二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

GATE~続いたネタ29 夢幻会、彼の地にて戦いけり

2016-05-03 18:25:36 | 連載中SS

東京 防衛省 

伊丹が元妻を庇っていたその時。
嘉納防衛大臣兼務特地問題対策大臣は状況が混乱しているのを理由に、
何とか伊丹と賓客を助け出す手立てを実行しようとしたが……。

「どういうことだ!!!」

『ですから、何もしないでください。
 少しでも動けば相手は約束破りと見做すと表明しているのですから』

電話の向こうの主、
北条総理大臣に対して周囲に憚らず怒鳴る。

『…中国が持ち込んだスキャンダルネタ以外のネタをアメリカは掴んでいた。
 もしもここでアメリカの言うことを聞かなければ与党は間違いなく大打撃を受ける』

「だからと言って、
 お姫様方をアメリカに案内するなんてアンタ分かっているのか!!
 講和の切っ掛けが今度はアメリカに全部奪われるんだぞ!その意味を理解しているのですか!?」

1度目は中国の圧力。
そして2度目はアメリカからの圧力。
独立国家でありながら2か国からの主権を蔑ろにする脅迫。
しかもこの一晩で2度、その事実に嘉納の神経は怒りで焼き切れる寸前であった。

『ええ理解しえいますよ嘉納さん。
 しかし、スキャンダルネタだけではないのです。
 アメリカはこの夜に起こった出来事の全て公開するつもりと言ってました』

「…っな!?」

この夜に起こった出来事をすべて公開する。
その予想外の考えに嘉納が驚愕の声を漏らす。
しかし即座にアメリカの考え、それも最悪の展開を見抜いた。

「…公開されれば日本政府と特地の要人との秘密交渉は台無しになり、
 アメリカは表立って特地の人間と堂々と交渉できるし、それを横取りしようとした中国の脅威を宣伝できる。
 ついでにアメリカを差し置いて門の向こうの日本と仲が良い生意気なジャップに一撃を食らわせ、身の程を分からせるという寸法か」

『野党は議会を無視した点を批判するだろう、能天気に。
 アメリカの狙いは特地の賓客と帝国日本とのコネクションを構築すること。
 そして、これが公開されれば政治的混乱と共に私の辞職は避けられず首脳会談は中止。
 日本国内の問題でありながら先に向こうの日本政府首脳と会談をするのはアメリカとなるでしょう』

「そこまで理解しているなら何を他人事のように言っているんだ!!
 北条さん、これは日本の面子を二重の意味で面子を潰されるだけじゃなくて主権の問題だ!
 この国が独立国家であるか否かが問われているんだぞ!ここは何が何でも抵抗しなくては……!!」

淡々とした口調でアメリカの真意を語った北条総理に嘉納がべらんめい口調と共に怒りを発する。
人一倍愛国心が強い彼にとって日本の自立が脅かされる状況に感情が制御できなかった。

何せ全て公開されれば「約束を破られ賓客すら守れなかった」という不名誉が負わされ、
挙句「国内問題を外国が関わる」という最悪の前例が誕生する寸前であるのだから。

『残念ながら今回は一緒に抵抗してくれる味方がいないのですよ。
 メディアは私を悲劇の総理ではなく「当然の無能」として喜々とバッシングするでしょうね。
 野党だけではなく後ろ玉を撃つことで与党内部の出世と栄達を狙っている人間も喜んで私を叩くでしょう』

「………っっっ!!!」

その光景が安易に想像できた嘉納が悔しさで受話器を壊さんばかりに握り絞める。
何せ今の総理は某半島の人間から言わせれば「歴史修正主義者」であり、国内メディアから言わせれば「独裁者」なのだから。

さらに、国民の代表という意識がなく議員の身分を一種の利権と見做し、
状況が変われば即座に後ろ玉を放つことで自身の議員としての身分を保とうとする人間。
その全てを嘉納をよくよく知るだけに状況が詰んだことを理解し、絶望に捕らわれた。

『ですが、幾つか約束させました。
 アメリカに特地の賓客を引き渡すのは状況が混乱している今ではなく明日以降。
 さらには引き渡し場所はこの夜に発生した襲撃事件を鑑みて即座に自衛隊が駆けつける場所。
 駐屯地が設置されている銀座の街で密かに行う、そして日本政府は【賓客の自由意志】を尊重する。
 賓客に対して日本の同盟国を紹介するだけであり、例え客人が断った場合日本政府はその意思を尊重する」

「北条さん、賓客の自由意志を尊重するってのは中国政府に一杯食らわせたのと同じ策だが…。」

『アメリカも引っかかったようですね。
 それとこの夜の騒ぎでで賓客が疲れて直ぐに帰りたくなるかもしれませんね。
 おや、丁度明日は銀座へ移動するならそのまま帰ってしまっても問題はないわけです』

「……………」

総理の狙いは明白だ。
『アメリカに抑えられる前に特地に賓客を帰還させよ』だ。
何せ賓客が『疲れて早く帰った』のであって、日本政府はその責任を負う必要はない。

と、そこまで考えた嘉納だが、
その策を受けたアメリカが「はい、そうですか」と納得するはずがない。
もう一捻りする必要がある、そうこの約束は文章に記載されない口約束、しかも密約なのだから……。

『私は辞職します。
 そうすれば密約を反故にしても、
 その後日本にペナルティは来ないはずです』

北条総理はまるでピクニックに行くような軽い口調で自らの政治生命に終止符を打つことを宣言した。

『それと獅子身中の虫も一緒に道ずれにする。
 証拠はアメリカと中国が寄越したスキャンダルネタ、これだけで行けるはずだ。
 そして私が辞めた後…この資料を貴方に差し上げます、うまく使えば党内部、官僚、政治家相手に戦う武器になるはずです』

「北条さん……」

これまで苦楽を共にしてきた仲間の覚悟を知った嘉納が喘ぐような口調でその名を呟く。

『太陽は沈み、また昇る。
 沈む太陽と私は共にしますが、
 昇る太陽は………嘉納さん、どうか日本をお願いします』

電話の向こうの人物はそう言い終えると通話は途切れた。
後に残り、そして日本の未来を託された嘉納はしばらく沈黙と共にする。

そして、時計の針が一周した所で音声が口から漏れ出す。

「……………やろう」

「だ、大臣?」

周囲で見守っていた自衛官が疑問符と一緒に問う。

「馬鹿野郎!
 北条の大馬鹿野郎!!!」

対して嘉納は周囲の目を忘れ、
罵声と同時に受話器を床に叩きつけた。





















コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« GATE~続いたネタ28 夢幻... | トップ | おススメSS エミヤ〔殺〕が... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
返信遅れて申し訳ございません。 (第三帝国)
2016-05-16 21:31:53
まずは気づかなったとはいえ、
返信を放置して大変申し訳ございませんでした。
以後注意していきます。

そして、似ているとの指摘されている作品について自分も知っています。
しかし、削除を求めたりする必要はないかと思います。
元ネタであるerath様の作品を害するような描写があれば別ですが、
そうした描写がない以上特に自分から言うことはありません。

元々自分のSS自体が二次創作ゆえに、
そのまた二次創作にまで厳しく言う必要はないのでは?
というのが自分の考えであります。


ご指摘ありがとうございます。


返信する
Unknown (憂鬱rom)
2016-05-11 21:28:40
投稿お疲れ様です。
今回も作者氏の作品を楽しませて頂き嬉しく思います。

実はこの度こちらに感想を書かせていただいたのは理由がありまして
どうしても作者氏に判断して貰いたい件が御座います。

それは、某所の小説投稿サイトに『GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり』に
良く似た描写が多いゲート小説を発見したからです。
最初の方はまだオリジナルと言えるのですが、途中から似た点を多々見受けられました。

以下に気になった点を記します。
・装備が東側系統であることに驚く。
・弾薬の量が非常に多く自衛隊が羨ましがる。
・アメリカ大統領はゲート向こうの勢力と友好関係を結ぶことを望む。
・中韓両国の工作によりホワイトハウス前でデモを行う。
・補給の空輸を要請したら、その機体を見て伊丹が驚く。
・外交官はゲート向こうの勢力は未来人、あるいは転生者に率いられることを伊丹レポートにより確信する。
・避難民を基地に連れ帰った際の伊丹と柳田の会話。

等が、自分の読んだ範囲で気になった点です。
穿った見方をすれば主人公の名前すらも嶋田さんを捩っただけに見えますが、
作品その物のインスパイアを多く受けた、或いは介入による動きを考えたら似たものになったとも言えなくは無いです。

とは言え、私が勝手に動いて騒ぎを起こす訳にもいかないので判断を仰ぎたく筆をとらせていただきました。
既に作者氏がご存知なら私の余計なお節介になりますし、向こう側にも迷惑掛かるので
一応この場ではその作品のタイトルは伏せておきます。
もしも覚えがなく、その作品のタイトルが知りたい場合はその旨をお書き下さい。

この件は混沌の掲示板に書くか、ハーメルンの作者氏のページに書くか、こちらに書くか迷ったのですが取り合えずご報告まで

長文失礼しました。
返信する

コメントを投稿

連載中SS」カテゴリの最新記事