大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

ゼロからフレームワークを作り上げる力こそ、今の日本に必要な力

2006年11月28日 | ニュースの視点
政府主催の教育改革タウンミーティングにおける「やらせ質問」が判明した問題をうけて、教育基本法の改正案の成立に野党からの反発が強くなっている。

タウンミーティングにおける「やらせ質問」など、いまさら始まったものではなく、役人の染色体に染み付いたものだ。

そんなことに、今さら驚く必要もなければ、取り立てて騒ぐ必要もない。

さらに、教育基本法の改正について、役人の問題を関連させて議論するのは大きな間違いだ。

なぜなら、法律を作るのは、本来役人の仕事ではなく、立法府である国会議員であり、本来的に言えば、法律を作る作業に役人は関係ないことだからだ。

しかし、実際には立法府である国会議員主導で法律が作れるかというと、難しいだろうと私は思う。

なぜなら、これまでに経験がないということに加えて、法律同士の抵触がないかどうかを細かくチェックできる実質的な力があるのは内閣法制局だけだからだ。

このような法整備に関する制度上の問題もさることながら、今の日本の現状を鑑みると、より根本的な問題がある。

それは、日本の学者には、全ての法律の土台となるフレームワークを作り上げる力がないということだ。

日本の学者は、優れた解釈学者に過ぎず、「他人が作ったものの解釈」はできるが、「自ら白い紙の上に絵を描く」ことができないといわざるを得ない。

実際、日本の法律の多くは諸外国のコンセプトを模倣しているだけだ。 憲法も同様だ。

他国のコンセプトを模倣しているだけなので、今の日本の現状からすると定義しておくべき「個人と市町村」「個人と都道府県」「家族と個人」などについての言及は明記していません。

さらに、経済大国となった今の日本という国が「積極的に」どのような先進国としての役割は果たしていくのかという「日本と世界の国との関わり」という最も重要なコンセプトが欠落しているのは致命的だと思う。

教育について考えるときも、実は同じことが言える。

教育基本法の字面を変えようとするのではなく、教育のフレームワークを作り上げることが重要だろう。

憲法にしろ、教育基本法にしろ、部分的な字面を変更するだけでは無意味だ。

たとえこれまでの経験がなく、難しいことだとしても、フレームワークをゼロから作り上げるように、取り組んでいくべきではないだろうか。