ダーク・サイドはフォースと表裏一体であり、別々にすることはできません。
フォースあるところ必ずダーク・サイドあり。フォースは全宇宙の神羅万象すべてに宿るといいます。ならば、全宇宙の神羅万象すべてに、ダーク・サイドもまた宿る。
フォースの強いところには、ダーク・サイドもまた強く現れる。そういう意味では、ダーク・サイドとの戦いは、この宇宙が続く限り終わることはないのかもしれない。
ジェダイの騎士はフォースを駆使し、銀河の秩序と人々の生活の安寧を守るために戦う。決して自分の利益のためだけに戦ってはならない。
怒りと憎しみを持って戦ってはいけないと、よくいいますね。
ジェダイの戦いはあくまで公の秩序と人々の生活平和を守ること。それが戦う目的。
しかし、そこに怒りと憎しみが入ると、戦う目的は変わってしまいます。
相手を倒すこと。それ自体が、戦う目的にすり替わってしまうんですね。
ジェダイ・マスター、オビ=ワン・ケノービの弟子、アナキン・スカイウォーカーは正義感が強く、強いためフォースの力を持っていましたが、直情径行で我の強いところがあって、師匠オビ=ワンのいうことを聞かないことも度々でした。
砂漠の惑星タトゥイーンに残してきた最愛の母が、砂漠の盗賊タスケン・レイダースに攫われたことを知ったアナキンは、母を救出すべくタスケン・レイダースの村に潜入しますが、一足遅く、母はアナキンの腕の中で息を引き取ります。
怒りと悲しみで常軌を逸してしまったアナキンは、村人全員を虐殺してしまう。
もとより、私怨を持って相手を殺すなど、ジェダイには許されぬこと。
アナキンは罪悪感に苛まれますが、一方でアナキンは、というよりアナキンの自我は知ってしまったのです。
力を行使することの快楽を。
力を行使し、相手をひれ伏させ、叩きのめす。自我というものの性質からいって、これほど甘美な悦楽はありませんでしょう。味をしめた自我は、「もっと!もっと!」と要求します。
さらにはその自我の行動を正当化し、アナキンに甘言をささやく者が現れます。
銀河共和国評議会最高議長パルパティーン。しかしてその正体は、ダーク・サイドを操るシスの暗黒卿、ダース・シディアス。
「お前は正義を行ったのだ。お前は正しい!そして強い!お前ならば宇宙を変えられるかもしれん。私がお前を守ってやろう。だからやれ!もっとやれ!」
自己を正当化させ、虚栄心をくすぐる。これもまた、自我の大好物でしょう。アナキンを篭絡するなど、ダース・シディアスにとっては赤子の手を捻るよりも容易かったはず。かくしてアナキンは、坂を転げ落ちるように、ダーク・サイドへと堕ちていったのです。
詳しいところは直接作品を観ていただくのがよいでしょう。惜しむらくはアナキンが、己の自我を律する術をもう少し真面目に学んでいたなら、ダーク・サイドに堕ちることを防げたかもしれない。
結局アナキンは、己の自我に負けたのです。
ダーク・サイドはすべての人の中に備わっているもの。
ほら、あなたのすぐ横で、大きな口を開けてあなたを飲み込むスキを伺っていますよ。
あなたは大丈夫ですか?
どうか、飲み込まれませんように。