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 風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

映画『ゴジラVSデストロイア』 平成7年(1995)

2014-05-15 22:07:55 | ゴジラ


                    


平成VSシリーズは、93年(平成5年)の『ゴジラVSメカゴジラ』で終了するはずでした。

アメリカ、トライスター社制作によるアメリカ版『GODZILLA』の公開に合わせて、日本版のシリーズを終了させる予定だったのです。

しかし、アメリカ版の制作が遅れたため、引き続き日本版が制作され続けます。

そしてようやくアメリカ版公開の運びとなり、平成VSシリーズは終焉を迎えることになりました。



平成VSシリーズ最後の作品。そのキャッチコピーは


【ゴジラ死す】







ゴジラとリトルが暮らしていたバース島が、地殻変動によって一夜にして沈んでしまいます。

この地殻変動の影響を受け、ゴジラの体内で核融合反応が暴走を起こします。

ゴジラは香港に上陸。その体表はマグマのように赤く燃え、激しく蒸気を吹きだしている。

このままでは、ゴジラ自身が核爆発を起こし、地球のすべての大気が燃え上がる可能性が。



この「赤く燃える」ゴジラ。苦しげで痛々しくて、観ていて辛いものがあります。上手い演出です。

赤のLEDを大量に仕込み、さらには蒸気を吹きあげる装置を仕込んだりして、その重量は大変なもので、中に入っていた薩摩剣八郎氏はかなり苦労されたようですね。

しかしいかに体温が上昇したとはいえ、生物の身体が赤く発光するものでしょうか?

これは極めて日本的な「ケレン」というものです。

なんだかんだ言って、やっぱり日本人は、この歌舞伎以来の「ケレン」が大好きなんですね。それは時代劇や戦隊シリーズ、そして現代を舞台にしたドラマのなかでも、実は脈々と受け継がれている。

決めポーズとか決めゼリフなんてのは、もっともわかりやすい「ケレン」ですね。

「倍返しだ!」なんてふつう言いますか?いわないでしょ?リアリティはあまりない。

でも、面白いからいいんです。それが「ケレン」です。

ドラマでもっとも大事なことは、必ずしもリアリティではありません。伝わるか否かがもっとも大事。

「ケレン」とは、わかりやすく効果的に伝える手段の一つであり、日本人はその「ケレン」を愉しみ、受け入れてきた。

それが日本人の伝統的感性です。

なんでもリアルでなくてはならない、なんて偉そうにのたまっている人は、もっとも日本人的感性から遠く離れた人かも知れない…。




話が逸れました。



かつて初代ゴジラが、天才科学者芹沢大助博士(平田昭彦)の開発したオキシジェン・デストロイヤーによって葬られた海底に、海底トンネルが開発されようとしていました。

その建設現場で続発する謎の事故。そして突如現れた謎の生物。

その生物は元々、まだこの地球上に酸素が無かった時代に生息していた太古の微生物でした。

それがオキシジェン・デストロイヤーによって目覚め、さらにトンネル工事によって地上の大気に触れたことで異常進化したのです。

様々に形態変化を繰り返し、合体・巨大化していく生物。ついにはオキシジェン・デストロイヤーを口から吐く巨大怪獣にまで成長します。

あらゆるものを破壊し尽くす、デストロイア。




はじめに思ったのは、このデストロイアって必要なのか?ということでした。

だって、ゴジラ死すでしょ!?余計な怪獣いらないじゃん!って思ってました。

しかしよく考えてみると、デストロイアはオキシジェン・デストロイヤーによって誕生したようなもの、言ってみれば初代ゴジラの死とともに生まれたわけだ。

いわば初代ゴジラの怒りの継承者と言って良い。

ゴジラの死に鑑み、このような対戦者が現れるというのも、何かの縁かもしれません。




自衛隊のスーパーX3の放ったカドミウム弾によって、ゴジラの体内の核融合反応は押さえられます。しかしゴジラの心臓(核融合炉)の温度が上昇し続け、このままではメルトダウンを起こし、地球に穴を開けてしまう危機が生じます。

そのころ、バース島の地殻変動から辛くも逃れたリトル…もはやリトルとは呼べない程に成長したゴジラジュニアが、太平洋上を北上していました。かつて自分の卵があった島、ベーリング海のアドノア島へ帰ろうとしていたのです。

その姿を発見し、ほっとする三枝未希(小高恵美)。




ゴジラを唯一倒した兵器、オキシジェン・デストロイヤー。そのオキシジェン・デストロイヤーを吐く怪獣デストロイア。

ならこの両者を戦わせれば、ゴジラを倒すことが出来るかも知れない。

ゴジラを東京におびき出し、デストロイアと戦わせる。

そのため、ジュニアを囮に使おうとします。

反対する未希。しかし地球の危機の前にして、そのようなことは言っていられない。

出来れば誰も、そんなことはしたくない。したくないが、仕方がない。

未希は自身のテレパシーを使って、ジュニアを東京に誘導することを決意します。



このシーンは重苦しい空気が流れています。酷いことをしようとしていることは、皆分かっているんです。でも他にどうしようもない。

こんな犠牲をいつまで繰り返さなければならないのか。一体人類の文明とはなんなのだ!?

考えさせられます。




ゴジラとデストロイアの死闘。デストロイアの吐くオキシジェン・デストロイヤーをゴジラはものともせず、デストロイアはゴジラによって倒されます。もはやオキシジェン・デストロイヤーすらゴジラの敵ではない。

ついにゴジラの身体がメルトダウンを始めます。自衛隊はありったけの冷凍ミサイルと冷凍光線でゴジラを冷却にかかり、被害を最小限に食い止めようとします。

ゴジラが消えてゆく…大量の放射能が吐き出され、東京を死の街と化して。

と、その大量の放射能が突然何かに吸い込まれたかのように消えて行きます。

ゴジラが残した蒸気の中に浮かび上がるシルエットそれは

紛れも無く、死んだはずのゴジラ!?



それはジュニア、デストロイアに殺されたジュニアが、放射能によってゴジラとして復活した姿でした。

人類が過ちを繰り返す限り、ゴジラの怒りもまた、継承されていくのか…。END






この作品から16年後に、福島第一原発であのような事故が起きるとは、ほとんどの人が予想もしていなかったに違いない。作中では自衛隊が、原発事故に対応し得る装備を大量に用意していますが、現実にはそういうわけには行かなかったようです。

脚本を書いたのは大森一樹。彼には彼なりの、原発への危機感があったのかも知れません。

特撮映画はときに予言書とも成り得る。あたって欲しくない予言が当たってしまった。





ゴジラの最期のシーンは、ワックスで作ったゴジラにバーナーをあてて溶かし、それをCGで加工したものです。

デジタルとアナログの融合、まさにそんな過渡期の時代の映像です。非常に荘厳な画に仕上がっていますね。他ならぬゴジラの死です。敬意を持って丁重に送らなければなりません。

良い葬送でした。





オキシジェン・デストロイヤーを通じて、第一作とディープに繋がり、シリーズ全体のテーマである、人類の誤った驕りへの警告が、非常にクリアに描かれています。

第一作で山根恵美子を演じた河内桃子さんを、まったく同じ役で出演させるなど、ファンサービスを忘れておらず、なかなかの好感度。アクションシーンは「エイリアン2」の明らかなパクリ、これは良くない(笑)。




全体的には、まあよく出来た作品だと思います。ただ同じ年に、金子修介監督の「ガメラ2レギオン襲来」が公開されており、特撮表現で被るシーンがいくつかあるのです。

これがどう見ても、ガメラ2の方が「上手い」んですよねえ。いや、私の好みの問題ですが。

好みの問題ではありますが、「世代交代」の文字が頭に浮かんだ、そんな作品でもありました。






さて、トライスター社制作の「GODZILLA」を機に、東宝はゴジラシリーズを打ち切る予定でした。

ところがこのアメリカ版、とんでもなく評判が悪い!!!

このままでは納得がいかなかったのか、東宝はあらためてゴジラシリーズの制作に着手します。

名付けて、「ゴジラ、ミレニアムシリーズ」



それはまた、次回以降。









『ゴジラVSデストロイア』
制作 田中友幸
   富山省吾
脚本 大森一樹
音楽 伊福部昭
特技監督 川北紘一
監督 大河原孝夫

出演

辰巳琢郎
石野陽子
林泰文

小高恵美

篠田三郎
平泉成
大沢さやか

高嶋政宏
村田雄浩
菅原大吉
上田耕一

神山繁
藤巻潤
小野武彦

平田昭彦(回想)
志村喬(写真)

薩摩剣八郎
破裏拳竜
福田亘

中尾彬

河内桃子

平成7年 東宝映画

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5 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (美樹枝)
2014-05-16 03:52:54
時間のすきまに萩尾望都さんのコミックス「ポーの一族」5巻を読み返しました(うちの本棚上段にある)。  その中に「はるかな国の花や小鳥」という作品があります。 自分が毎日死にたいと願っていた頃の願いの書でした。主人公みたいに遅くとも3年以内に死んで子どものそばに行きたいと願っていました。 一緒に入っている「ホームズの帽子」「エディス」は連作。 …実在のこの手すら、いっさいがっさいが夢まぼろし、時どきのおりなす夢にみえてくる世界…?いいや〇〇は居た。わたしは見る。彼の姿、彼の声。(文章少し引用しました)。
   人の創り出す物語は太古の記憶を抱え、時に真実を表現してくださるものですネ。 映画も漫画もアイドルも~生きる人間の作品、パフォーマンス等々には生きる生かされる力がある。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2014-05-16 20:34:27
美樹枝さん、うつし世は夢、夜の夢こそまこと、なんて江戸川乱歩が言ってたけれど、この世のことを「うつし世」というのは何故なんだろう?きっとどこかの世界を映した鏡みたいなものなんだよね、この世は。
エンタメを通して元気づけられたという人は多いけど、それはきっと、エンタメの中に自分のホントの思いを観たからだと思う。自分を元気づけたのは、自分自身。

生きててありがとう。
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連投ごめんね (美樹枝)
2014-05-17 05:31:34
カオルにいさ~ん! 昨日、本物のくまモンに会えました! しかも、くまモンに頭ナデナデしてもらっちゃいました~ オトナなのに~! う、嬉しい…♪へ(^o^ヘ)♪   同じデパート内で棟方志功さんの作品展もされていまして、本物の作品達は凄く美しいものでした。 エンタメをも通し、喜びも悲しみも幾年月…ぢゃない、いつのまにか味わえるようになるのですね。 時の流れに神様に感謝です。人間皆様に感謝です。カオルにいさん! 生まれてくださりありがとう御座位ます。
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Unknown (玲玲)
2014-05-17 18:29:09
あっすいません、ガイアこれから見ます。
やっと邦画を見終わって、さてこれからって時にスカパー加入したいと主人に言われててんやわんやでした。
このゴジラもお話の展開すごいですね。
命を守るってどこまで?と問われる。
農業でも被害がでたら害虫害獣。全部人間側の都合。
人間の都合で決めてるんだから謙虚にならなきゃって本当にそれだけなのに。
人間の都合で怒りを伴わない、静かな生活しているゴジラはどこにいるんだろう。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2014-05-18 01:56:49
玲さん、ガイア楽しんでね。
スカパー、加入しても観る暇ないしなー、とか思って、私は結局加入してません。興味はあるけど、WOWOWでさえ観る暇ないのに、この上スカパーは無理だあ。

ゴジラが静かに生活を送れる日々は、いつになったら来るのやら…。
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