二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

幕間-Ⅱ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-05-09 20:32:52 | 習作SS

「なんだあれは!?」

基地から信号で敵の位置情報を受けて、ミーナたちがいるだろう地点へ移動する。
その最中、遥か水平線の向こうで大きな水柱が昇り、シャーリーが声を挙げる。

ふむ、たぶん<原作>のネウロイが墜落でもしたのか?
にしても、あの水柱はでかい。かなり距離があるはずなんだが。
無線は、通じるか?

「バルクホルンだ、繰り返す。バルクホルンだ。」
『こち―――z---り―――み――。』

相変わらず雑音しか聞こえない。
通信妨害型のネウロイがまだ近くでウロウロしているのか?
基地からはそういった報告はなかったけど。

「うっわ、何あれ。」
「おっきい。」

声につられてよくよく水柱が立った場所を凝視。
大質量の物体が墜落したため海面は水煙が視界を占拠しているが、収まりつつある。
白く薄い蒸気のカーテンの中から青白く輝く巨大な円形。ああ、メイン盾のシールドだな。

・・・改めて見ると本気ででかいな、おい。
Ⅰ期の時点で10メートルクラスのシールドを展開できるなんて、これなんてチート。
おまけに大質量かつ高速度で威力が上がった衝撃に耐えきれるとは。
さすが主人公といった場面か。

『リーネさん!!』
『おちつけ、ミーナ。宮藤が今リーネを拾った。』

ミーナと少佐の通信が入る。通信妨害から回復したようだ。
にしても、拾ったねえ。墜落したのか?<原作>と展開がまるで違う。
私が本物でないが故のバタフライ効果というやつなのかやっぱり、こうした誤差はどうして応じてしまうもだろう。

『む、バルクホルンか少し遅かったな。』
「ああ、すまない少佐。」
『気にするな、めったに陽動なんてして来ないから釣られた我々が悪い。』」

合流しつつもっさんこと、坂本少佐と軽く会話を交わす。
やはりこの人はいい人だ、もう終わったとはいえ部下に八つ当たりしないのは一見簡単でもなかなかできないものだ。
豪快で前向きな点は書類仕事が全然だめな所を除けば上司として理想的。ミーナが頼りにするのも分る気がする。

『リーネちゃん!リーネちゃん!!』
『宮藤さん・・・耳元でうるさいよ・・・。』
『私たちやったね!!やったんだよリーネちゃん!!』

続けて宮藤とリネットの声。宮藤がやけにテンションが高いです。
はて、この子も前向きな性格だったがここまで熱血だった・・・まあ師匠がもっさんだからそうか。
そして宮藤の方からちゃん付けで呼び合うことを提案して、リネットが遠慮がちに芳佳ちゃん、と呼ぶ。
嬉しいのか宮藤は尻尾を振りつつリネットの胸の中に顔を埋めるなどスキンシップをかます。
んで、リネット色っぽい声が聞こえる。自重しろ淫獣。

『あらあら、宮藤さん。』
『まったく、あいつは』

帰るまでが戦闘なのに注意散漫だが、誰も注意しない。
なざなら、こうしてじゃれ合うことができるのは今日生き残れた証しなのだから。
軍規を振りかざして止めるような無粋な真似はできない。

さて、と。
ほほえましい光景をいつまでも鑑賞しているわけにはいかないな。
いいかげん、大人だけの話をしようか。

「中佐、少佐。話があります。」

先に無線で呼びかけて2人に見えるようインカムを外す。
決めてはいないが、これだけで3人だけの、秘密の話し合いをする合図とわかる。

「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」

保護者の顔から神妙な顔つきでこちらに寄る。
位置も最前列の更に前に移動して、3人だけに。
他の幾人かが何事かと騒いだが、この様子から察してくれたのか距離を置く。

「トゥルーデ、一体なにかしら?」
「ミーナ、単刀直入にいうと。人型ネウロイはウィッチの死体を利用していた。」

回りくどいのは苦手だから、もったいぶらずにストレートに述べた。
反応はそれぞれだった。ミーナを眼を大きく開き、坂本少佐は「馬鹿な・・・。」と呟く。

しばし、沈黙。
ただ潮の香りがする風と夏に近い太陽がその場の空気を支配する。

「・・・たしかスオムスではウィッチを洗脳して利用したという話を聞いたけど。」
「ああ、考えてみれば脳を弄ることができるなら、肉体を弄ることもできるはずだしな。」

やっと口を開くが出るのは重たい話。
ああくそ、出した自分が言うのもあれだが、
10代後半の女の子にこんなことばかり言わせる状況には慣れたが、もやもやする。

「聞くがバルクホルン、そのネウロイはどんな感じだった?」
「ああ・・・。」

ふと、坂本少佐に話を振られてあの状況を思い出す。
肉塊とネウロイの黒いボディが混ざりあったリアルホラー、見てる側の精神を削るデザイン。
ゾンビものならいいがあれはそんなのではなく狂気じみた代物、クトゥルフ世界に出ても可笑しくないもの。

だって、

「・・・生きていた、」
「?」

固有魔法『バロールの眼』は『直死の魔眼』とほぼ同じ機能を持つ。
視界的に生命の根源が表示され、いつでも絶つことができる『点』と『線』で表現された世界。
触れれば何もかも壊してしまえるという中2的能力だが、その分の代償も払わねばならない。

『点』と『線』で表示されただけでも膨大な生命の情報を覗くことと変わりない。
それに対して脳が理解できなければたちまち暴走、ショートしてしまう。事実、転生直後に死にかけた。
が、対ネウロイ戦では『点』に当ててしまえばどんなに撃墜困難な相手でも落としてしまえるので最強の切り札となりえる。
何せ、装甲に覆われたコアを直接攻撃するようなものだから。

さて、この能力を持つオリジナルの1人は数えきれないほどの『点』を視認。
これにより相手が命のストックを保有する不死身に近い敵だということが分かった。
同じことは私にもできて、あのネウロイも複数の命が視認できた。つまり。

「生きていたんだ・・・ウィッチはまだ生きていた、ネウロイと一緒に。」
「待て、そんな・・・ッ。そうか、スオムスのは生きたまま操っていたから・・・ありうるか。」

瞳に映ったネウロイは極端に死にやすいのと、そうでないのと雑居状態。
本当に人かどうか確信が得られないが、素体が人間のものだから状況証拠的に片方は少女だったとしか言えない。
胸糞が悪い、生命の尊厳を踏みいじり兵器として利用する態度が。改めて思うとネウロイに殺意しかわかない。

「バルクホルン大尉」
「はっ」
「坂本少佐」
「うむ」

それまで沈黙していたミーナが軍人としての態度を見せる。
めったに聞かない重々しい口ぶりに私と少佐は緊張する。

「この件については緘口令を敷きます、
 バルクホルン隊は後に全員その旨を徹底させます。それと2人とも、軽々しく口にしないように。」

黙ってうなずく、こんな事実を隊員に公表すれば10割がた士気が下がる。
ローティーンの少女には刺激が強すぎる、しかもネウロイに利用され、生きたまま味方を攻撃するなんて事実は残酷すぎる。
いつかは公表せざるを得ないがしばらく黙っておいて、対策と情報収集に努めるが吉だ。

「・・・さて、これでこの話は終わり。今は帰りましょ。」

緊張感が消えてついほっと、ため息をつく。
今日一日で随分と精神が消費した気がする。帰ったらエーリカよろしくベットでいつまでもゴロゴロしていたい。
魔眼も使用して脳も疲れたから糖分を補給せねば。取られていなければ(犯人はいつも天使)チョコが部屋にあったはず。

「うむ、これで暗い話は終わりだ!
 ミーナ、バルクホルン、帰ったら風呂に入るぞ。嫌なことは全部忘れるんだ!」

「あら、わたしはちょっと・・・。」

「なんだ、体重のことやっぱり気にしているのか?
 別にミーナは年相応だから気にしなくて「バカ!この馬鹿馬鹿馬鹿―――!!!」おわっ!!?どうしたいきなり。」

ま~た痴話喧嘩か、まんま夫婦ですね。
んで、もっさんの鈍感っぷりは流石というべきか。見てるほうは面白いからいいけど。
ほほえましいな、こんな日がいつまでも続くといいな、本当に。


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幕間-Ⅰ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-05-05 18:54:59 | 習作SS

視点:バルクホルン 1939年 東プロイセン カイザーベルク

本日曇りなれども風弱し。
我が故郷、東プロイセンはバルト海に面してカールスラントでも最北端の街である。
古くはゲルマニア騎士団(チュートン騎士団)が本拠地を置いた場所であり皇帝家のホーエンツォレルン家ゆかりの地でもある。
それはこの街の名前から分るようにカイザーベルク、漢字と平仮名で直すと『皇帝の城』と一発で判明する。

前世は日本人であったが、今の私のアイデンティティーはカールスラント人。
ここで過ごした日々は故郷として親しみを感じている。だからこの街を守りたい気持ちに嘘偽りはない。

さて、話は変わるが。将校たるもの部下に対し常に厳格な態度で臨まなければならぬ。
そう士官学校でライフポイントが零になるまで叩きこまれたは今や昔。
卒業した直後同期の連中と「もう二度と久留米!」とはしゃいだのも懐かしい。

「にしても、」

こうやってその懐かしい場所に足を踏み入れるとは、
ウィッチ用の滑走路に機材、施設がそろっているという理由で基地として使うなんてね。
戦場に送りだすための魔女の学び舎が、戦場そのものに鎮座するなんて末期戦もいいところだ。
50年後あたりに学研で読むならともく実際に体験するのは正直嫌だな。

「失礼します。」

グルグル脳みそで思考を回転させていた所でドアがノックされ、人が部屋に入室する。

エディ―タ・ロスマン軍曹。

灰色の髪、背はとても小さくまさか自分より一歳年上だとは思えないほどで。
さらには、知らない人は多くのエースたちの『先生』だとは誰も想像できないだろう。
私もエーリカも、この人に随分お世話になったのも懐かしい。

「本日の訓練成果について報告書です、どうぞ。」
「ん・・・。」

手渡された書類に眼を通す。
指揮官とはただ戦場で武をかざすよりも、こうした事務仕事が多い。
所詮軍隊も官僚組織と分っていても面倒なのには変わらない。

何々、射撃訓練は場所が場所だから弾が腐るほどあるからよし。
次に基礎体力訓練、さらなる改善に努める、か。まあ、すぐにできるものでないから、しょうがない。
で、問題はやっぱりこれか。

「飛行時間か」
「はい、こればっかりはどうも。」

パイロットは一定の錬度を保つためには年100時間程の飛行が要求される。
しかもただ100時間ピッタリ飛んだだけではまだまだ足りない。数年継続して訓練してようやく戦力としてカウント可能に。

同じことは航空歩兵である我々にも言えて。
現在部隊の大半を占める私と同じ地元の新人隊員の飛行時間は合計平均80時間ほど。年90時間の旧東側諸国以下と来た。
通常、経験が深い隊員が一定数部隊内にいれば部隊全体の戦力はカバーされるが、現在ミーナと共に再編成か、別の部隊の中核として引き抜かれた。
10人中3人、私、ロスマン、オブレザーしか使いものにならない現状でもしネウロイが襲来したら。

「ベテラン組以外は出さない方針はどうか?」
「・・・それは、状況が許さないでしょう。」

まあ、だよな。
通常兵器では無理で、ネウロイに対抗できるのは唯一空飛ぶ魔女の我々のみ。
無断撤退は論外、妹が否、まだ大勢の避難民がこの街にいるのに逃げることはできない。
選択肢は来たら戦うのみ、それだけだ。

「司令部の予想とわたしたちの努力をを信じるしかありませんね。」
「そうだな。」

結局、駒である自分たちがあーだーこーだと考えてもどうにもならないわけだ。
努力しても根本的解決にはつながらない。再編成された部隊の到着まで来襲しないのを祈るしかない。

・・・ああ、いかんいかん。思考がマイナスへ傾いていた。
ロスマンの方も気持ち深刻そうな、いや実際深刻だから空気が微妙に重い。
ここは一つ、軽く何か言おう。

「何事も、起こらなければいいのだが。何とかなるだろう。」
「そうですか・・・?」

疑問を口にするロスマン。

「私がいれば大丈夫だ。愛しの妹達(新人隊員)はこのエース様に任せろ。」

言った途端、我ながら大した自信だと恥ずかしくなった。
重たい空気を払うため、つい調子に乗ったのは分っていたから、それが顔に出さないよう必死でこらえる。
何が私がいれば大丈夫だキリッだ。しかも新人を妹たちと比喩するなんてシスコン自重しろだ。
くそう、そういうキャラじゃないから余計に恥ずい。

「なるほど、それは頼もしいですね。」

口ぶりこそ普通だが、
このロリ軍曹、実にイタイ人を見るような眼で見てやがる。
ええ、分ってますよ。分ってますとも、そーいうのはエセ伯爵の領域ですから。
キャラが合わないのは分ってますよーだ。

「ぷくく・・・期待していますよ、中尉・・・。」

今度は生温かく見守る目線に変化してるし。
・・・ちくしょう、いいぜもっと笑え。笑いたければ笑いやがれ―――!!

「しかし、妹たちですか、
 みんなに中尉がいかに大切に思っているか教えてあげませんと。」

「え、ちょ、おま。」

えええ!?
あれか、私を羞恥心で悶え死ねと言うんかい。

「では、要件は済んだので失礼します。」
「まてやコラ―――!!」

私の叫びも虚しく、ロスマンは一撃離脱戦法を極めた者に相応しく素早く離脱。
この後、「姉ちゃん」やら「お姉さん」「お姉ちゃん」とか散々からかわれる羽目に陥る。
けど、こうして馬鹿ができる日々が如何に尊いものか。まだよくわかっていなかった。

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おススメSS 僕が一番セクシー(魔法少女まどか☆マギカ)

2011-05-05 14:15:07 | おススメSS

僕が一番セクシー(魔法少女まどか☆マギカ)

原作超改変ものです。魔法少女には誰一人たりともなっておりません。
100パーセントギャグと変態でこのSSはできております。

・ナルシストなキュウべえ
ガハラさん的変態ほむらちゃん
あたしってほんと馬鹿な安定のさやか
ぼっちなマミさん
ホームレス中学生あんこ
唯一の常識人にして女神のまどか

が織りなすオリジナルストーリー。
ノリ的に銀魂に近いかも、読むべし。


評価:ABCD

A

この作者のSSはギャクがうまい!
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501統合戦闘航空団の戦いⅡ-Ⅲ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-05-01 20:55:58 | 習作SS

視点:リーネ

『宮藤さん、リーネさん、お願い。ネウロイがそちらに向かっているわ・・・。』

海面の反射と混ざって銃器のマズルフラッシュを眼目に捉え戦闘を観戦していたが、
先行していた隊員の驚愕と焦りの声がインカムから聞こえ、ミーナの通信が入る。

「こっちにくるよ!」

宮藤の叫び。
ネウロイは米粒大の大きさから徐々に大きくなる。
リネットはミーナの通信と宮藤の叫びに釣られてトリガーをロクに照準に定めぬまま、引く。

対戦車ライフル独特のひと際大きな発砲音。

「・・・っ!!」

リネットはボルトハンドルを上げ、手元に引き。火薬が延焼した熱を保つ薬莢を排出。
硝煙の臭さが鼻につくがそれを意識する間もなく今度はハンドルを押して薬室を閉鎖。
薬室には新たな13.9ミリ弾がライフルの上部にあるマガジンから薬室へ装填される。

発砲、二度目の外れ

今度はボバリングの揺れでライフルの先がブレて弾を外した。
訓練の動かぬ的と違い、実戦の動く的に独自の緊張感が飛行の集中力を乱す。
三度目の正直とばかりに体にしみ込んだ装填の動作を実行。

先の2回よりも集中力を高めて、弾道を計算。
飛行魔法と射撃制御の魔法のコントロールがぶつかり、脳内修正を繰り返す。
訓練通りの理想的なコントロールができていなかったけど慌てず焦らずゆっくりトリガーを引く。

発砲、外れる。

「だめ、全然当てられない!!」

時間はない、ここで逃せば後がない。
逃せばネウロイは慈悲も情けも容赦もなく基地を蹂躙するだろう。
着任して短いとはいえ愛着はあるし、なによりも基地にいる戦えない人間を見殺すことはできない。
焦燥感が精神を侵攻し、絶望がリネットの心を暗く閉ざしかけ、

「大丈夫、訓練ではあんなに上手だったんだから。」

宮藤からの励ましの声。
けれどもリネットは励まされる事実が己の不甲斐なさを強調された気をした。

「わたし、飛ぶのに精一杯で、射撃を魔法でコントロールできないです・・・。」

リネットの言葉は後半に入ってからさらに小さく弱弱しく変化する。
やはり自分にはできない、そう諦めのマイナス思考が脳に染み込み。出撃のさいにあった自信が萎縮されてゆく。
しかし、宮藤芳佳はまだ諦めていないかった。

「じゃあ、私が支えてあげる。だったら撃つのに集中できるでしょ?」

リネットが返事をする前に宮藤は行動に移る。
高度を下げてリネットの足の下に回る込む。
戦闘中の突然の奇行にリネットは呆然としたが何をしたかったかすぐに悟る。

「ん・・・。」

股間に宮藤のこげ茶色の柔らかな感触を感じた。
布越しのくすぐったさにリネットはつい色っぽい声を小さく挙げる。

「どう、これで安定する?」
「あ、あ・・・はぃ」

股間の感触のもどかしさで顔が赤く染まる。
困ったように太い眉が下がるが、宮藤が支えてくれるおかげでボバリングは比べものにならないほど安定。
それに気づいたリネットは希望を確かに捉え、冷静さを確保し思考がクリアなものへと移行。

いける
これなら絶対いける!

「西北西の風、風力3。敵速、位置――-。」

しっかりとライフルを敵に向けて構える。
狙撃に必要な要素を声に出して思考をより狙撃に適したのへと暗示させ、銃と一体化する。
だが、足りない。正確無慈悲にその数値を叩きだしてもまだまだ外してしまう。

一体何がたりない?
一体何が足りない?

空戦の基本を思い出すんだ。
思い出せ、リネット・ビショップ!!

「そうだ、敵の避ける未来位置を予測して・・・。」

空戦の基本。
それは未来位置を予測してそこに弾を一度に叩きこむ。
言う事は簡単だがやるとなると経験則に依存する技術ゆえに非常に難しい。

大概人間は的を見て的に合わせて狙いを定める癖がある。
的が低速で二次元での移動なら簡単に予測できてしまうが三次元空間である空中はそうはいかない。
上下左右、のみならず広大な空間は無限にも等しい選択の自由を秘めている。

そんな高等技術を習得した者だけが5機撃墜から始まるエースにやっと成れて、
250機撃墜記録を保持し、今も更新を続けるスーパーエースのエーリカ・ハルトマンの後を追いかける権利を得られるのだ。

「宮藤さん!」

マガジン装填。
弾道修正、ライフルを持ち上げる。
リネット・ビショップの固有魔法は『弾道の安定と魔力付加』
念動力で放った弾丸をコントロールして、魔法力付加で威力と射程を底上げするという正に狙撃手向けの才能だ。
高い集中力を有するゆえに今の今まで訓練以外はまったく才能を生かせなかったけど、宮藤が支えてくれている。

「うん!」

リネットは心の中で叫ぶ。わたし、否。
わたしたちは一人じゃない。
2人合わせれば一人前で何があっても怖くなんてない。

「わたしと一緒に撃って!!」
「わかった!」

下の宮藤に機銃を撃たせて行動の範囲を限定させる。
この場合、予測して算出される機動は下は海面なので左右か上にネウロイは逃げる以外ありえない。
さらに、リネットはネウロイが100パーセントそれ以外逃げようがないタイミングを図り、一撃必殺を狙う。
ネウロイは先行したミーナ達に攻撃されたのとリネットに撃たれたのでリーネから見て微妙に十字軌道をとっている。

狙うは腹を見せることになる、体を斜め上に傾ける上昇機動。
だからリネットは視界の遥か先でネウロイが微妙に上に傾けた瞬間を逃さなかった。

「今です!」

口に出すと同時にライフルと機関銃が光を放つ。
重量60グラム、13.9ミリ徹甲弾の秒速747メートルの矢。
重量52グラム、12.7ミリ曳光弾の秒速780メートルの矢。
ちっぽけな金属の塊は光の軌道を青い空に曳き、人類の敵ネウロイに襲い―――。

リネットは見事に初戦果を挙げた。
ネウロイは宮藤の機銃弾を避けるため上昇した瞬間、大きく腹を見せる。
標的の面積が拡大した上にあらかじめ計算してリネットが放った対戦車ライフルの弾が黒いボディを貫く。
唯でさえ高威力だった上に固有魔法で威力が挙げられたため回復する余裕もなく、ネウロイは白く散り始めた。

「当たったぁ!!」

歓喜に解放感、達成感がリネットに満ちる。
彼女はようやく弱い自分という名の敵に打ち勝ったのだ。

「すごーい!」
「やった、やったよ。宮藤さんわたし初めて―――。」

喜びのあまり宮藤に抱きつく、
傍に他の隊員がいたら注意していたが、今この場にはいない。
こうしてはしゃいでしまうのは止む負えない。

けど。


『宮藤、リーネ、避けろォォォぉ!!』


けど帰るまでが戦闘というルールを分っていない。
油断大敵、戦場では僅かな隙を作ったとたん簡単に命を落とす。
ネウロイが崩壊しつつも海面を水切り遊びの石ころと同じく彼女たちに襲って来たのを見ていなかった。

「――――――!」

リネットは坂本少佐の声でやっと気づくが遅い。
瞬時に絶望へと叩き落とされ、悲鳴を挙げ―――。

「大丈夫」

リネットの視界に宮藤が現れ、ネウロイに立ちはだかる。

「私が友達を、リーネちゃんを守るんだから。」

それが数分間の連続した緊張の糸が途切れ、
リネットの薄れゆく意識が見届けた最後の光景だった。

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