おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「ストーリー・セラー」 有川浩

2010年11月12日 | あ行の作家
「ストーリー・セラー」 有川浩 新潮社 2010/11/10読了

 「やっぱり、有川浩って上手いよなぁ~(っていうか、とっても私好み♪)」と思うところは、随所にあった。なんと言っても、タイトルがステキ。「ストーリー・テラー」ではなくて、「ストーリー・セラー」というセンスが好きだ!有川浩自身のプロフェッショナルとしての覚悟がうかがえるような気がする。

 sideAとsideB 対になる2つの物語。どこまでが事実で、どこからがフィクションなのか読者に想像の自由を与えてくれる境界の曖昧な劇中劇。プロのストーリー・セラーとしての巧みは十分に感じられました。
 
 にも関わらず、今一つ、絶賛モードになれない私。sideAは女性作家が愛する夫を残して死んでしまう物語。sideBは夫に先立たれてしまう女性作家の物語。そりゃあ、愛する人が死んでしまうという以上に切ないことは無い。という意味では、ある意味、最強の設定ではある。でも、愛する人が死んじゃう(又は不治の病に罹る)って、安っぽいテレビドラマが恋する女子を泣かせるための、最もお手軽な手法でもあるわけで…。有川浩なら、こんな手を使わなくとも、キュンとした気持ちを味あわせてくれるだけの力があるよね-と思ってしまう。

 しかも、その不治の病というのが、いまだかつて症例の無い、世界でただ一人だけの病気-って、ほとんど反則ワザでしょう。老人虐待の場面も、極めて今日的ではあるが、でも、ここまでエキセントリックな事例は、それ自体が物語の主題になるものであって、隠し味として使うには、あまりにも刺激的過ぎる。

と、最後まで突っ込みをいれながら読み終える。ページターナー系であっという間に読めるし、それなりに楽しんだけど、でも、後味はイマイチかな~。