ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

わくわく!してきた。

2014-03-18 01:21:25 | 日記
明日は夜勤なのだが、今ちょっと、わくわくしている。
夜勤明けの19日、帰って一眠りしたら
久しぶりに一人で映画を見に行こうと思っているからだ。

以前は月に10本くらい映画館で映画を見ていたが
贅沢はご法度!の生活になってから
一人で映画館に足を向けたことはない。

でもさ、先月も6回の夜勤をこなして頑張ったんだから
たまにはそんな楽しみ方もいいじゃないか。
ふと、そう思った。

ネットで調べたら
見たいと思っていたディズニー映画「アナと雪の女王」が
バスで15分ほどのところでやっているじゃない!?
しかも水曜日。1000円で見られるレディースデーだ。

夜勤明けだから睡魔に勝てるか不安ではあるが
思い切って行ってこよう。

ふふふ。
そう思ったら、明日の夜勤も憂鬱じゃないわ。
Tさんの便失禁も、Yさんの転落も、Uさんの我が儘も
介助一つ一つが私の人生を潤わせてくれると思って
頑張れそうな気がするわ。

ああ久しぶりに大画面で見るディズニー映画。
デート前夜のごとく、ときめいている私である。

笑いの効果

2014-03-16 00:18:07 | 日記
財産はあるらしいが
未婚のまま90代に突入した天涯孤独な女性利用者Mさん。

きのうの夜勤中、珍しく彼女から非常コールが。
「とにかく来てください」と繰り返すので
また転倒したか!?と大急ぎで居室に向かった。

すると、転倒も転落もせずベッドに寝ていた彼女が
つけっ放しになっているテレビを指して言う。
「見て!誰かが私に断りもせずに、この部屋を使って映画撮影しているの」

テレビ画面に映っているのは
タレントたちがワイワイお喋りしているだけの
深夜のバラエティ番組。
何をもって、自分の家が撮影されていると思ったからわからないが
Mさんは半分怯え、半分憤っている。
「私に無断で撮影するなんて許せない。
警察に訴えようかとも思うの」

日ごろ、あ~、う~、しか言わない彼女が
シャキシャキと言葉を発するのに驚く。

これは付き合ったほうがよさそうだな
そう判断し
「それは許せないことですね。
わかりました、私が建物の周りを見に行って
撮影している人がいたら怒ってやります。
だからどうか安心してください」
手を握り、言葉を尽くして
私はMさんに安堵感を与えようと努めた。

と、そんなときになぜか鼻がむずむず。
Mさんに真剣な視線を向けながら
ヘッ、ヘッ、へ~ックション!!!と
私はくしゃみを三連発。

これにMさんが予期せぬ反応を示し、大笑いし始めた。
しかも、止まらない。
いつも無表情で、あ~、う~しか言わないMさん。
彼女がこんなに大笑いしたのを見たのは初めてだ。

「夜遅く起こしちゃったから
アナタ、風邪を引いちゃったのねえ。ごめんなさい」

あ、いえいえ、別に風邪を引いているわけではないんですけれど。

しかしこのくしゃみ効果によって
彼女の恐怖も憤りもおさまったらしく
まもなく、彼女はストンと眠りに落ちたのであった。

安らぎを得ていただこうと言葉を駆使ししたけれど
彼女にそれをもたらしたのは“三連発のくしゃみ”だったらしい。

笑いこそ
恐怖や不安、苛立ちを取り除く特効薬であると
あらためて思い知らされた。

見掛け倒しの女

2014-03-14 00:46:01 | 日記
ケアマネのKさんが新車を買ったという話から
昼下がり、職場は車の話で盛り上がっていた。

と、一人が私に話を振る。
「チカさんもかなり運転が好きそうですよね」
みんなが私に注目。
「うんうん、バイクなんかもブワンブワン乗り回してそう!」

まずい、またしてもだ。
そういうイメージで見られることの多い私は
今回も情けなく否定せざるを得ない。

ごめん。実は車にもバイクにも興味ないし
それどころか免許すら持ってない。
20代のころの就活に持っていった履歴書には
特技の欄にいつも「茶道、華道、着付け」と書いたっけ。

ごめん、私、見掛け倒しの女なの。

うっそ~!?のあとに、大笑い。
いつものパターンだ。

こんな私の起源は、中学生時代にさかのぼる。

運動会のとき、私はいつも決まって
リレーの選手に推薦された。
自慢じゃないが、足は速くない。
球技は何でも好きだったし、そこそこできたが
短距離走とマット運動、鉄棒は大嫌いだった。

ところが、見かけから運動神経バツグン!と思えたのだろう。
どんなに「私は足が遅い!」とアピールしても
ともに体育の授業を受けているはずのクラスメートでさえ
信じてくれない。
どう考えても合点が行かない話なのだが
私にはきっと
デキル奴と思わせる摩訶不思議な才能が備わっているらしい。

リレー選手に推薦され、満場一致で決定し
私は泣いた。
泣いて、泣いて、子どもらしい作戦を思いついた。
そうだ、風邪を引いて運動会を休もう!

運動会前日、私は風呂で水を浴びた。
そして目論見どおり、風邪を引いた。

しかし、それは熱の出ない、鼻かぜであり・・・。

鼻水をすすりながら参加したリレー競技。
それが惨憺たるものであったことは、言うまでもない。

あれから40年。
見掛け倒しの少女は
パワーアップした見掛け倒しオバサンへと成長しているようである。

おっさんと折り紙

2014-03-11 00:05:00 | 日記
最近の日課とも言える、7時からの、おっさんとの晩酌。
(もちろん遅番や夜勤の日は無理だけれど)

発泡酒を一口飲んだところで
「いや~、大変だよ」と
おっさんがバッグから何かを取り出そうとしている。

大変だよ・・・
この間までだったら、そのあとに続く言葉は
「売り上げが伸びなくてさ」だった。

しかし今日は
バッグから折り紙で作ったてんとう虫を出してテーブルに置き
「明日はこれを100枚折らなきゃならないんだ」
と、嬉しそうに言う。

デイサービスに来るオバアチャマたちとてんとう虫の折り紙を折って
4月のカレンダーを作るんだそうである。

「はい、これはあげるよ」
赤い折り紙で折られたてんとう虫に
不恰好に描かれた眼が二つ。

こんなもんもらっても仕方ないが・・・
と思いながら、磁石で冷蔵庫に貼り付けた。

それにしても、アンタは本当に私の知ってるおっさんか!?
家族や部下たちを言葉でメッタ刺しにしていた、あの狂気の男か!?

いい人すぎて、怖いわ。

梅の花の思い出

2014-03-09 00:49:00 | 日記
おっさんと、梅林が有名な近くの公園へ。

梅にも木の形状や花びらの色、大きさによって
さまざまな種類がある。
当たり前のことだが、それに初めて気づく。

遠くで見るより
ぐっと顔を近づけて見た方が美しい。

へえ~、梅の花って、きれいなもんだねえ。

枝ぶり、木肌ともゴツゴツ、ガサガサとしているが
だからこそ
そこに咲く小さく可憐な花が愛らしい。

屋台のおでんや甘酒に気を取られることなく
私はひたすら、梅の花を堪能した。

二人でどれくらい歩いただろうか。
5年前にも来たよなあ、というおっさんの言葉に
ベンチに座って持ってきたおにぎりを食べる
貧乏臭い家族の姿を思い出す。

誰が言い出したのか。
衰弱しているおっさんのはずはない。
22歳だった息子であるはずがない。
おそらく私だ。おっさんと息子を誘って
梅を見に行こうと私が言ったのだ。

なぜ、そんな気になったのだろう。
厳しい冬の時代に身を縮め
どこかにあるはずの春を探したくて
家族を連れ出したのかもしれない。

しかし思い出すのは
ベンチでおにぎりを頬張る貧乏臭い家族の姿だけで
花の色合いも
日本画に表されるような見事な枝ぶりも
不思議なほど記憶にない。

あまりにも貧乏臭い心持ちだったから
色も形も匂いも、見えず、感じなかったのだろう。

離婚と大病を乗り越えた大切な友人Aの口癖は
「貧乏はいい。でも、貧乏臭いのは大嫌い!」。

私は今、
打ちひしがれ、絶望の淵を彷徨い
貧乏臭い臭いを撒き散らして梅林にたたずんでいた
5年前の私たち家族の姿が、大嫌いである。