大前研一のニュースのポイント

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日本人は、北方領土問題の歴史的な経緯・実態を知るべき/朴槿恵大統領への期待感ゼロ。

2013年03月08日 | ニュースの視点

ロシアのイシャエフ極東発展相は27日,北方領土問題について日露がまず四島の共同開発を通じて協力関係を築き,そのうえで解決を将来の世代に委ねるべきだとの見解を表明した。また、プーチン大統領と森喜朗元首相の会談について「首脳会談実現への建設的な会談だった」と評価し、首脳会談での成果に期待を示した。

イシャエフ極東発展相には申し訳ないが、日露の共同開発を日本側が受け入れることはないだろう、と思う。共同開発となれば、帰属を明確にする必要が出てくる。またパスポートの問題など、細かい点の調整も必要になる。

実は森喜朗元首相とプーチン大統領の間では、全く別の話し合いが進んでいる。それは「今年中にいくつかの案を提示し、それをベースにまた話し合いをしよう」というものだと言われている。これは非常に上手な言い回しだと思う。四島同時返還ばかりを主張しても、堂々巡りになるだけで全く意味はない。その点、この提案方法なら様々な可能性を検討できるでしょう。

日本の北方四島に対する歴史認識は、ある意味において尖閣諸島に対する中国のそれに似ている。最近、尖閣諸島問題について中国は明らかにトーンダウンしている。これは歴史を調べるほど、自らの主張は証明しづらく、また本質的には台湾の問題だということが分かってきたからだろう。

日本でも北方四島返還についての歴史的経緯を知らない人が大勢いる。そもそも日本が北方四島一括返還を請求したのは、1956年の米ダレス国務長官と重光外務大臣の会談がきっかけだ。この時、米国は北方領土問題が解決に向かい、当時のソ連と日本が近づいてしまうのを避けたいと考えていた。それゆえ、沖縄返還の条件として、ソ連に四島一括返還請求をすることを求めたのだ。要するにソ連に対する米国の嫌がらせだ。

森喜朗元首相は正しく理解しているが、政治家の中にもこの事実を知らない人はたくさんいる。今の時代、ウィキペディアなどを調べるだけでも、ある程度の情報を入手することは可能だからだ、日本人としてこうした歴史的な実態をもっと知っておくべきだと私は思う。

先月25日、朴槿恵(パククネ)氏が韓国初の女性大統領に就任した。ソウルの国会議事堂前広場で開かれた就任式で朴氏は、「希望の新時代を拓く」と宣言。「第2の漢江(ハンガン)の奇跡」を成し遂げると述べ、経済成長による雇用創出などに全力を尽くす考えを強調した。また北朝鮮に対しては核の放棄をあらためて求める一方、将来的には対話を目指す考えを示した。

朴槿恵大統領が言う「第2の漢江(ハンガン)の奇跡」には全く賛同できない。彼女の父親が成し遂げた「漢江(ハンガン)の奇跡」の影響だろうが、正確に言えばあの時の復興と経済成長は、ソウル近郊に限られたものだった。

大統領としては「韓国全土」について話をするべきだと思うが、今表明している朴槿恵大統領の経済政策で韓国全体が経済的に大きく発展するとは全く思えない。結局、「漢江(ハンガン)の奇跡」という言葉遊びに終始しているだけだと私は感じている。

また日韓関係については、「加害者と被害者という歴史的立場は千年の歴史が流れても変えることは出来ない」と述べているが、全くお話にならない次元の低い見解だ。こんなことを言い出したら、フランスとドイツはどうするのだろうか?ドイツとフランスは、加害者と被害者が何度も入れ替わりながら、その歴史を刻んでいる。あるいは、カリフォルニアを奪われたメキシコは、今でも米国に文句を言い続けることになるのだろうか?

先日、韓国地裁が対馬の寺から盗まれた仏像の返還差止め判決を下した。仏像は700年前の仏教弾圧時に朝鮮から日本に持ち込まれたもので、これを日本による略奪だと批判しているが、これもおかしな話だ。


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