大前研一のニュースのポイント

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マクドナルドが低迷した原因は、日本独特の激しい競争環境・・・他

2013年09月06日 | ニュースの視点

●マクドナルドが低迷した原因は、日本独特の激しい競争環境

日本マクドナルドホールディングスは先月27日、傘下の原田泳幸会長兼社長が退任し、後任にマクドナルド・カナダ出身のサラ・カサノバ氏が就任する人事を発表した。「100円マック」のヒットなどでデフレの勝ち組と言われた日本マクドナルドだが、足元の業績は低迷。原田氏は同社の会長とホールディングスの会長兼社長には留まるものの、今後は米国本社主導で立て直しが進むと見られている。

以前原田氏はマクドナルドの低迷の原因の1つとして、特に東日本大震災以降の日本人の心理変化を挙げていたが、私はその意見には与しない。これまでの実績を見れば、経営者として優れた人物だと思うが、この点についての認識は正しくないと私は思う。

マクドナルドの低迷の原因は、日本人の心理が変わったからではなく、マクドナルドを取り巻く競合環境が変化し多様化する中で、マクドナルドが対応できていないからだ。

コンビニ弁当・お惣菜、立ち食いうどん・そば、すき家・吉野家の牛丼など、かなりバラエティにあふれている。このような状況において、マクドナルドが売っているものの魅力が薄れているのだと思う。健康志向の食べ物でもないし、特別に安いわけでもない。セットメニューを注文するより、バラバラにポテトとコカ・コーラを買ったほうが安いというのは、何ともおかしな話だ。

日本のコンビニ弁当などは世界でも類を見ないほど充実している。加えて、牛丼チェーン店もかなりの強豪だ。こうした状況は日本独特のものなので、果たしてカサノバ氏がどこまで対応できるのか、一筋縄ではいかないだろう。

原田氏でさえ理解していなかった、この日本の市場環境について、米国本社はどれくらい理解できているのかは疑問だ。今でも世界的に見れば、マクドナルドは非常に立派な会社だが、「日本独特の競争環境」について理解して臨まなければ、日本を立て直すことは難しいと私は見ている。


●スマホ、カーナビ市場の時代の流れ。ソニーは医療市場に活路を見いだせるか。

マクドナルドにおいて原田氏の退任が1つの時代の終わりだとすれば、スマホ事業から撤退するというパナソニックでも1つの時代が終わろうとしている。パナソニックは国内の個人向けスマートフォン(スマホ)事業から撤退する方向で最終調整に入った。来年3月までに唯一の自社拠点であるマレーシア工場での生産を停止する方針で、販売不振で営業赤字が続いており、立て直しが難しいと判断したとのことだ。

今でもパナソニックは国内で290万台の携帯電話を出荷しているが、それでも撤退という事態になった。基地局まで売却するということだ。今後どこで利益を上げていくつもりなのか、課題は山積みといったところだろうが、時代の流れの中では致し方ないのかも知れない。

先月28日、東京株式市場でカーナビゲーションシステム大手の株価が下落したと報じられた。こちらもほとんど同じような状況だろう。

JVCケンウッドとパイオニアが年初来安値を更新、クラリオンも年初来安値に接近。純正品の増加やスマートフォン(スマホ)の普及により自動車用品店で販売するカーナビ市場が縮小。4~6月期はそろって営業赤字となるなど、業績悪化が嫌気されているとのことだが、私に言わせれば、未だに株価が付いていることが不思議だ。

日本のカーナビは世界的に見ても高額だった。海外に行けばカーナビは4~5万円で購入出来た。それも今では2万円台に価格が下落している。さらに次のバージョンでは、スマートフォンを車のダッシュボードに取り付けて、カーナビの代わりになると言われているから、ますます状況は厳しくなっていくだろう。

また経営再建中のソニーは、ヒトゲノム解析事業に参入するとのことだ。米国の遺伝子解析装置大手イルミナと合弁会社を設立し、製薬会社や研究機関などから受託し、イルミナの装置を使って解析を進める方針で、データベース化した情報の国内製薬会社への販売することも計画しているそうだ。

ぜひ頑張って欲しいところだが、医療関係の市場環境は、世界中で非常に厳しくなっている。また個人情報の取り扱いやモラルの問題など、他の市場よりも慎重にすべきことも多々ある。

医療分野に活路を見出そうとして、ソニーが向こう岸まで泳ぎきれるのか注目したいと思う。


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