おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「屈折率」 佐々木譲

2008年03月17日 | さ行の作家
「屈折率」 佐々木譲著 講談社文庫 (08/03/17読了)

 佐々木譲と言えばケーサツ物という思い込みがあったのですが、これは、ちょっと違うテイスト。元商社マン(場所の設定からして、恐らくは伊藤忠です)が、バブル崩壊後に経営不振に陥った実家の零細ガラス工場の再建に乗り出すというもの。私の中で、佐々木譲は今野敏と並んで、最近、最も安心して読める作家。さすがの筆力で550ページ近いストーリーもアッという間でした。昨日の夕方読み始めたら、やめられない止まらない状態に陥って、気がついたら2時半過ぎてました。お陰で、今日は、ちょっと睡眠不足です。

 ただ、イマイチ、しっくりこないのが、サイドストーリーの不倫。なんか、安っちいというか…。華麗なる商社マンだったのに、紆余曲折あって、零細企業の経営者になってしまったちょっと屈折したオジサマ的には、「こんなボクでも、若い女の子に愛されている」幻想に陥って自分の気持ちを慰めたいのでしょうが、「まあ、現実には、こんなに都合の良い女って転がってないでしょうね」と突っ込みを入れたくなるほど、都合の良い女が登場するところはトホホと笑うしかなかったです。もちろん、全然、無関係というわけではなくて、それなりに本筋には絡むのですが…。でも、彼女の代わりに、男性脇役を一人登場させることでも、補えないこともないと思いました。

 別に、不倫がいけないなんて説教をたれようというわけではないのです。ただ、せっかく、本筋が面白いのに…不倫女が登場するたびに、話がわき道にそれていって、気が散ってしまうのです。むしろこの部分を圧縮して、再建ストーリーを分厚くしてくれた方がもっと楽しめました。(ちなみに、同じ女性の脇役なら、勤続20年の経理のオバちゃんの方が断然魅力的でキュートです!!)


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