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芸能人は「商品」か「人間」か

2019-07-28 19:38:55 | 雑論

 

 

 

 

 

芸能事務所の社長などが、タレントと結婚などをしますと、「商品に手を付けた」なんて言い方をする人がいますね。私は若いころから、この言葉に強い違和感を覚えてきました。

 

芸能人は「商品」?つまり「人間」ではないということか?

 

どの国でも、どの社会においても、芸能者というものはその立場が弱いものだったでしょう。良くも悪くも芸能者は「特別」な存在とされ、時に畏れられ、敬われ、また蔑視もされた。

 

日本に於いては特に、この「蔑視」という観念が意識されることなく、一般人の心の片隅にこびりついている。

 

日本の芸能界の諸問題の一端には、あくまで一端ですが、こうした意識されない「蔑視」というものがあるように、私には思える。

 

だから、声を上げるのは、芸能界の内側からしかないのです。今の日本の現状では、一般庶民はほとんど助けてくれはしませんよ。

 

残念ながらね。

 

 

さて、アメリカ・ハリウッドでは、こうした芸能者の権利を守る運動が1910年代頃から盛んになり、1930年代にはユニオン、組合が結成されます。このユニオンが、芸能者の権利を守る働きをするわけですね。

 

ハリウッドでは、このユニオンに加入していない俳優は仕事をすることができません。これは日本の俳優だろうと例外ではなく、日本の俳優がハリウッド映画に出る場合も、必ずユニオンに加入しています。渡辺謙さんはもちろん、千葉真一さんもその息子の真剣祐も、芦田愛菜ちゃんもみんなみんな、ユニオンに加入しています。これは例外が許されない。

 

 

そしてアメリカにも、いわゆる「芸能事務所」は存在しますが、日本とは大分かたちが違います。日本の事務所は一つの事務所に「エージェント」「マネージメント」「プロダクション」等々の権能がまとめられていることが多い。「ジャニーズ事務所」や「吉本興業」などはその典型的な例だといえましょう。

 

しかしハリウッドにはそのような事務所は存在しません。それぞれの事務所ごとに、その権能、職掌は細かく分離されているのです。エージェントはエージェントの仕事、マネージメントはマネージメント、プロダクションはプロダクションの仕事を専門に、それそれが独立した経営形態で運営されています。

 

 

芸能者、タレントはそうした複数の事務所と細かい契約を結ぶことで仕事を行っていくのです。

 

なんだかめんどくさそうですが、渡辺謙さんによればそうした契約はとてもフランクなもので、気に入れば仕事をするし、気にらなければハイさようなら、契約を解除してすぐ別の事務所と契約を結べるのだそうな。

 

もちろん、その芸能者、タレントにそれなりの需要があればの話ではあります。ハリウッドでは芸能者、タレントは「個人事業主」という意識が確立されていますから、自分の仕事の内容は自分で切り開いていくしかない。それを成立させるために様々な事務所と契約するわけで、思うような仕事が得られなければどんどん事務所を変えていく。事務所にしてしてればタレントはお客様なわけで、お客様が満足するような仕事をすることで契約を継続させようと努力する。

ハリウッドにおけるタレントと事務所の関係性とは大体このようなものだと思っておけばいいでしょう。日本では事務所があらゆる権能を有し、タレントに対し強い「支配」力を有するような形になってしまっている場合が多い。ちまたで話題の「吉本問題」などはその典型的な例だといっていい。

 

 

まあ、ハリウッド式がすべて良くて、日本式はすべて悪いと言うつもりはありません。日本には日本独自の文化、伝統というものあり、闇雲に否定すればいいというものではないでしょう。

 

吉本興業の社長さんが言った、「ファミリー」ということ、これなどは事務所と所属タレントとの日本的な関係性の典型であるといえます。事務所はタレントを全力で守りタレントはその恩義に答える。まあ、「ファミリー」といえば聞こえはいいですが、ちょっと見方を変えれば893の〇〇一家だとか、映画『ゴッドファーザー』などを連想させ、極めて前近代的な発想だとも言え、抑々巨大企業に膨れ上がった吉本興業に、今更「ファミリー」という概念が通用するとはとても思えない。

意識の古さを強く感じた会見でしたね。

 

 

さて、そんな感じで

 

続きます。

 

 

 

 

 

参考文献

『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』

星野陽平著 鹿砦社


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (チャメゴン)
2019-07-29 23:38:22
芸能界側の芸能人を「商品」として扱う体制はいけないですね。自身の中でも、芸能人への憧れと蔑視、確かにどちらも持っています…。でも芸能界も変わらなきゃいけない時にきているのですね。私たちも見る目変えなきゃ。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2019-07-30 11:24:35
チャメさん、ぶっちゃけ商品的な部分もないわけではないんだけどね。でも基本は「人」なんだよってことをしっかりと認識すること。この一見当たり前に思えることが案外出来てないような気がするんですよ。この国では。
改めなきゃいけないし、変わっていくべきです。
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