起き上がる。
全身血まみれで重症であったが、歓喜に震えていた。

「志貴、じゃあ行ってくる」
「おい、待てっ……アルクェイド!!」

そして、彼女は行ってしまった。

「にい、さん……」

暗闇に時折吸血鬼の爪がぶつかり合い、
火花が散る光景の最中、胸の中にいる秋葉が小さく囁いた。

「兄さん…ごめんなさい、すべて、私のせいです。
 弓塚さんがああなってしまったのも私が四季を殺さなかったから……」

「あき、は」

秋葉はいつもと違いとても弱弱しく言葉を綴った。
まるで、昔の秋葉のように涙を流していた。

俺はどうするか?
怒るか?許すか?それとも?
その答えはもう決まっている。

「秋葉、弓塚を傷つけた事も秋葉が暴走したこと、俺に黙っていたことも俺は怒っている」
「…はい」
「よし、だから後で弓塚に謝って許してもらえ」
「は?」

俺の言葉に秋葉は呆けた声を出した。

「秋葉は家族だろ、だから俺は許すから後は弓塚に謝るだけだってことだよ」
「兄さん……でも、弓塚さんは、」
「大丈夫。俺がなんとか――――っう!!」

そうして立ちあがろうとするが体が重い。
四季に向かおうとすると体から力が抜けてゆく。

「兄さん!!あなたの体は本来ならば8年前に死んでいたようなものです!
 あの時私が混血の能力で命を分け与えたから辛うじて動いているだけなのですか!
 しかも、唯でさえボロボロなのに同じく命を分け合っている四季に向かおうとすれば死んでしまうかも知れません!!
 お願いです……私は、家族が死んでしまう所なんて、もう見たくないのに。どうして、どうしてそう無茶をしようとするのですか…」

服を掴み秋葉が必死に懇願する。
ああ、まったく自分が駄目な兄なのは秋葉の顔を見ればわかるし心が痛む。
本当に俺は心配ばかりかけている――――けれども俺の決意は変わらない。

「俺は秋葉もそうだけど、あの二人も俺の日常にいてほしいだけなんだ」

友達だからクラスメイトだから、殺した責任をとるためじゃない。
隣にいてほしい、何事もない日々を共に過ごしたい、ただそれだけ話だ。

「………………わかりました」

俺の話を聞いて秋葉は顔を下に向けたが、
何かを決意すしたのか俺に顔を近づけて――――ちょ!!あき…!!

「んぐ……」

秋葉の唇が俺のと重なった。
混乱して離れようにも両手を首にまわしてしっかり固定されているせいで離れない。
秋葉と密着しているせいで女性特有の甘い香りが鼻だけでなく、身体全体を刺激する。
特に胸がアルクェイドのようにたわわには実っていないが、柔らかいだななんて一瞬考えてしまった。

さらに秋葉は舌をねじ込んで来る。
俺はあまりに唐突だったせいで思考が追い付かずただただ為されるがままであった。

くちゃ、ぺちゃ、と水音がしばらくする。
内心で相手は秋葉、相手は秋葉と念仏のように唱えるが、
悲しいことか男として身体は徐々に興奮しつつあり、理性が劣勢に陥りつつあった。

が、幸い状況が状況であったのと、
秋葉は俺が狼に成る前につぅ、と唾の糸を引いて離れた。
……というか俺はこんな時によりにもよって秋葉に興奮していたのか!!

「あ、あああああ、秋葉、あの、その」

いや、別にキスなんて初めてではない。
むしろ中学生の時キスどころかに朱鷺恵姉さんに……よし、忘れよう。

「ふふ、真っ赤ですね兄さん。
 別に気にしなくても大丈夫ですよ――――私は兄さんを異性として慕っていますし」

「へ――――?」

慌てふためく俺が可笑しいのか秋葉はクスリと、妖艶な笑みを浮かべた。
妹でしか認識していなかった女性からの告白、という事態に俺はどう言えばいいかわからなかった。
というか、今日は驚愕の事実が判明しすぎていい加減俺の思考がパンクしそうだ。

それにまさか、秋葉が異性として俺を慕っているとは、
明日どんな顔で秋葉と会えばいいんだ?毎日顔を合わせるというのに……。

しかし、たしかに昔から秋葉は綺麗な子だったけど、
こうして見るとやっぱり美人になったんだとつくづく思う。

理想の和風美人風に顔立ちは整えられ、いささか気の強いお嬢様であるが、
気品があるし例えアルクェイドよりなくてもスリム……いかんいかん俺は何を考えているんだ!

…って、秋葉!!

「命を分け与えましたから、これできっと――――ぐっ……」
「何を言っているんだ秋葉!!顔が真っ青じゃないか!!」

前より明らかに顔色が悪くなった秋葉が倒れそうになり、
俺は慌てて秋葉を抱きとめようとしたが、秋葉は眼を見開くと俺の手を払い叫んだ。

「兄さん!!あなたはアルクェイドさんや弓塚さんを助けたいという思いは嘘なのですか!?
 兄さんは私を心配する余裕なんてないはずです!!はやく兄さんは過去との因縁を絶ちに行くべきです!」

秋葉の言葉が胸に突き刺さる。
そうだ、秋葉が俺のためにここまでしてくれたのに、こんな所でじっとしている暇なんてない。
身体は確かに動く、むしろいつもより調子がいいくらいだ。

「ありがとう、秋葉――――――絶対に帰ってくるから」

「ふんだ、さっさと行ってください。
 じゃないと弓塚さんに謝れないじゃないですか」

そして俺は死闘を演じている場所へ駆けだした。
ふと、後ろを振り返れば俺を見届けた直ぐに秋葉はぐったり地面に座っていた。

ありがとう、秋葉。
だから、必ず2人を助けて日常を取り戻す。

そう決意を新たにして全てを終わらせるべく2人の元へと走った。




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アニメ感想 蒼き鋼のアルペジオ 第5話「人ならざる者」

2013-11-09 22:17:44 | 日常

今回は前回生き残ったハルナ、キリシマがメインのギャグ回でした。



初っ端から人のあとがついた穴ww



ふぅ・・・



コートを幼女に返してもらえず泣く大戦艦の図



ハルナ「シャキーン」



ハルナ「おまえたちから見て、服装はどうすればまずくない?」
いえいえ、むしろそのままでww、というか良く見たらパンツにバラが飾られているな・・・



そして始まる定番の着せ替え&髪形変えタイム、パーフェクトだ刑部蒔絵。



一度、眼が離れた隙に霧の艦隊として行動に出る2人であったが、
マナマテリアル不足でとりあえずコアをその辺の縫いぐるみに詰め込んで動くキリシマであった。




蒔絵  「駄目ですよーニンジンを食べないと大きくなれませんよー。はい、与太郎」
キリシマ「そっか、こいつ与太郎っていうのか…」


そんな餌に釣られてたまるクマー

蒔絵  「え?」
キリシマ「あ」
ハルナ 「…キリシマ、縫いぐるみはニンジンを食べない」




ハルナ 「それ、あげる」
キリシマ「ちょ、おま」
ハルナ 「色々してもらったお礼」
キリシマ「あのーもしもしハルナさん?」

そしてなんとか誤魔化したが、仲間に売られるキリシマであった。
ここでニコ動では賠償艦やらなにやらコメントが集中する。




●REC



定番の風呂シーンを終えた後に元祖駄メンタル、もといチョロイン登場!

タカオ「見えた!硫黄島、予定通りあの人の船より先回りね!」
硫黄島「だが断る」
タカオ「ぎゃふん!?」


キリシマやハルナもそうだったけど、
メンタルモデルが負けるとみんなギャグ要員になるのですね(白目)




蒔絵を寝かしつけた後に、
この屋敷の主が振動弾頭を開発した刑部藤十郎であることを知っていたので、
資料を奪うべく密かに行動するが本人自ら招きよね、歓待されて戸惑うが博士は語る。

曰く、本当の開発者は蒔絵であの子はかつて自分が人間を超えるべく作ったデザインチャイルド。
蒔絵は期待通りの活躍をしあたが、その能力を恐れた政府によりここに押し込められ、なおかつ新たにデザインチャイルド
を作り、蒔絵を『処分』しようとしたため自分の死を偽造することで蒔絵の価値をあげた上でこうした見守っていたと告白。

そして、どうか蒔絵の友達になってほしい、と父親として頼まれ迷うハルナであったが




政府がメンタルモデルと接触したことを受けて『処分』しに来たとこで終わり、次回の活躍に期待しよう。


以上です、今回は前回のような戦闘パートはなかったですがサービス回として楽しませていただきました。
ですが、逆に次の展開が気になってしかたがありません、ハルナの選択肢は?チョロイン、タカオの行方は如何に?

そして、変更されたEDテーマ。
前もそうでしたけど海をモチーフにした映像は作品のテーマとあっていてグッド。
次回も全裸待機いたします!!




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おススメSS 【境ホラ、ネタ的習作】 境界線上のホライゾン・シャッフルズ!(益荒男版)

2013-11-06 22:49:52 | おススメSS
【境ホラ、ネタ的習作】 境界線上のホライゾン・シャッフルズ!(益荒男版)

理想郷のSSを紹介します。
お題は「境界線上のホライゾン」でもしもの改変ネタで、
『もしも、主人公である全裸馬鹿が三征西班牙に所属していたら?』というネタであります。
一話一話は短いですけどこれまでなかったネタでかつ、文章も面白く書けていておススメです。

なにせ1話から


そして最も重要な相違点は……ゴッドモザイクを装着してないということだ!

つまり、ベッドを思う存分に占有して大の字に寝るトーリの脚の間には、立派な”マスラヲ”がそそり立っていたのだ。
いわゆる漢の生理現象、モーニング・スタンドという状態である。

そのワイルドかつ開放的な寝姿は、本来は断じて余人に鑑賞させるためのものではない。


正真正銘の全裸でごらんの有様だよ!
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第16話「吸血鬼」

2013-11-05 23:31:29 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「初めまして、私は遠野秋葉と申します、いつも兄がお世話になっています」

意外過ぎる人物の登場にボクは動揺を隠せずにいた。
というのも、そもそも【月姫】においては彼女がこうして外に出て積極的に関わることはなかったからだ。
その上、彼女を主題とした遠野秋葉ルートは結局の所遠野家内部で始まり、完結する話であった。

…まあ、弓塚さつきに至ってはルートによっては人気があるモブで一生を終えるか、
そもそも冒頭部分で出て終了か、目玉の部分では吸血鬼化して志貴を襲った挙句に返り討ちにあうのだが。

そして、どうして彼女がここに居るかはわからない。
少なくても友好を交わすために来たわけではないそうだ。

「秋葉さんでいいかな、こんな時間に何の用かな?」

だが、こうして現れたことは話し会う意思があるはずなので、とりあえず会話を試みる。

「はい、弓塚さん。本日こうしてやってきたのは――――貴女を殺すために来ました」

直後無数の赤い、
うっすらとした糸の様な物が襲いかかってきた。
――――というか、このナイ乳妹いきなり抹殺宣言ですか!?

「っぅ!?」

地面を蹴り、横へ跳ぶ。
刹那、先ほどまでいた地点に赤い糸が幾重にも包み込み、
ジュウジュウと音を立てて熱が奪われ、冷えた空気が流れる。

間一髪だった、
【原作】として知っていたから良かったけど、
もしもあのまま踏みとどまり迎え撃とうなんてしたら、
今頃体中の体温が奪われ、よくて全身大火傷を負っていただろう。

遠野秋葉が混血の能力として有するのは「略奪」系の能力。
簡単に言えば視認した対象から熱を奪う能力だが、対象は無機物、
有機物のどちらでも可能で、最悪対象を気化させてしまう程の凄まじい火力を有する。
これを最大限発動させた、略奪呪界「檻髪」は対象を自動探知し、対象を抹殺することが可能だ。

彼女を主題としたルートでは、この能力で教室に隠れていた志貴の足を潰した後に殺したり、
逆に足や腕が潰されても、七夜モードに突入した志貴に首をはねられたりと実に型月的展開を繰り広げた。

そんな危険極まりない代物からこうして逃れられたのは、
ボクが吸血鬼になり霊格が向上し、人のころには見えなかった霊視が可能となったので、
その能力が赤い糸として見えたからである。

閑話休題

「一体全体、どういうことですか!?」

初対面でいきなり殺しにかかってきた理不尽さに叫ぶが、
当の本人は澄ました顔のままであった。

「どうしたこうしたも、決まっています。
 これ以上兄を、兄さんを私と同じ夜の世界に巻き込ませないためです」

残念ながら相手は聞く耳を持っていなかった。
しかし、彼女が言っている内容は肉親ならでわの切実な願いであった。 

「無論アルクェイドという名の方もです、
 ようやく、ようやく過去との因縁が切れて兄さんと一緒に暮らせるようになったのに、
 例えそれが兄さんの意思で貴女達を手助けしているとしても、これ以上兄さんを巻き込むわけにはいきません」

自分より歳下にも関わらず威圧感を纏いながら、
じゃり、じゃりとブーツを鳴らしてゆっくりと間を詰めている。

「突然こんな事を言われて、理不尽だと感じるのは当たり前です、
 恨まれて当然なのは分っています、何せ私は貴女を殺すのですから。ええ、憎んでもまったく構いません」

そして一拍置いてから遠野秋葉は言った、

「ましてや貴女は私と同じく魔、だから――――」

瞬間、遠野秋葉の姿が消えた。
いや違う、消えたのではなくて移動しただけ、現に彼女は既にボクの眼の前にいた。
とうか、この人混血だとしてもなんでこんなに早いんだ!?

「――――うぐぅ!?」

不意を突かれ、胸に強力な一撃を受ける。
骨が軋み、衝撃が殺しきれず後ろへ飛んでしまう。

「さあ――――逃げてごらんなさい!!」
「っ――――――!!」

地面に転がり、
起き上がる間もなく次の攻撃。
彼女の真っ赤に染まった髪が自分を囲むように公園に広がる。

「くそ!」

そして回避する間もなくそのまま覆い尽くされようとした。



※ ※ ※



アルクェイドは静かに寝息を立てて寝ていた。
元々彼女の造形、と言うのも変だが人よりずっと美人なせいか、
その姿はまるで呪いのリンゴを食べて眠りにつく姫のようで美しかった。

「アルクェイド…」

彼女が眼を覚ました時、俺はなんて言葉をかけるべきだろうか?
安心しろ、とか大丈夫とかそんな言葉では通じないのは見えている。
起きて俺が追いかけて来たのを知ったら、きっとまた逃げ出すに違いない。

「くそ、このア―パー吸血鬼。自分勝手なのはおまえの方だろう」

巻き込みたくない?
だからどうした、それがどうした?
それらを一切合財承知の上でアルクェイドと一緒にこれまでいたんだ。

たしかに、始めは戸惑った。
なんで俺がこんな世界に入ったんだろう?
なんでこの夜の世界に違和感なく自分が入れたのだろう?

けど、今はどうでもいいことだ。
たぶん、俺は世間一般の人様と比較すれば異常な人間の類だろう。
何せ義務感に襲われているから、とかそういった理由はなく単純に一緒に居てやりたいなんて。

だけど後悔はない。
こんな「眼」を持って絶望したあの日、
先生が言った通りこんな俺でも俺なりに生きてゆこうと決めたんだから。

だから、逃げずにアルクェイドと話そう。
もしも彼女の方から逃げるのであれば俺はどこまでも追いかけてやる。

「おい、アルク――――」

そこまで言いかけた刹那、背筋に走る悪寒。
続いて爆発音が公園を轟かせた。

「な、なんだ?」

強い風が公園を吹き抜ける。
秋とはいえ、妙に冷たい空気が肌を刺激する。

「まさか、ロアなのか!?」

瞬間、この場にいない弓塚の顔を思い出しながら、
自然とナイフを手にして走り出した。



※ ※ ※



タン、と着地する音。
【原作キャラ】から与えられた絶体絶命のピンチを乗り越えて、
こうして地面に足をつけることが出来るとは、我ながら褒めてやりたい。

が、

「あ――――はぁ!はぁ!」

空気が熱い、吸い込むごとに喉が焼きただれるような痛みを覚える。
筋肉痛ではなく、振りほどいたとはいえ喉に彼女の「髪」が巻きつかれ、火傷を負ったからだ。

ハッキリ言って遠野秋葉の強さは想定外だ。
軽業師のように何とか攻撃をかわしたけど遠距離攻撃が得意な上に、
近接攻撃も、見た所シエル先輩に程ではないがそれでもなお、強力な一撃を出してくる。

そして、既にここは彼女の庭と化している
逃げようにも即座に捕捉されてしまうだろう。
やるとしたらそれこそ、彼女を殺すつもりで掛らねば。

――――ドクン、

殺すつもり、
その単語でぞわりと黒い衝動が湧く。
言葉通り、このままあいつを殺してしまえという衝動。

頭痛がする、アタマがイタイ。
脳が血を以て喉の渇きを満たせ、と騒がしい。

こんな時に吸血衝動が出るなんて最悪だ。
血を吸う事だけしか考えられず、思考する事、自己を維持する事ができなくなりそうだ。

「……さて、まさかあそこで逃げられるなんて。どこに逃げたのかしら?」

公園の草むらの間から覗く、距離にして20メートル程だろうか?
暗闇にぼんやりと浮き上がる人影はそう呟いた。

たしかに、正直自分でも驚いている。
あの熱気に囲まれる瞬間自然と後ろに跳躍していた。
喉にまきつかれたけど一度だけの跳躍にも関わらず、ここまで距離をとれたのも吸血鬼の肉体のお陰だ。

考えて見れば、機動力は此方が上だからきっと彼女を…。

――――彼女を殺せる。

「ち、違う!殺したいなんて――――」

自分の声だけど、自分じゃない声が聞こえた。
加えて頭痛が倍加してゆき、アタマ、頭が痛くて気が狂いそうだ。

「さすが西洋の魔、ヴァンパイアといった所かしら。こちらの動体視力を上回るなんて」

ゆらゆら、と蜃気楼のような物を漂わせながら何か言っている。

けど、こちらはそれどころではない。
いつになく強烈な吸血衝動が際限なく肉体と思考を蹂躙する。
ガチガチと歯を鳴らして、肩で息を吐くような有様であった。

「でも、今度は油断しないわ」

広々とした公園では睨むだけで攻撃できる彼女の方が有利だ。
このまま隠れて密かに公園の外に逃げようにも、物音を一つでも立てた瞬間。
周辺の草むらごと熱を奪われて蒸発してしまう確率の方が高い。
だから、なんとか息を殺して逃走する機会を探っていたが、

「まずは――――そうね。その素晴らしい逃げ足を潰してあげる…!!」

遠野秋葉の瞳が確かにボクを真っすぐ捉えていた。
月と街の僅かな明かりを除けば碌な照明がないにも関わらずこっちを見ていた。
反則だ――――息を殺して潜んでいたのに、まさか赤外線でも搭載しているのだろうか!?

そして、立ち上がりとにかく駆ける。
が、それよりもずっと早く彼女が纏っていた蜃気楼がゆらり、と動く。

「――――くっ!?」

ジュ、と焼けるような音と痛みが足首に走る。
身体が硬直しそうになったが、走る意思を無理やり足に伝え、地面を蹴る。
そのお陰か飛ぶというより飛翔する、といった言葉が似合う程の速度で走れた。
さらに足元から赤い髪が纏わりつこうとしたが、振り切る。

「この――――」

遠野秋葉の忌々しげな呟きが聞こえた。
が、こちらも正直厳しい。

「…いつっ!?」

脳髄の痛みがさらに激しくなる。
逃げることに集中することができない。
そして、あっさりと終わりを迎えた。

「つかまえた」
「なっ!?」

眼の前に赤い壁があった。
いや、これは遠野秋葉の能力である赤い糸でできたものであった。
最初からこちらに逃げることが読まれていた…っ!

「ああああぁぁぁぁ!!!」

地面に着地した足を回転させ、
踵でブレーキをかけるが間に合わず真正面か突っこんでしまった。
体温が奪われる痛みに苦しみ、口から絶叫が響く。

痛い痛い痛い痛い痛い!!!
熱が奪われてゆくというより身体が溶けてゆく。
足を止めたところでさらに赤い糸が身体に巻き付き無様に地面を這いつくばる。

時間感覚が失われ、どれだけ立ったかはわからない。
ただ、身体が溶けるような感覚しか感じられない。
五感が感じられず自分がどうなっているかすらも徐々に怪しくなってきた。

「ぉ……」

もしかするとこのまま、死んでしまうのか?
この世界で得た弓塚さつきとしての人生はここで終焉を迎えるのだろうか?

元より半ば借り物のような人生。
例え生き延びても吸血鬼として永き修羅の道を歩まねばならない――――ならばいっそ。

――――いや、こんな所で死んでたまるか!!

「あ、ああああああああああ!!!!」

地面に這いつくばっていたが、
足、腰、腕、の全身で地を蹴り、飛ぶ。
戦わねば生き残れない、ならば目指すはただ一人、遠野秋葉!

「この死にぞ来ないが――――!!」

遠野秋葉がボクが襲いかかって来たのを見ると、
真っ赤に染めた赤い髪を真っすぐボクに突いて来た。

飛びかかるボク、そして地に足をつけて迎え撃つ彼女。
どちらが狙いやすく攻撃が当たりやすいかは自明の理であった。

赤い糸がボクの眼を貫こうとする。
1秒以下の刹那の時間の間に刻一刻と迫ってくる。

気休めだけど、身体を捻りそれ以上焼かれないようにして、
回転しつつ、爪を伸ばした手を彼女に向けて腕を大きく振り抜いた。

鮮血が舞った。

鋭い刃となったそれは、遠野秋葉の片腕を切り落とした。
こっちも片目が派手に焼かれて、たんぱく質が焦げた嫌な臭いが出た。
さらに、正面から遠野秋葉に突っこんだためお互いぶつかり2人して地面を転がった。

「う、ぐ…」

またもや公園で転がったせいで土まみれになってしまった。
視界は片方しか存在しなかったが、幸い感覚が相当麻痺しているのか痛くはない。

「げほ!!ごはっ、げほ、げほ!」

直ぐ近くで遠野秋葉が胸を押さえてせき込んでいる。
吸血鬼の力を全開にして真正面から衝突したから、もしかするとアバラ骨の何本かは折ったかもしれない。
おまけに片腕を一本ボクが切り落としたから、鮮血が地面を染めていた。

けど、ボクはその前に全身の熱を奪われ、
危うく蒸発されかけた上に、片目が見えないし頭がクラクラする。
いくら吸血鬼の力で回復するとはいえ痛いものは痛いし動けないものは動けない。
このままだと、どっちが先に動けるかが勝負となるけど、意識が遠のく。

「……あ、あき、秋葉、なのか……?」
「え――――に、兄さん?どうしてここに!!?」

遠のいたが志貴が来たことで眼が覚めた。



※ ※ ※


そこはひどい有様だった。
草木は涸れ果て、周囲に破壊と殺意の惨場が残っていた。
そして、そんな場所の俺がよく知る2人。それもあり得ない組み合わせでいた。

「秋葉!!その腕はいったいどういうことだ。ここで弓塚と何をしていたんだ!!」

秋葉は公園の土を浴びたせいで全身埃まみれな上に、
黒く日本人形のように綺麗で長い髪はボサボサで、何時ものお嬢様のような清楚な姿をしていなかった。
おまけに片腕を欠落しており、血が絶え間なく地面を汚しているし他にも怪我があるようで顔色が悪かった。

「え、それは、その、いっ―――!」
「おっと―――おい、秋葉!秋葉!」

立ち上がれないのか地面に座り込んでいた秋葉が倒れる。
俺は慌てて秋葉に駆け寄ると倒れこむ寸前に受け止めることができた。

「秋葉、説明してくれないか。どうしてこうなったのか?」
「……………………」

秋葉は何も話さない、
ただ俺の胸元を掴んで潜るように顔を埋めたままだ。

「やっぱ志貴は主人公だね、こんな時に来てくれるなんて」
「弓塚!!おまえは大丈夫なのか!?」

対して弓塚も意識はあった。
けど、起きるのが辛いのか寝転がったままである上に、
よく見れば片眼が回復しつつあるとはいえ焦げていたし、全身に火傷を負っていた。

喧嘩なんかレベルじゃない傷を2人は負っていた。
てっきりロアが来たのかと覚悟していた俺はこの事態に正直俺は混乱している。
どうして二人が殺しあうような事態になったか聞かなければ…。

「え?」

そこまで考えた時点でふと気づくと、正面に誰かが立っていた。
今の視線だと影しか視認できなかったが、そのシェルエットは先輩やアルクェイドではないのはたしかであり。

「よぉ、シキ。久しぶりだな」

顔を上げれば過去と対面した。
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西住「飛んで!あんこう!」 (ガールズ&パンツァー×沈黙の艦隊) その2

2013-11-03 22:52:28 | 習作SS

アナポリス大学付属サンダース高校チーム――――旗艦、護衛空母『カサブランカ』艦橋

「護衛駆逐艦より伝達、方位1-6-2、距離約2000、浮上中」

発光信号を読み取った隊員が報告する。

「へえ、自分たちの位置がばれて、慌てて動き出したと言ったところかしら?」

サンダース高校対潜部、隊長のケイが呟く。
急速潜航でも無音潜航ではなく、浮上ということは魚雷発射可能な深度まで上がり反撃するつもりのだろうか?
今年初めて出場した弱小学校だけど、なかなかいい度胸ね大洗女子学院は、けど無駄よ。

「全艦に告ぐわ、大洗の潜水艦が浮上中。
 これよりフォーメーション、ナイアガラ・フォールズを発動するわ!
 各艦、ナイアガラの滝のように派手に海中をかき回しなさい!」

40隻の艦隊が一斉に動き出す。
中央に護衛空母2隻が単縦陣を組み、
その両脇から空母の前方で駆逐艦が交差するように機動する。

海中がかき回され、音が乱反射を繰り返す。
潜水中は聴音頼りの潜水艦にとって耳が塞がれたに等しい。

「アベンジャーズ!駆逐艦の攻撃が終わったらありったけの対潜魚雷をブチ込みなさい!」

TBFアベンジャーが頭上を通過する。
ずんぐりとした機体は航空機の割にはぽっちゃりしており、スマートな印象を与えなかったが、
代わりに頑丈さは指折りで、翼には対地ミサイル、腹には対潜誘導魚雷と、凶悪なデブであった。
そして、それが合計24機。頭上を旋回しており、今か今かと待ち構えていた。

「さて、」

どう出る大洗女子学園?
左右に逃げてもすかさず駆逐艦のヘッジホッグをお見舞いするし、
アベンジャーの対潜魚雷に、爆雷だってプレゼントする用意はしてある。

けど、率いるのは潜水艦道の名門である『あの』西住流の次女。
聞けば前は黒森峰に居たというらしい、ならばその実力は本物なのは間違いない。

でも、どうやってこの窮地を乗り越えるのかしら?
さあ見せなさい、貴女の実力を。



※ ※ ※



「海面はぐちゃぐちゃだ、もう艦と位置の識別ができないぞ」

聴音機を回している冷泉麻子がぼやく。

「西住殿、これはもしかして…」

「はい、秋山さんの考え通りです、
 これは恐らくサンダースが得意とする攻撃隊形『ナイアガラ・フォールズ』です」

秋山優香里の疑問にみほは答え、続けて角谷杏が補足する。

「対象を発見次第、識別されないようにジグザグに航行。
 大まかな位置を囲い込むように40隻近くの艦艇による一斉爆雷攻撃。
 止めは航空機からの誘導魚雷の散布、まったくウチと違って随分と贅沢だねー」

「しかし、会長。もしも攻撃が外れたら爆雷の爆発で発生したエコーでしばらく海中の音が拾えないのでは?」

河嶋桃が常識論を論じた。
が、やや顔が強張っているのを見ると、
相手が圧倒的であっても所詮数だけだと、
緊張とストレスで藁をも掴みたい気持ちで否定したいようだ。

対潜道における基本は聴音による潜水艦の発見から始まる。
海中の異音を拾い、それから場所や距離、深度を徐々に特定させていく。
が、潜水艦を攻撃する爆雷は海中の音を乱してしまい、その間に潜水艦に逃走するのがセオリーであり、
ましてや、合計40隻近くの艦船から投下される爆雷の数を考えると一度外してしまえば、悠々と逃げれるはずだが、

「でも、桃ちゃん。この場合爆雷が投下される範囲が広いから、逃げられないかも」
「おまけに、爆雷はきっと全深度で万遍なく起爆するように設定いるぜよ」

小山柚子とおりょうが希望を塞ぐように反論した。

「う、たしかに……どうするんだ、西住?」

救いを求めるようにみほに視線を向ける。

「大丈夫です、大体の位置が判明されていても逆に言えば正確にこちらの位置が分っているわけではありません」

みほはそれに対してきっぱりと断言する。

――――でも、それは向こうの都合次第だけど。

もしかすると特定されているかも知れず、
100パーセントの確実ではないので、みほも内心では同じく不安であった。
しかし、艦長としてこうして平常心を装わねばならなかった。

「ん……これは、爆雷来るぞ。数多数、数えきれないぞ」

その言葉で緊張感が発令所に走る。
ついに、彼らは攻撃を仕掛けて来たのだ。

「このまま直進します!――――アップトリム20から最大!
 前部タンク全ブロー!皆さん、ここが正念場です。あんこうの能力を最大限引き出してください!!」

「了解!浮上角最大、前部タンクブロー!」

機関の振動と共にジリジリと角度が高くなり、
普通に立つだけでもつらくなり各々が自然と手元で掴めるものに掴む。

「さらに角度が急になります。全員、掴めるものに掴んでください!」

そして傾斜角は50度となり、海面へ向けて進撃した。
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