大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

民主主義の大前提にたった政策を。

2006年12月05日 | ニュースの視点
日本郵政公社の2007年3月期決算は、郵便事業の最終損益が200億円超の赤字になる見通しとのこと。

こんなことが、普通にニュースになること自体、私には理解できない。

問題だと感じるのは、郵貯と簡保の黒字で郵便事業の赤字を補填する決算になっている点だ。

そもそも、小泉前首相が提唱した郵政民営化の理念に従えば、3つの事業は独立採算にするべきで、バラバラの経理にするのが大前提だったはずだ。

黒字である民間企業のヤマト運輸や佐川急便に対して、郵貯で赤字補填をしながら、低価格で郵便・宅配サービスを提供するということは、ダンピング以外の何者でもない。

ヤマト運輸や佐川急便は、すぐに公正取引委員会に訴えるべきだと私は言いたい。

これでは官による民業のダンピング行為を容認しているのと同じだ。

郵政民営化政策の無力化し、こんなにも堂々とダンピング行為がまかり通ってしまうのは、民主主義国家としてあるまじき姿だ。

また、郵政民営化に反対した議員の自民党への復党問題についても同じことを指摘したい。

郵政民営化に反対という意思表示をして選挙民に選ばれたのだから、引き続き、「反対の意思表示」を続けるべきなのは当たり前の話だ。

今になって復党という動きが出てきているのは、安部政権が重要事項と位置づけている憲法改正を睨んでいるからだろう。

そのため、郵政造反組を取り込むために、院内会派という考え方を適用するも良しという意見も出てきている。

確かに、院内会派は1つの方策だと思うが、今回の場合には賛成しかねる。

なぜなら、憲法改正というのは極めて重大な決議事項だからだ。

重大な決議事項だからこそ、郵政民営化のときと同じように、解散総選挙を行って、国民に賛成・反対を問い直すべきではないだろうか。

前回の解散総選挙は、郵政民営化という部分が争点だった。

その結果を利用して、憲法改正につなげてしまうのは、民主主義の大前提から考えても、おかしいと思う。

民主主義の大前提に素直に従えば、今回のような問題はおきないはずだ。

物事をことさら複雑にして煙に巻くのは、宜しくない。

政治家の方々にも、ぜひシンプルに、そして誠実に、物事を受け止めて行動してもらいたいところだ。