大前研一のニュースのポイント

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タイヤメーカーのブランド戦略が、今必要か?/電気自動車はポイントは、量産体制を築き上げられるかどうか

2013年04月05日 | ニュースの視点

ブリヂストンの津谷正明最高経営責任者(CEO)は、27日、グループ全体で整合性が取れた1つのブランド戦略をまとめたいとの見解を示した。ブリヂストンの他、ファイアストン、デイトンなど複数のブランドを保有しているが、地域によって混在しており、ブランド戦略を統一することで新興国を含めたグローバル展開を加速する方針だ。

正直、今になってなぜブランド戦略を見直す必要があるのか、私には理解出来ない。例えば、ファイアストンブランドは米国でもよく知られたブランドだが、特段傷ついたブランドでもない。今、価格別にブランドを統一する意味があるのだろうか?

そもそも、タイヤにとってブランド力がどれほど重要か?という点について、消費者の立場から考えるべきだろう。車を持っている人に、自分が乗っている車のタイヤメーカーを聞いても、まともに正解できる人はそう多くないはずだ。車メーカーは摩擦、音、重要などを考慮して車種ごとにタイヤを共同開発だから、タイヤメーカーに対する意識は高いが、消費者はタイヤメーカーをそれほど気にしていないのが実情だと思う。

そして車メーカーがタイヤを選ぶ際は、技術的な観点から厳格にそれぞれの車種にあったタイヤを選ぶ。あるいは、古くから付き合いが深いメーカーのものを選ぶということもあるだろう。いずれにせよ、ブランド力が大きな影響力を持っているとは感じない。

ブランド戦略を見直すのは結構なことだが、その前にお客さんとなる消費者に目を向けて考えるべきだ。お客さんの頭にあるのは、タイヤメーカーのブランドではなく、車メーカーのブランドではないだろうか?実際、車のシェアとその車が使っているタイヤのシェアはほとんど同じになるから、タイヤ単独のブランド力はほとんど関係がないと言えるだろう。

慶応義塾大学発電気自動車(EV)開発ベンチャーのシムドライブは27日、始動から4.2秒で時速100キロメートルまで加速できるEVの試作第3号車「シム・セル」を発表した。2015年の量産をめざすとのことだ。

シムドライブは、車輪のホイールにモーターを組み込む「インホイールモーター」の採用による低コストなEVの量産化を掲げたベンチャー企業です。会長には、その趣旨に賛同したベネッセコーポーレションの福武總一郎会長が就任していた。

今回発表されたEVの性能を見ると、ものすごい加速力でシムドライブの技術力をうかがい知ることができる。時速も最高300キロ近くに達するそうだ。

ただし、重要なのは「性能」ではなく「量産化」だ。インドなどで量産化をする計画だと思うが、果たしてどこまで「量産体制」を築き上げられるだろうか?2015年を目処にしているとのことなので、それまでが勝負時だと思う。


1 コメント

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Unknown (金欠次郎)
2013-05-15 10:22:43
「ブリジストンのCEOが示したブランド戦略は正しい」が私の意見だ。 たしかに日・欧・米の成熟した自動車市場においてはタイヤのブランドの統一戦略にさほどの意味がないのは、大前先生のご意見のとうりだ。

つい先ごろ、私は愛車ベンツのタイヤを、安価な無名の韓国製に交換した。若いころと違い、最近は高速道路で最高速を試すこともなくなり、タイヤのブランドなどどうでもよいと思うようになったからだ。

しかしブリジストンの狙う市場は日本がメインではない。世界市場の動向はどのようなっているだろうか? 拡大しない日・欧・米の自動車市場だが、この10年、中国を含め、新興国の自動車市場規模は3倍に膨らんだ。

いくつにも分かれているブランドを統一することは、これら新興国の成長市場に照らせばきわめて合理的な戦略と言える。私がブリジストンのCEOであれば同じ決定を下すだろう。

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