風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

地球〈テラ〉へ… Part7グランド・マザー 

2017-03-09 11:45:25 | 雑論









ジョナ・マツカは何故命がけでキースを守ろうとしたのか?


ミュウは一度受けた恩を忘れないとは、物語の中で何度も言及されています。それにしてもマツカのキースに対する献身は尋常ではありません。


この点については、ボーイズ・ラブ的なことを連想する方もおられるかも知れません。まあ、そうであったとしても、プラトニックなものだったでしょうから、マツカは自分の命を捧げることで、愛を青樹したのだ、とも言えなくはない。


しかし私はそういうことよりも、人間の関係性の不思議さ、複雑さを感じます。ミュウと人造人間というまったく相反する二人が、「孤独」というキーワードを媒介として、お互い警戒し合いながらも、実はもっとも心を赦せる相手になっていた。この面白さなんですよね。


だからキースは、ミュウと人間との共存の可能性は有り得るということを、分かってはいたんだと思う。それでも、彼は自らの存在する意味として、それを否定せざるお得なかった。

コンピューター、グランド・マザーに「作られた」存在として。


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マツカが死んだ翌朝、ミュウの代表と地球〈テラ〉政府側の首脳陣による、形ばかりの会談が行われました。

ジョミーは言います。あなた方がどうしても我々を受け入れられないというのであれば、去りもしよう。しかしそれはコンピューターの指示によるものではなく、あなた方人類自身の意思で決めてくれと。

しかし、コンピューター、「マザー」に依存することに慣れ、ひ弱になってしまった人類に、今更マザーに頼ることなく重要事項を決定することなどできない。

それに、マザーにミュウを完全排除するようプログラミングされている以上、人類とミュウの共生はあり得ない。


何故だ?何故?マザーはそこまでミュウを排除しようとするのか?ジョミーはテレパシーはキースに問いかけます。

それはわからない。キースが答えます。何故ミュウが生まれてくるのかわからないように。



その時、ジョミーを連れてくるようにと、マザーよりの命令が下されます。ジョミーとキース二人きりで来るようにと。



これがなにを意味しているのか、分かったうえでジョミーは、キースとともにマザーの下へ向かいます。


基地の風防越しに、荒れ狂う地球の大自然の息吹を眺めながら、ジョミーが言います。「トオニィが早まったことをした、すまない」

「……なんのことだ?」平静を繕ったものの、その表情には明らかな動揺が現れていました。




グランド・マザーの前に立つジョミーとキース。マザーが有無を言わせぬ精神波攻撃を仕掛けてします。

キースの抗議も聞かずに攻撃を続けるマザーに、ジョミーも反撃します。「ぼくたちが戦ってきた相手は人間じゃない、このグランド・マザーだ!」

ジョミーは言います。「人間はマザーにあやされ育てられた意思のない子供、目も耳も口もふさがれながら、それを知らない不幸な子供だ」

「だが反逆児であるミュウたちにはそれが見える、敵の姿として」

だからここまで来た。


お前を壊すために



ジョミーはミュウたち全員に力を結集するよう呼びかけます。それによりグランドマザーの機能は明らかに壊れ始めます。


激しいエネルギーの波に翻弄されながら、キースもまた、心の中で戦っていました。

ミュウたちとともに。



機能停止寸前、一瞬の隙をついて、マザーがキースの脳波を捕らえ、これをコントロールします。マザーの操り人形と化したキースが

ジョミーに銃を撃ち込みます。


ハッと気が付いたキースの前に横たわる、ジョミーの遺体。「完璧デス、キース……」途切れ途切れの言葉で、尚も体制を維持しようとし続けるマザー。「ワタシタチノ子……」


キースの怒りが爆発します。「わめくのをやめろコンピューター!二度とおれの意志にさわるな!」

それは初めてと言っていい、キースの感情の迸りでした。


これに感応するかのように大爆発を起こすマザー。激しい地殻変動が地上を襲い、基地が倒壊していきます。


地割れに飲み込まれ、地下深くへと落ちて行くキース。







つづく