ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

高齢者住宅の日常

2020-09-24 22:50:00 | 日記
ノリオ(97歳)が車椅子で事務所を訪ねてきた。

どーしたのかと聞いたら、彼は神妙な面持ちで一言。
「もう逃げるのに疲れたから、自首しにきました」

ユキノ(95歳)が非常時のコールを鳴らしてきた。

どーしたのかと聞いたら、彼女は絶叫。
「どーしたのかじゃないわよ!
今ここで殺人事件が起こってるんだから!!」

ケンゾウ(93歳)がヨボヨボとしながらも精一杯急ぎ足で
部屋から飛び出してきた。

どーしたのかと聞いたら、上ずった声で
「た、大変だ! ベッドに水を撒かれた。
あいつらを捕まえてくれ!」
(紛れもなく、ご自身による失禁であったが)

お上品なユウコ(96歳)が
相談があるからとケアマネージャーを呼びした。

どーしたのかとケアマネが聞いたら
「お隣の方に貸した3000万円が返ってこないんです」

物騒な事件が次から次へと発生する。

ここは確か、高齢者が安心して暮らすための
サービス付き高齢者住宅であったはずだが…。

2020-09-18 01:31:00 | 日記
レイは、モダンな婆さんである。

過去の病気によって車椅子生活を余儀なくされているが
眉はアートメイク、
服も基調の黒に挿し色を加え
高齢者施設の日常ではもったいないと思うほど
お洒落にまとめている。

そのレイが、食堂で近くの席に座っているサトコのことを
品良く、そう、あくまでも品良く罵った。

「あの方、カツラでしょう?
ご自分じゃちゃんとつけていると思っているんでしょうけれど
後ろから見るとカツラがズレてるのよね。
鏡を見てもわからないんだわ、お気の毒にねぇ、ほほほほほ」

実はこの老婆レイ
前から見ると髪はフサフサだが
後頭部は悲しいくらいハゲている。
自分ではそれに気づいていないから
2ヶ月に一度は「クリンクリンにパーマをかけたい」と訪問美容師を呼んで
困らせているのである。

レイよ、お前こそ
鏡を見てもわからないのだよ。

教訓
鏡はすべてを映さない。


あきらめた老婆と、あきらめない老婆

2020-09-17 22:24:00 | 日記

去年、膝のサラを骨折して入院したミチコは
「完治です。また歩けますよ」と医師からのお墨付きをいただいて退院した。
それから半年
ミチコは歩くどころか生きる希望まで失って
寝たきり生活を送っている。

医師も、リハビリの先生も
「もう痛くないはずなんですけどねえ」と首を傾げるが
彼女は言う。
「もう無理です。私は死ぬのを待つだけです」。

かたや、転倒によって
踵(かかと)と恥骨、仙骨の三箇所を骨折してしまったトシコ。
緊急搬送された病院からは
「自然治癒しかありません。ただし、安静にさせてください」と
むげにも送り返されてしまった。

トシコも91歳。
自然治癒なんて無理だね、このまま看取りかね。
介護する私たちはてっきりそう思っていたのだが
緊急搬送から2日後のきのう
自分で立ち、トイレに行こうとし始めた。

トシコさ〜ん、あなたは絶対安静なのよ。
お願いだから一人でトイレに行こうとなんてしないで!

しかし彼女は言う。
「何言ってんのよ、私はまだまだ一人で歩けるわ」

激痛に顔を歪めながら、頑張ろうとするトシコ。
恐らくまた、いや、きっとまた転倒するだろう。

あきらめて寝たきりになってしまったミチコと
あきらめずにボロボロの身体になっていくトシコ。

どっちの気持ちにも寄り添ってあげたいが
正直、どっちも介護者泣かせである。



それはおっさんからの、一番の贈り物かもしれない。

2020-09-16 02:57:00 | 日記
おっさんからは
これまでたくさんのプレゼントをもらってきた。

まだ家庭に普及していなかった時代のパソコン。
5万円もするモンブランの万年筆。
友達10人を招いたサプライズ誕生日会。

数え切れないほど、いっぱい。

羽振りのよかったおっさんは
金に糸目をつけずに贈り物をくれたっけ。

そんな黄金期に幕を閉じてから12年。
ついこの間、私はおっさんから
これまで以上の贈り物をもらうことになる。

買い換えたスマホに
おっさんが、自分のお気に入りの音楽アプリを入れてくれた。

今盛んにCMが流れているSpotifyだ。

小さい頃からピアノを習い
中学・高校時代はギターを趣味にしていた私だが
最近はカラオケで最新曲を仕入れる程度。
生活の中で音楽を楽しむことは、全くしてこなかった。

しかし
これはいいぞ!と、おっさんがしつこくSpotifyを勧める。
ならアプリを入れておいて!と
仕方ないわね…の体でインストールしたわけで。

ところが、これがイイ!!!

好きなアーティストを登録しておくと
その傾向を読み取って私のプレイリストを作成。
いつでも好みの音楽を流してくれるのだ。
(たまにアレッ?ていうのもあるが)

ここ数週間、私は通勤の行き帰りに
イヤフォンをつけて音楽を楽しんでいる。
朝靄のかかった土手で
夕日の沈むバスの中で
お気に入りの米津玄師の曲を聴く。
時には、ビートルズやカーペンターズなんかも聴く。
サイコーだぜ!!!

おっさん、ありがとう。

このSpotifyってヤツ、GOOD!です。
私の生活に潤いをくれました。

決してSpotifyの回し者ではないし
有料のプレミアム会員になろうとは思っていないが
私の生活に音楽の楽しさを与えてくれたアナタに
心から感謝。

そしてこれをしつこく勧めてくれたおっさん。
これまでくれたどんな高価な品より
素晴らしい贈り物でした。
ありがとう。