大前研一のニュースのポイント

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政府の追加経済対策は、あらゆる点でポイントがずれている

2009年03月03日 | ニュースの視点
16日、政府・与党は追加経済対策に向けた2009年度補正予算案の編成で、多年度にわたる公共事業計画を09年度に集中実施する方向で検討に入った。

光ファイバー網整備や公共施設の耐震化などが浮上しており、08年10―12月期の国内総生産速報値の落ち込みを受けた需要創出や雇用促進に重点をおく。

民主党も独自の追加経済対策を打ち出すとのこと。

米国で100兆円の経済対策を打ち出すというから、日本でも20兆円~30兆円の経済対策をということだろうが、このような経済対策では全く効果はないと私は確信している。

現在、景気が急激に落ち込んでいるのは消費者の心理が「倹約」に傾いているからだ。

不況に見舞われると、例えば車の買い替えを車検1回分延ばそうとか、テレビなどの買い替えなども1年~2年待ってみようと考えるのが消費者の心理だと思う。

先進国では基本的に耐久消費財はすでに満ち足りているから、当然の心理だと言えるだろう。

だから重要なのは、公共事業を起こすことではなく、「倹約」に傾いている消費者の「心理」を「お金を使ってもいい」というようにリラックスした状態にすることなのだ。

私は何度もこの点について指摘しているが、政府や役人は全く理解していない。今回経済対策として打ち出された内容は、あらゆる点においてポイントがずれていると指摘せざるを得ない思う。

また自民党は追加景気対策の一環として、地上デジタル放送をが受信できるテレビやチューナーを購入した全世帯に一律2万円程度の支援金を配布する方向で検討に入っているとのことだが、ここでも消費者心理を全く理解していない政府・役人の姿勢が伺える。

今回の2万円支給という方法でも多少の効果はあるだろうが、劇的な効果は期待できないと思う。

消費者心理を考えれば、「今、2万円支援と言ってるけど、もっと時期が迫れば、最後は困り果てて無料で配布されるだろう」となるからだ。

さらに、この政策には液晶テレビなど急激な需要落ち込みに悩む電機業界を支援するという景気対策の狙いもあるそうだが、ならば、なぜ地デジにこだわるのか理解できない。

電機業界を支援するなら他のものでも構わないはずだ。

具体的には、例えば耐久消費財を購入したら2年間は消費税を免除するといった方法を採用すれば、かなり景気対策として有効だろう。

この方法なら地デジ以外にも適用できるし、消費者の「お金を使ってみよう」という心理を刺激することにつながるからだ。

消費者の心理を刺激するポイントとして、税金の免除というのは大きな効果があると思う。さらに2年間という期間を区切るのも、さらに消費心理を高めるだろう。

私が言うところの「心理経済学」とは、まさにここがポイントだ。

日本の政府や役人は、経済対策・景気刺激の方法といえば、すぐに道路を作る、あるいは橋を架けるといった公共事業による景気刺激策を考える。

しかし、消費者の心理を刺激しない限り、不況下においては景気が刺激されることはないのだ。

地デジで一儲けしようと企んでいる人たちが官民をあげて一斉に働きかけているが、この不況下において景気を刺激するにはどうするべきかという本質を理解していない限り、同じ過ちを繰り返すことになるだろう。

いい加減、政府や役人の人たちも「心理経済学」について理解して欲しいところだ。

2 コメント

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政治家の動機 (ヤスジ)
2009-03-04 11:49:53
先生の視点は現在の政治家にありません。

政治家は国民の暮らしと皆さん言ってますが実際にいろんな事件などを見るにつけ

いわゆる方便で本当は全く別な意図が有るんでは無いかなと思います

マスコミの一面だけ見てわかったように今まで思ってましたが

CIAの秘密報告書を見る訳にも行かないですが

何を基にして判断したらたいいのか?
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同感 (OK)
2009-03-07 08:01:15
人間の心理や行動が経済と社会を動かしていることから、心理と行動に着目した政策をとるべき。

という視点からの施策に同感です。
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