ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

今年もお世話になりました。

2015-12-31 02:42:09 | 日記
3年連続の大晦日夜勤である。

どうかどうか、救急車や消防車の出動がありませんように。
どうかどうか、K子が妄想や徘徊騒ぎを起こしたり
「私はもう死にます!」と泣き出しませんように。
どうかどうか、マリコがコールボタンを連打しませんように。

そして、どうかどうかウチに住む高齢者の方々よ
私に、心安らかな1年の締めくくりをさせておくれ。

大晦日だからと言って
利用者が転倒や誤嚥に注意してくれるはずもない。
わかっちゃいるが、それでも願わずにいられない。
どうか、どうか…と。

今夜は私の大晦日夜勤を気遣って
仲良しの同僚とケアマネが年越しそばを持ってきてくれるという。

「お蕎麦に乗せる天ぷらは何がいい?」
―かき揚げがいいかな。
「ほかにほしいものはある?」
―じゃあ、お酒!
「・・・それはダメでしょう」

そんなやり取りを、ついさっきメールで済ませた。

わぁ~い、今夜はパーティーだ!!!
恐らく事故や頻回のコールが私を打ちのめすのだろうが
大好きな仕事仲間と食べる年越しそばを楽しみに
今年最後の仕事に出かけよう。

この1年楽しく生きてこられたのも
この職場があってこそ、なのだから。

楽しく健やかな1年を、私を取り巻くすべての人に心から感謝。
来年もどうかよろしくお願い申し上げます。

追伸
このブログを詠んでくださっている方々にとって
来年が笑顔の多い年でありますよう
心からお祈り申し上げます。



私のパンだからね!

2015-12-30 00:53:39 | 日記
ご飯は私の大きな楽しみである。

食べ歩きを趣味としているわけではない。
高級食材を取り寄せる趣味を持っているわけでもない。

どーでもいいものを食べたくない。
ただただ胃袋を満たせばいい、というのは許せん!
ファミマの肉まんでも、“すき家”の豚丼でも
もちろん自分にとっての天才シェフである私の手作り料理でも
とにかく
そのとき食べたいものが、私にとっては最高のご馳走なのである。

夜勤明けの朝食にも、こだわる。

ああ夜勤が終わった~! 
とりあえず食堂のショッボイ朝ご飯を食べてから帰るかぁ!

…そんなの、つまらなすぎる。
味がどうだとか、量がどうだとか、そういうことではない。
楽しめないことが、嫌なのだ。

そしてきのうの夜勤明け。
食堂の朝食をキャンセルして前日に用意した夜勤明けメニューは
チンするだけのミネステローネと冷凍の明太フランスパン。
ふっふっふ、早くも胃袋が小躍りしてるぜ。

それを食する夜勤明けの朝を楽しみに
私は一生懸命働いた。
私を“御大”と呼ぶマリコの数分おきの非常コールに対応し
K子の物盗られ妄想劇場に付き合い
パジャマのズボンを脱いで車椅子で徘徊しているK三郎を
何度も部屋に連れ戻し
そう、私は一生懸命働いた。

そんなこんなでようやく迎えた朝。
ミネストローネを電子レンジにかけ
食堂のトースターに明太フランスパンをセットし
ふふっと、そのときを待つ。

ヘルパーさんに話しかけられたために少し遅れてしまったが
すでにパンは焼きあがっているはず。
そう思って食堂に行ったら
な~い! トースターに入れたはずの私の明太フランスが、な~い!!!

パニクッてあちこち探すと
それは、厨房の奥に鎮座していた。

あ、あのパン、私のなんだけど…
そう言うと、食堂のスタッフが慌てて飛んできた。
「ああ、アナタのでしたか。
このパンは誰のかって、さっき、すごい騒動だったんですよ」

チ~ン!とパンが焼きあがる音がして
そのときたまたま近くにいた
認知症のNさんと同じく認知症のHさんが
「「これはきっと私のパン!」
「いやいや、それはオレのパン!」
と、私の明太フランスをめぐってケンカになったのだという。

そこに居合わせた自立(介護サービスを受けていない自立生活者)の女性が
「誰のパンかわからないのだったら食べないほうがいい」と
収めてくれたので
私の朝ご飯はどうにか命拾いしたのであった。

ひゃあ、危ない、危ない。
油断も空きもあったもんじゃない。

相手が高齢者であっても、認知症の方であっても
私の食の楽しみを奪う者は
絶対に許せないのである。









死なないで、おっさん!

2015-12-27 00:08:35 | 日記
最後のエネルギーを振り絞るのだろうか。
死を迎える前の老人は、異常なほどの元気さを見せることがあるという。

ということは
おっさん、死が近いのか!?

そんな懸念を抱かせるほどに、近頃のおっさんは元気だ。

実は秋からアルバイトをはじめた彼。
デイサービスの安い給料では遊べないし貯金もできない。
どうすればいいか。
そう思っているころにタイミングよく
おととしまで勤めていた会社の社長から
アルバイトでもいいから仕事を手伝ってくれないかと打診された。
日給のほかに仕事を取れば歩合給も出してくれるという。

無理をして身体を壊されては―と思ったが
おっさんは大乗り気。
ひと月10日の休みのうち4日間を、そのバイトに当てることとなった。

体力的にも精神的にも驚異的な元気さを見せはじめたのは
その頃からのことである。

遊べる小遣いを手にしたことで
たまにデイサービスの若者たちとも飲みに行く。
「今日は飲みに行こうよ」と、恋女房を接待(?)する。

それだけじゃない。
きのうまで17日間休みなしで働いてきたというのに
朝から元気いっぱい! 
だるいとか、疲れたとか、一切言わず
うざいほど陽気にしゃべり続ける。

さらに
この間からおっさん宛の封書が次々と送られてくるので
何だろうと思っていたら
各種資格試験の案内と、大学の聴講生の案内なのである。

いやいやいや、勉強するのはいいことだよ。
私だって、アナタが破産した前月に
大学入学のパンフレットを取り寄せていたし…。
もちろん、元気になって陽気になって
未来を展望するのは素敵なことだと思うよ。
体力・精神力ともに衰えてショボショボしたアナタと暮らしているのは
はっきり言って苦痛だったし…。

でもおっさんよ、アナタ、元気すぎる。

どうしてこうも“ほどほど”を知らない男なのだろう。

彼の異常なまでの元気は最期の打ち上げ花火なのか?

年金問題に揺れ動く我がニッポン。
夫であるおっさんにはもう少し生きてもらわなくては困ると
現実的な妻は心配で心配で、夜も眠れない。

訂正
夜も眠れない、というのは真っ赤な嘘である。




ジジイの余命

2015-12-26 02:04:46 | 日記
ジジイXが、そろそろ天に召されるらしい。

「素手で股間を洗え」のジジイXが
血痰や呼吸困難、その他さまざまな症状を訴えたことにより
とりあえず、の入院となった。

4日後、60の娘に支えられながらヨロヨロと退院してきた彼。
検査の結果
不整脈はあるがそれほど心配する必要はない
血痰はワーファリン(血液をサラサラにする薬)の効き過ぎであるという。

しかしジジイは病院でその説明を受けてもなお
自分は血を吐くほどの大病と信じてやまず
退院してウチに戻るタクシーの中で、娘に言ったのだそうだ。

「私の余命はあと2週間」と。

父親を崇めていた娘だが
「素手で股間を洗え」事件以来“くそじじい”呼ばわり。

退院時も
「このくそじじいが余命2週間だなんて言ってるんですよ。あはははは!」
と、耳の遠いジジイの腕をとりながら豪快に笑っていた。

さて、それから3日。
自ら宣告した余命も、残すところあと1週間だ。

明らかに弱っている。
ヘルパーをメイドと呼び
入浴援助の際は素手で股間を洗うよう要望し
慶応ボーイを鼻に掛けて障害を持つ高齢者をバカにし
気に入らないことがあると杖を振り回していたジジイが
借りてきた猫のようになっている。

死期が迫っていることをアピールしているのかもしれないが
これまでの悪行三昧に辟易している周囲の女性たちは
誰も、彼を労わろうとしない。
誰も、彼に声を掛けようとしない。

孤独なジジイX。
こうやって静かに消えていくのか。

いいや。そんな姿にだまされるものか。
自ら宣告した余命2週間を超えたら
ヤツはきっと、勢いをつけて復活するに違いない。

大丈夫。そんなに心配なさらないで。
アナタはまだまだ長生きします。

明日ヤツに会ったら
にっこり笑って慰めてあげよう。

屈辱の日。泣きたいわ・・・

2015-12-20 23:38:29 | 日記
ウチにはユニフォームがない。
介護と言うとポロシャツにチノパンが定番だが
“施設”ではないからという理由により
貴金属とネイル以外は、服もヘアスタイルも自由なのである。

この冬、私は仕事着として2本のレギンスを買った。
裏起毛だからそれ1枚でもかなり温かく
しかも、レギンスだから動きやすい。
さらにファッション性を重視して
カラフルな色柄の2本をチョイスした。

これに白か黒のTシャツとカフェエプロン。
よし、決まりだ。

高齢者ばかりがいる介護現場だからこそ
明るくポップなファッションを楽しみたい。
それが私の原則であり
実際、セーター1枚にしても、度々変えるヘアスタイルにしても
利用者であるオジイチャマ、オバアチャマから
「いいわ、いいわぁ」と非常に好評なのである。

さて、きのうは2本買ったレギンスのうち
カラフルなボーダー柄を選び
うきうきと仕事場に躍り出た。

あら~、いいわね。
かわいいわぁ!
あなた、お洒落ねえ。

80代、90代のオバアチャマたち、大絶賛である。

へへ、でしょう?

しかし浮かれて歩いている私の前に
モンスター家族として恐れられるサツキ(おそらく60代)が立ちはだかった。

寝たきりの母を毎週末訪ねてくる彼女。
うんざりするほどの細かい注文とクレームにより
職員の誰からも嫌われているのだが
それ以上に
いつも連れてくる茶色いトイプードルと同じヘアスタイル
白塗りした大きな顔に小さな奥目
そして
「いったいどこで売ってるのかあ?」
「アラビアンナイトの仮装かあ?」と、思わず二度見する奇抜な衣装により
彼女は我が住宅の超有名人なのである。

そのサツキが、私の前に立ちはだかった。
しかもあろうことか
おんなじ色柄のレギンスをはいていた。

ゲッゲ~~~!!!

「あらあ、お揃いね」
同じ頭のトイプードルを抱きながら、くしゃくしゃの笑顔で彼女が言う。

やめてくれえ!
なんでアナタと私が同じレギンスをはいているのか!?
それ、今すぐ脱いで!
いや、私が脱ぐわ、今すぐ脱ぐわ!!!

すっぽんぽんになってもいいから
とにかく私はレギンスを脱いで走り去りたかった。
屈辱だ。ひどい、ひどすぎるよ。
あんなヘンテコリンな格好をしているオバハンと私が
実は同じファッションセンスを持っていたのか?
びえ~ん! 泣きたいわ。

お気に入りのレギンス、もう二度と職場でははくまいぞ。